力が欲しい

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER】第20話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第二十話 姉の方は別に……:前編】
 勇美と壮絶な戦いの末にしょうもないオチで締めくくられて意識を手放したレミリアであったが、ものの十分程で目を覚まし、自分が運ばれていたベッドから起き上がったのだ。さすがは吸血鬼の身体能力の賜物といった所か。
「お目覚めですか、お嬢様」
 そう目覚めたてのレミリアに言葉を掛ける咲夜の様子に心配した素振りはなかった。
 これしきの事で我が主が大事に至る事はないという信頼の証であった。
「ええ、いい目覚めよ」
 レミリアも、そんな咲夜の信頼に応えるべき態度を示した。
 だが、当のレミリアを打ち倒した勇美は気が気ではなかったのだ。
レミリアさん、大丈夫ですか?」
 そう心配そうにレミリアの顔を覗き込みながら言う。
「ええ、問題ないわ。あなたは私を倒したんだから、もっと堂々としていなさい」
「……はい!」
 勇美はレミリアに言われて、元気良く返事をした。今の自分はもっと自信を持っていいんだと自分に言い聞かせながら。
「それで、勇美。今夜は遅いからこの紅魔館に泊まって行きなさい」
「そう言ってもらえると助かるわね。今から永遠亭に戻るのはリスクが大きいから」
 レミリアの提案に依姫は便乗する形を取る。相手の好意は素直に受けるべきだと彼女は思っているからだ。
 しかし、勇美は踏ん切りが着かないようだ。
「何か悪いですよ。それに、ここは人間が過ごすには問題あるんじゃないですか? 日当たりとか」
 それが勇美が懸念する事であった。吸血鬼に合わせて作られた館では人間である自分には馴染まないのではないかと。
「遠慮する事はないわ」
 だがレミリアはさらりとそう言ってのけたのだ。
「それに、後者の方が心配なら、問題なく解決出来るからね」
「……?」
 意味ありげなレミリアの発言に、思わず勇美は首を傾げてしまうのだった。

◇ ◇ ◇

「う~ん……」
 心地良い気だるさの元、勇美は朝の目覚めを迎えた。
「うん、いい朝~。不思議と気持ちいいね」
 勇美は快適な目覚めに抱え入れられて満足気に呟いた。
 結論から言って、結局勇美は依姫と共に紅魔館で一夜を過ごしたのだった。
 陽の光を弱点とする吸血鬼に合わせて作られた館。当然窓は少なく、人間には苦痛となる者もいるだろう場所での就寝であった。
「これも美鈴さんのお陰だね~」
 そう、この館で快適に過ごせたからくりの正体は、館の門番である紅美鈴であったのだ。
 昨晩、勇美が紅魔館に泊まる事を聞いた美鈴は、自ら問題解決の為に名乗り出たのだ。
 そして、その後は彼女の得意分野の気孔の出番だったという訳である。
「どういう事ですか?」
 勇美は美鈴に言われても、要点を掴めずに首を傾げてしまったのだ。
「簡単な事ですよ、私の気を勇美さんに送って代謝能力を一時的に高めるんです。そうすれば人間のあなたでも窓の少ない部屋で一夜をすごしてもぐっすり眠れる筈です」
 そう美鈴は言ってのけた。だが勇美はまだ合点がいかないようであった。
「実感が沸かないのも無理はないでしょう。『百聞は一見にしかず』ですから、騙されたと思って受けてみて下さい」
「……」
 それを聞いて勇美は懐疑的な気持ちが段々と薄れていったのだ。この人からは純粋な感じが伝わってくるから、誰かを騙すとは思えなかったのだった。
「分かりました。お願いします」
 そして、勇美は素直に美鈴の申し出を受けたのだった。
「それでは勇美さん、ベッドで横になって下さい」
 そう美鈴は勇美に促す。
 そして、勇美は彼女に促されるままに手頃なベッドへと移動したのだ。
 そして、勇美は手を自分が着ている和服の帯に掛け……。
「……勇美さん、脱ぐ必要はありませんよ」
「ええっ? そうなんですか?」
 さぞかし残念そうに口を尖らせる勇美。
「何で残念がるんですか……」
 美鈴は呆れながら突っ込みを入れた。
「だって、こういうのって、裸でやってもらった方が効き目ありそうじゃないですか?」
「それは気のせいですからやめて下さい」
 美鈴はきっぱりと言った。
「まあ、取り敢えず気を送りますから、うつ伏せになって下さいね」
「はい♪」
 全裸での施しを受けるという野心は潰えたものの、気を送ってもらえる事には変わりがなかったので、勇美は元気に返事をしたのだ。
 そして勇美はベッドの上で仰向けに寝そべった。
「それでは行きますよ」
 美鈴はそう言うと勇美の背中に手を当て、集中し始めたのだ。
 すると、勇美はその美鈴の手から何か優しい感触を感じ始めたのだ。
「あっ、何か心地いいです……」
 勇美は思わずうっとりしながら言う。
「それは、私の気が送られてきた証拠ですよ」
 美鈴は勇美の心地良さそうに振る舞うのを見て、得意気に説明をした。
「あっ、そうなんですか」
 言われて、勇美は納得した。
  その心地良さは生半可なものではなかったのだ。何故なら過剰に何かを送りこまれてくる感じではなかったからである。最低限のエネルギーを送られ、後は勇美自身の肉体の脈動を呼び起こされていたからだ。
 つまり、それを言葉に表すと。
「何か、『本当の優しさ』って感じがします」
 それが勇美の率直な感想であった。
「そ、そうですか」
 そのように言われて、美鈴はこそばゆい心持ちになってしまう。
「これには咲夜さんも喜んでいるんじゃないでしょうか?」
 夢心地な中で勇美はそう言った。咲夜も人間である以上、この紅魔館で過ごすには美鈴の気孔のお世話になっているだろうと勇美は踏んでの事であった。
咲夜さんですか……咲夜さんですよね……」
 その名前を聞いて美鈴は引きつった笑みを浮かべた。
 確かに咲夜にはいつも気孔を施しているのだ。だから彼女には感謝されている事は美鈴には分かるのだった。
 だが、それ以上に咲夜に対してはトラウマを呼び起こしてしまうのだった。特に額にナイフを投げて刺されたり。
「……ごめんなさい。何か聞いちゃいけない事聞いてしまったみたいですね」
「いえ、気にしないで下さい」
 謝る勇美に気にしないように言う美鈴。
 と、このように触れてはいけない物に触れ掛ける事態となってしまったが、勇美は全身の血の巡りが快調になる感覚に抱かれていたのだ。これなら今夜はぐっすり眠れるだろう。
「はい、これで気孔は終わりですよ」
 すべき事は全て終えて、美鈴は感無量といった様子を見せた。
「ありがとうございました。お陰で今夜はいい夢が見られそうです」
「それは何よりですよ」
 勇美と美鈴はそう言い合って、互いに笑顔になるのだった。

◇ ◇ ◇

 そして勇美は紅魔館で一夜を過ごし、朝を迎えた所という訳であった。
「本当にいい朝迎えられた~♪」
 勇美はとても充実していた。今の感覚は陽が存分に差し込む部屋で過ごしたのと寸分違わぬ感覚であった。
 そして勇美は一夜を過ごした部屋から出て廊下を歩き始めた。
 無論闇雲に歩き始めた訳ではなかった。昨日聞いた道筋を頼りに、紅魔館の食堂へと目指していたのだった。
 その途中で勇美は美鈴と出会った。
「あっ、美鈴さん。お早うございます」
「お早う、勇美さん。昨日はよく眠れましたか?」
 朝一番で出会って勇美の心配をしてくれる。その辺りが彼女が心優しい温厚な妖怪である事を示していた。
「はい、美鈴さんのお陰でバッチリでした」
「それは良かったです」
 美鈴は肩の荷が降りるような心持ちとなった。
「さすが、『太陽のエネルギー、波紋』って感じですね」
「気孔です」
 すかさず美鈴は訂正したのだった。
 その後勇美は食堂で依姫と合流して、紅魔館の住人達と仲良く朝食を食べたのだった。
 ちなみにそのレパートリーはふっくらとしたパンに卵やベーコンやサラダが付き、飲み物は紅茶というものであった。

◇ ◇ ◇

 そして勇美と依姫は永遠亭へと戻って来ていた。
「しばらく部屋で休んでいるといいわ」
 依姫は勇美にそう言ってしばし別れる事となった。
 それは依姫の勇美への配慮からであった。いくら美鈴の気孔で陽の光を浴びる代わりを施されても人間が初めて吸血鬼の館で過ごしたとあっては、その負担は完全になくす事は出来ないだろうから。
 更に極め付きに、勇美は強大な力を持つレミリア弾幕ごっこをしたのだ。それによる疲弊は計り知れないだろうと。
 そんな依姫の配慮を嬉しく思いながら勇美は自分の部屋へとたどり着くのだったが。
「……」
 勇美を包み込む違和感。それを何だか考える彼女。
 そして、その理由に気付く。
「あ~! 元気が出すぎてるぅ~!」
 それが答えであった。気孔により代謝が出たはいいが、如何せん効き目が強すぎたのである。
 そして、咲夜がレミリアに対して色ボケしているのも、この効きすぎる気孔の影響かも知れないと勇美は思うのだった。
 昨日は陽の当たらない紅魔館で一夜を過ごすのであった為問題無かったが、今は陽が十分に当たる永遠亭の自室だったのだ。
 過ぎたるは及ばざるが如しという奴であろう。いくら調子が良くても、良すぎては落ち着いて休む事も出来ないのだ。
 だが、勇美はそれを利用する事にしたのだった。
「うん、ゆっくり休めないなら、体を動かそう」
 そう結論づけて、勇美は早速行動を開始する事にしたのだ。一人でも出来る鍛練もあるだろうと。
 そして、意気込みながら部屋を出ようとした時であった。
 コンコンと扉をノックする音がしたのだ。それに続いて部屋の外から声が聞こえた。
「勇美ちゃん、ちょっといいかしら?」
 それを聞いて、勇美は「誰だろう?」と思った。少なくとも依姫は勇美には『ちゃん』は付けない。
「まあ、考えても仕方ないか」
 勇美はそう思い扉を開け、誰だか分からない客人を招き入れる事にしたのだった。
「はい、どなたですか?」
 そう言って勇美が扉を開けた先にはブロンドのロングヘアーがきらびやかな女性が立っていた。
 その姿を見て、勇美はその人物が何者か少しの間を置いて察するのだった。
「豊姫さん!」
 そう、勇美がお世話になっている依姫の姉、綿月豊姫その人であったのだ。
「勇美ちゃん、お元気してた?」
「はい、それはとっても……」
 豊姫に言われて勇美は今の元気過ぎる自分の現状を思い出してしまった。
 更に条件の悪い事に、今の豊姫の出で立ちは、かつて勇美が彼女に提案した白のノースリーブワンピースにケープという勇美のフェティシズム丸出しのものだったのだ。
 故に勇美は欲情してしまったのだ。不幸中の幸いに勃起はしなかった。勇美にはそのような物はないから。
 だが、勇美が野獣と化すには充分過ぎる条件が揃ってしまったのだ。
「いただきマンモス~!」
 そして勇美は昔どこかで聞いた事のあるフレーズを吐きながら豊姫に襲い掛った。恥知らずな行為であったが、それでも「いただき○○○」でなかったのは不幸中の幸いであった。
 窮地に立たされたかのように思われた豊姫。だが彼女は慌てずに自分の能力を使い、難なく勇美をかわした。
 びたーん。そんな哀愁漂う音を立てて勇美はしたたかに床に体をぶつけてしまったのだった。
「ううう……」
 口惜しいそうに涙目で唸る勇美。
「豊姫さん、あなたの能力、チート過ぎますよ」
 要は誰もが一度は望む能力の一つ『テレポーテーション』なのだ。しかもそれは宇宙規模に及ぶ程であるのだから。
「うん、自分でもそう思うね」
 かく言う豊姫自身もその自覚はあるようだ。
「私を捕まえて如何わしい事をしたいのなら、もっと修行を積む事ですよ」
「え゛っ……」
 その言葉に勇美は上擦った声を出してしまった。
 何故なら突っ込み所が多かったからだ。如何わしい事をするの自体はいいのかとか、その為に修行を積めだとか。
 依姫は絶対言わないような事であった。この辺りが姉と妹が徹底的に違う事の縮図の一つかも知れない。
 そんな事を思いつつ、勇美は本題に入る事にした。
「それで豊姫さん、私に何の用ですか?」
「うん、大した事じゃないんだけどね、私と人里の喫茶店でもいかないかな~って」
「喫茶店ですか?」
 勇美は聞き返す。
「うん、喫茶店。勿論勇美ちゃんが疲れてたりして迷惑じゃなければだけど……って思ったけど、その点は心配なさそうだよね」
 そう言って豊姫は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「はい、今色々エネルギーが有り余ってますから、いい機会ですよ」
 勇美は苦笑いしながら言った。
「それじゃあ決まりね、行こうか♪」
「準備は……しなくていいんですよね。豊姫さんがいるから」
 つくづく反則的な能力だなと、勇美は心の中で独りごちながら豊姫に誘われるままに身を委ねるのだった。

◇ ◇ ◇

 そして二人は人里に構えられたとある喫茶店の前に来ていた。
 ちなみに豊姫の能力による出現先は人目のつかない場所を選び、騒ぎにならないように配慮した。
「ここが私のお気に入りの喫茶店よ」
「ここですか……」
 言いながら勇美は見とれていた。
 その外観が立派な赤レンガで作られていて、荘厳かつ小洒落ているという独特の空気を醸し出していたからだ。
「いい所ですね~」
「そうでしょ♪ それじゃあ中に入ろうか」
 二人はそう言い合い、喫茶店の中に入っていったのだった。