力が欲しい

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER】第15話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第十五話 ちょっと変わった弾幕ごっこ:後編】
 稗田阿求と始まったクイズと弾幕ごっこを融合させた風変わりな勝負。第一問目は勇美の正解により快調な滑り出しを見せていた。
「そうですか、では第二問。『紅魔館の吸血鬼、レミリア・スカーレットの弱点は次の内どれでしょう?』」
レミリアさんを呼び捨てですか?」
 すかさず違和感を察した勇美は突っ込みを入れておいた。
「まあ、これはクイズですから。クイズで敬称を使うのはおかしいでしょう?」
 だが、阿求も負けじと返した。
「確かに、クイズでそれは余り馴染みがないですね」
 これには勇美も納得する所であった。現に外の世界でのクイズ番組等では、人名に敬称を付ける事は少ないと思い返すのであった。
「納得してもらえた所で、続き……いいでしょうか?」
「はい、すみませんね。手間取らせてしまって」
 阿求に対して勇美がそう返すと、例によって阿求の体から再び文字となるべく霊気が滲み出たのだ。
 するとその文字は次の二つであった。
『十字架』『流れる水』
 それに続いて、阿求の体から弾幕がばら撒かれた。
 避けながら依姫は勇美に問いかける。
「勇美、答え分かるかしら?」
 依姫は一度月で当のレミリアとやり合っているのだ。その時は天照大神の『太陽の光』を使ったから、二つの答えにはないものである。
 だが、裏を返せば『レミリアの弱点』が分かっていた証拠である。だから依姫に掛かればこの問題の答えも出せるというものだ。
「はい、任せて下さい」
 だが、勇美は自信ありげに言ってのけたのだ。そして答えに銃口を向け、発射した。
 選択肢の霊気の一つが貫かれて雲散する。そして残っていたのは、『十字架』であった。つまり……。
「『流れる水』ですね」
 阿求はそう呟くと、彼女の周りの弾幕は消滅した。
「正解です!」
 阿求は拍手をしながら勇美を労った。
「見事よ、勇美」
 依姫も勇美の奮闘を称える。
「えへへ」
 勇美は照れ笑いを浮かべた。
「何故十字架ではないと分かったのかしら?」
 十字架と言えば、吸血鬼の弱点としてポピュラーな要素の一つである。何故それだと思わなかったのか依姫は疑問に思ったのだった。
「これも慧音さんから教わったんですよ。吸血鬼が十字架を苦手とするのは、生前にキリスト教徒だった者に対して罪悪の念を呼び起こさせるからだって。そしてレミリアさんは死者から生まれた吸血鬼ではないからこれには当て嵌まらないって」
 第一レミリアは『不夜城レッド』といったように十字架を模した弾幕すら使うし、と勇美は付け加えた。
「勉強熱心ね、感心するわ」
 そんな勇美の振る舞いを見て、依姫は思わず口角が緩むのであった。
「それではその勢いに乗って第三問目、行ってもらいましょうか?」
 阿求がポーズを取り、またもや霊気を放ち始めた。
「第三問、先ほどに続いて今回も紅魔館に関する問題ですよ。『紅魔館にある図書館の名称はヴワル図書館である、○か×か?』」
 阿求の体から放出された霊気が○と×の形を取る。
「残念だわ、この問題には答えられそうもないわ」
 私も勉強不足ね、と依姫は自虐的にぼやいた。
「大丈夫ですよ、これも任せて下さい」
 対して勇美は意気揚々としていた。そして、弾幕を避けながら『×』の印を撃ち落したのだった。
「正解です、紅魔館の図書館の名前は名称不明なんですよ」
「では、先ほどの『ヴワル図書館』とは一体何なのですか?」
 疑問が生まれた依姫は堪らずに阿求に聞いた。
「これはゲー……ゲフンゲフン」
「貴方、今メタ的な発言しそうになりましたよね?」
 依姫は頭を抱えながら指摘した。これ以上は踏み込んではいけない領域だったのだ。
「オホン、エフン。気を取り直しまして、第四問。『地底の土蜘蛛、黒谷ヤマメ。さて、彼女のヤマメの由来は魚のヤマメである、○か×か?』」
 今まで通り解答の霊気が阿求から放出される。だが、そこからが今までと違っていたのだ。
 阿求の体から一本のレーザーが発射されると、それが時計回りに回転しながら周囲をなぎ払い始めたのだった。
「攻撃が変わった?」
 当然驚く勇美。
「あなた方はこれまで三問正解しましたので、こちらとしても攻撃方法を変えないと面白くないでしょう?」
 確かに単調で変化のない弾幕ごっこはつまらないものだ。だが、この特殊な勝負に際しては些か『ありがた迷惑』と思えるものであった。
「厄介ですね」
 そう言いながらもレーザーに追われる身となりながらも、勇美は正解に狙いを付けていたのだった。
 そして、一周して選択肢の前まで来た時に彼女が射抜いたのは『×』であった。
「正解です」
 レーザーも止んだ中で阿求は言った。
「公式では『蜘蛛は目が八つあるから』というものですが、どうも『女やもめ』が本当に考えられている由来ではないかと私は思うのですよね。蜘蛛は交尾の後雌が雄を食べて未亡人になる訳ですし」
 でも、それだと差別用語になりますから公式では発表出来ないんですよね~と阿求は付け加えた。
「……」
 そんな阿求の発言を聞きながら、依姫は項垂れていた。
 ──メタ発言を阻止出来なかったと。『公式』という言葉を使っている時点でもう駄目だと諦めるしかないと痛感するのだった。
「では第五問、ここまで好調な勇美さんですが、ここから問題の嗜好を変えさせてもらいますよ。『ミスティア・ローレライが開いている店は焼き八つ目うなぎ屋ですが……うなぎパイにうなぎは入っているでしょうか?』」
「え゛っ……」
 勇美は絶句した。何そのお手つきを誘うかのような問題の出し方。しかも問題の方向性がおかしくなっていると。
「何ですか、この問題は?」
「言ったでしょう? 嗜好を変えさせてもらいましたと」
「変わりすぎです!」
 悪びれない阿求に勇美は抗議した。これじゃあまるで生徒に100点を取らせたくないからと意地悪な問題を含んだテストを作る歪んだ精神の教師だと。
 だが、ここで文字通り立ち止まってはいられないのだ。レーザーが再び阿求を中心に回転し始めたのだ。
「依姫さん助けて~」
 今まで奮闘していたのが嘘のように、勇美は情けなく依姫に頼ったのだった。
「ごめんなさい、私でもこの問題は無理」
 恥も外聞も捨てて頼った結果がこれでした。さすがの努力家で勉強熱心な依姫でも、地上の食べ物については知らない所も多いのだった。
「あ゛あ゛~っ!」
 言葉にならない叫びをあげながら勇美はレーザーから逃げながら走った。
 そして、一周してお目当ての○と×の前まで来る。
「うぐいすパンにはうぐいす入ってないし、基本的にメロンパンにもメロンは入ってない事から考えて、答えは『×』!」
 そう叫んで勇美は×の字の霊気目掛けて星の弾丸を放ち、消滅させた。
(やったかな?)
 レーザーが収まり、足を止める余裕の出来た勇美はこれが正解だと願って念じていた。
 その状況で、阿求は微笑みを見せた。それを見て勇美は安堵した。
「ん残念!」
 だが現実は非情だった。そのもったいぶって期待させて絶望の底に叩き落す仕打ちは、どこぞの最高賞金1000万円のクイズ番組の司会者なんだと、勇美は心の中で悲痛な突っ込みを入れるしかなかった。
「え~!? 阿求さん、うなぎパイなんてお菓子にうなぎが本当に入っているんですか?」
 納得いかない勇美は、阿求に抗議する形を取る。
「はい、実際にうなぎの成分を粉末状にした物を小麦粉、バター、砂糖と練り合わせて作るんですよ」
(そうだったんですね……)
 依姫もこれには素直に感心して聞いていた。
「う~、阿求さん。次の問題をお願いします」
 勇美は気を取り直して意気込みながら阿求に催促する。
「はい、では行かせてもらいますよ。第六問『幻想郷で現在確認出来る鬼の一人の伊吹萃香……ですが、伊吹スイカは実在する、○か×か?』」
 またお手つきを誘わんばかりの出題方法だなと勇美は思いつつも問題の内容を頭の中で反芻した。
 ──いくら何でも、そんな駄洒落のような産物がある訳ないと。故に勇美の答えはすぐに決まったのだった。
 そして、レーザーを掻い潜りながら選択肢にたどり着くと、迷わず『×』の印を打ち抜いたのだ。
 それによりレーザーは止み、再び静寂が訪れる。
「残念!」
「ええっ!」
 阿求の無慈悲な宣告に、勇美はショックを受けた。
「そんなスイカあるんですか?」
 当然納得いかない勇美。
「はい、『タキイ種苗株式会社』さんが開発したスイカの品種に『伊吹』というものがあります。果重は6キロ程になるそうですよ」
「そんな馬鹿なぁ~……」
「ちなみにこの会社は『桃太郎トマト』という品種で一世を風靡したんですよ」
 それを聞いて依姫は、桃太郎といったら鬼退治、萃香は鬼……、引っ掛かるものしか感じる事が出来なかったのだった。
「では第七問、『小人の侍は少名針妙丸ですが、彼女のスペルカードにパロディーとして使われた作品はどれでしょうか?』」
 依姫はもう心の中で追求するのをやめる事にした。何さ『パロディー』って?
 依姫がそんな思いを馳せる中で、阿求の体から文字になるべく霊気が放出される。
僕のヒーローアカデミア』『進撃の巨人』『ワンパンマン』文字はこれらの記述がされていた。
「……依姫さん、分かりますか?」
「……これもちょっと無理ね。地上にはそういう娯楽があるという事は知ってるけど、その作品群までは詳しくはないから」
 もしかしたら玉兎達の方が詳しいかも知れないわねと、依姫は付け加えた。
「そうですか、では私が行くしかないですね」
 勇美はそう意気込むが、彼女とて答えは知らなかったのだ。
 勇美は娯楽作品は結構嗜む方であるが、そういった作品を全て知り尽くしている訳ではないのだ。所謂『オタク』と呼ばれる人達でも知らない自分の知らない作品は当然あるように。
 今はただ自分の信じる答えを撃ち抜くだけと勇美であったが、それも阿求は簡単には許してくれはしなかったのだ。
 何故なら、再び彼女の攻撃方法が変わったからだ。運動会の弾転がし大の球状の弾が複数出現し地面に叩き付けられたかと思うと、それらは柔軟に弾み、飛び上がったのだ。
 そして重力に引かれて地面に落ちると、再び跳ね上がる。この繰り返しであった。所謂『バウンド弾』というものであろう。
「これは……また厄介ですね」
「全くね」
 勇美と依姫は弾み地面を打ち付ける弾を回避しながら愚痴をこぼした。
 だが、勇美はパターンやタイミングを段々と覚えていき、付け入る隙を見出していったのだった。そして、選択肢の一つに狙いを定める。
「針妙丸さんはヒーロータイプの性格の方ですから、『僕のヒーローアカデミア』で行きます!」
 そう宣言してお目当ての文を打ち抜いたのだ。
 そしてバウンド弾は消滅し、暫しの静寂が訪れた。
「残念! 正解は『進撃の巨人』です。彼女のスペルカードに『進撃の小人』というものがありますよ」
 小人なのに巨人の作品から拝借する。その理不尽さに勇美は遠い目をするしかなかった。
 そして、彼女は重要な事に気付いた。──この弾幕クイズには6問正解しなくてはいけないのだったと。
(まずいなぁ……)
 当然勇美は焦りを見せた。問題は全部で9問。それに対して勇美はここで3問間違えてしまったのだから。
 それが原因だったのだろう。彼女に、抱いてはいけない魔が差してしまったのだ。
(考えてみれば、阿求さん自身は無防備だよね、バリアなんかを張っている訳でもないし)
 その結論に至った勇美は、弾かれたように行動を開始してしまった。
「阿求さん、覚悟~!」
 勇美が抱いた考えは単純であった。出題に律儀に答える必要などない、出題者を直接狙って倒してしまえばいいというものだった。そして勢いづいて彼女は阿求目掛けて突っ込んでいったのだ。
 これを見て阿求は、ポリポリと頭をかいて言った。
「やれやれ……こういう時の為に『これ』はあるんですよね」
 そう言って彼女が取り出したのは、一枚のスペルカードであった。
「【反撃「フレア」】!」
 その宣言と共に、突っ込んできた勇美を爆炎が包み込んだのだ。
「うきゃああああ!!」
 情けない悲鳴を上げながら、勇美は吹き飛ばされてしまったのだった。
 ずしゃあああ。そして見事に地面に倒れこんだ。
 その最中、勇美は思った。この人はどこぞの炎に包まれた目玉のモンスターだろうかと。あのモンスターの名前の意味は『太陽の中の太陽』だろうか、それとも『太陽の息子』だろうかという思考が生まれていたが、この際それはどうでもいい話であった。
「勇美……それはやってはいけないわ」
 依姫はある種爽やかとも取れるような表情で、愚行をしでかした勇美に突っ込みを入れた。
 対して勇美は、倒れたまま動かない。
「……起きてるのに白目は気持ち悪いからやめなさい」
「バレました?」
 そう言って勇美はむくりと起き上がる。
「ヒッテンミツルギスタイルの人みたいにしていましたが、どうせなら胸元も破けていた方が良かったですか?」
「ネチョになるからやめなさい」
「私、胸がないから大丈夫です……よ……」
「自分で言って凹むなら言うのやめなさいって」
 やんややんやとコントじみたやり取りをする二人。
「あの……いいですか?」
 一人取り残された阿求は二人の間に割って出る。
「あ、はい。お待たせしました」
 それに対して勇美は謝る。
「ところで、勇美さん。あなたは反則をしたので、ここから解答権を失いました」
「ええっ……」
 阿求の宣告に、当然ショックを受ける勇美。だが、ここで彼女は思い直した。
「そう、ですよね。反則してしまいましたからね。すみません、悪ノリしてしまって」
 素直に謝る勇美。だが、今抱いている疑問は解消しなければならない。
「でも、阿求さん。それだけの強力な攻撃が出来るなら、普通に弾幕ごっこを出来るのではないですか?」
「いえ、これは先ほどのような反則行為が行われた時『だけ』発動出来るという、限定的なスペルなのですよ。つまり、普段から使える訳ではありません」
「そうなんですか……」
 納得いくようないかないような複雑な気持ちに、勇美はなった。
「でも、私が脱落したら、これからどうするのですか?」
 そして、最後の疑問を勇美は聞いた。
「そのためのあなたと依姫さんのペアという事ですよ。あなた一人が脱落しても、依姫さん一人で挑む事が出来ます」
 つまり、ここから依姫一人に託す形になってしまったという事だ。そう思うと勇美は申し訳ない気持ちに苛まれるのだった。
「依姫さん、すみませんね。私の軽はずみな行動の尻拭いをあなたにさせてしまう事になって」
「過ぎた事は気にしては駄目よ。ここからは腹を括って私に任せなさい」
 気落ちする勇美に対して、依姫は堂々とした態度で応えた。
「それでは次の問題、よろしいですか?」
「ええ、待たせたわね」
「では第八問『幻想郷の守護者、上白沢慧音。彼女の種族は人間である、○か×か?』」
 その問いに続いて阿求の体から霊気が放出され、例によって○と×の形となる。
 そして再び阿求からバウンド弾がばら撒かれた。
「問題を考えながら弾を避ける。これは結構難儀ですね」
 依姫はぼやいた。さすがの彼女でも弾幕ごっこの経験期間は短いのだ。そこへこのような特殊な弾幕ごっこを体験する事になったのだ。
 多少依姫にとって壁となる状況であった。なので彼女は出し惜しみはしない事にしたのだ。
「『天宇受売命』よ、我に力を」
 そう宣言して、依姫は月でも呼び出した神を現出させた。そして薄着を纏った女神が現れ、依姫に取り込まれていった。
「【踊符「最古の巫女の舞踏」】」
 そして月ではしなかったスペルカード宣言を行った。
「考えましたね、直接攻撃にはどんなものを使っても同じな私の弾幕ごっこの中で、回避の為にスペルを使うとは」
 阿求は感心しながら依姫の機転を労った。
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
 そう返しながら、依姫は舞うようにバウンド弾を避けるという器用な芸当を見せる。
 そして、舞を見せながら依姫は解答の前まで迫っていたのだ。続いて彼女が選んだ答えは。
「答えは『×』」
 そう言い切って愛宕様の火の弾丸で×の字を射抜いたのだった。それにより小規模な爆発を起こして文字は砕け飛んだ。
 後はバウンド弾も消え、静寂が訪れた。この状況を勇美は固唾を飲みながら見守っていた。これ以上は不正解を出したら、6問正解というこの勝負の勝利条件のノルマを達成出来なくなってしまうからだ。
 もし、この勝負に負けてもペナルティー等はないだろう。勝負の方法も極めて特殊だから負けても恥ではないだろう。だが、可能なら『負けたくない』という想いが勇美には強く存在していたのだった。
 勇美がそんな念を抱いている中、阿求が口を開く。
「正解です」
 ほっ、と勇美は胸を撫で下ろした。
「この問題があったから、慧音さんのいる所ではやりたくなかったのですよ。で、いつ頃から気付いていました?」
「彼女に会った時からです。これでも私は神の力を借りれる身。その事もあって彼女が人とハクタクのハーフである『ワーハクタク』だとはすぐに分かりましたよ」
「さすがですね」
 阿求はただただ恐れいったといった感じに感心するしかなかった。
「この事は人里の者達にはくれぐれも言及しないで下さいね」
「分かっています」
 当然そうでなければいけないだろうと依姫は納得した。
 ──人は自分達より秀でた者や異質な者は排除しなければ気が済まない性質なのだ。それが群れを守る本能なのだ。
 慧音がワーハクタクだと知られたら迫害される可能性が高いのは手に取るように依姫は分かるのだった。
 自分も努力の末、神降ろしという強大な力を使えるようになったが、その代償として人々から軽蔑にも近い目で見られるようになったのだ。それにより以前『住吉三神の力を借りてよからぬ事をしようとしている』と濡れ衣を着せられた事の一因となったのである。
「それと、もし迷惑でなければ小話させてもらっていいですか?」
「ええ、程々ならね」
「ありがとうございます」
 そのやり取りに続いて、阿求は話始めた。
「この勝負の前に私が転生をしている事は話ましたよね?」
「ええ」
「最初は心細かったんですよ。生まれ変わったら自分の知り合いがいない訳ですから」
「そうなのでしょうね」
 依姫は相槌を打つ。無限の時を生きる自分には完全には理解出来ない事であるが、自分の知る者がいなくなるという事実は苦痛でないはずがないというのだけは想像出来る事なのであった。
「でも、慧音さんのお陰でその問題も解消したんですよ」
「あー、成る程」
 阿求の今の発言を聞いて、勇美は合点がいったようだ。
「阿求さんの言ってた『妖怪の友達が出来たから、もう転生は寂しくない』ってのは慧音さんの事だったんですね」
「そういう事です」
 この事を聞いたら慧音は嬉しくなるだろう。村人に隠している、自分がワーハクタクである事。これは、彼女を苦しめている事情と言えるだろう。
 だが、こうして阿求に対しては彼女の妖怪故の長寿が役に立っているのである。それを慧音が知れば、僅かであろうが彼女の肩が軽くなる事であろう。
「……少し弾幕ごっこから脱線してしまいましたね」
 阿求はコホンと咳払いをして気を引き締めた。
「では最後の問題です。『次の内、弾幕ごっこことスペルカード戦においてやってはいけない事ではないのはどれでしょうか?』」
 そして霊気が放たれ、三択の文字が紡ぎ出される。
『倒した相手を追撃して殺す』『弾幕展開の際に本体がいなくなる』『隙間のない弾幕を展開する』
 その三択が現出した後で、阿求に膨大な霊気が集まり始めたのだ。彼女を中心として、物凄い突風が巻き起こる。
「!!」
 それを見て、依姫は阿求が繰り出そうとしているこの攻撃をさせてはいけないと直感した。恐らく最後の出題の際に強力無比な攻撃を出来るようになっているのだろうと。
 云わば時間制限があるようなものであった。阿求とて最後の問題を易々とは攻略させる気はないのだろう。
 だが、依姫は慌てる事はなかった。何故ならこの出題はとても自分に馴染みのあるものだったからだ。迷わず彼女は『弾幕展開の際に本体がいなくなる』を打ち抜いたのだった。
 そして、突風も霊気の集束も収まったのだ。
「正解ですね……」
 晴れ渡った表情で阿求は言った。
「月の民であるあなたには難しい問題だったかなと思っていましたが、よくご存知で」
「ええ、色々ありましたからね……」
 依姫は懐かしむように呟く。
 まず、『倒した相手を追撃して殺す』。これは言うまでもなかった。かつて魔理沙弾幕ごっこを薦められて、その無駄な血を流さない勝負方法に感心したものだったからだ。
 次に『隙間のない弾幕を展開する』。これは依姫が月での弾幕ごっこの後に独自にルールを調べた際に知った事である。咲夜との戦いではそれを調べる前の事であったために隙間をなくす事で能力の穴を付く行為をしてしまった為に、現在彼女に対しては反則勝ちの状態にあるのだ。
 だから、彼女とはもう一度決着をつけないければならない。それが依姫が次に決めている目標なのだ。

◇ ◇ ◇

「それでは、ありがとうございました。いい経験が出来ましたよ」
「いえ、こちらこそ月の民と弾幕ごっこが出来て貴重な体験が出来ました」
 依姫と阿求はそう言い合い微笑み合った。そして、阿求は勇美に振り向く。
「勇美。あなたには少しいじわるしてごめんなさいね。前からあなたの幻想郷に対する勉強意識が強い事は知っていましたので、ちょっと魔がさしてしまったのです」
「ありがとうございます、阿求さん。でもいぢわるは程々にお願いしますよ」
 勇美は苦笑しながら言った。これでは俗に言う『いじめたくなる程可愛い』という奴だろうかと。やっぱりこの人は腹黒い所があるなと勇美は遠い目をしながら思いに耽るのだった。
「では、また機会があったらお会いしましょう」
 そして二人は阿求と別れ、帰路につくのであった。