力が欲しい

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER】第24話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第二十四話 沙の中の銀河:前編】
「それでは、そなたらに助けてもらったぞ」
 そう言って慧音は勇美と依姫を労った。
「いえ、何だか予定と違ってしまって申し訳ありません」
 慧音に労われるも、素直に喜べずにそう言う勇美。
 それもその筈だろう。依姫の神降ろしの凄さを体感してもらう為に勇美は恐竜型の機械生命体でもって相手するというパフォーマンスだったのだが、その恐竜が最後で永琳の策略により空中爆散するという勇美の予期せぬ事態になった上に、恐竜というモチーフを使ったばかりに子供達の人気を自分が集めてしまう事になってしまったのだから。
 だが、慧音はそれでも二人には感謝するのだった。それは子供達が喜んでくれた事に代わりはないし、何より二人が一生懸命に奮闘したのだから。
 慧音は結果はどうあれ、努力した者はちゃんと認めるのが自分のスタイルなのであった。
「それでは、今回の授業の賃金は出しておかねばな」
「えっ?」
 その慧音の言葉を聞いて、勇美は狐につままれたような心持ちとなってしまった。聞き間違いではないだろうか? そう思う勇美は今一度慧音に再度確認する。
「慧音先生、私の聞き間違いかも知れないので、もう一度お願いします」
 そんな勇美に対して、慧音は普段の厳格な印象からは想像出来ないような温和な笑みで持って勇美を見据えて言った。
「言い間違うものか。そなたらに今回の授業分の賃金をあげようと言うのだぞ」
「……」
 聞き間違いではなかった。その事が確認出来て、勇美は暫し唖然となって言葉が出ないでいた。
「依姫さん、どうしましょう?」
 迷いに捕らわれる勇美は、側にいる依姫に答えを求めるという、やや情けない行為に出てしまった。だが、依姫はそんな勇美に対して丁寧に言葉を掛ける。
「まあ、私には不要な物ね。月と地上では通貨は違うし、第一私はお金には困っていないから」
 曲がりなりにも綿月家という名家の生まれであるからねと依姫は付け加えた。
 そして、依姫は続ける。
「でも、私には不要でも、貴方には必要な物ではないかしら?」
「私に必要……?」
 そう言われて、勇美は考え込んでしまった。果たして自分に本当に必要な物なのかどうかと。
「……」
 その勇美の様子を見て、依姫は暫し考え、自分の言い方が些か適切ではなかったと思い直した。
「私の言い方が悪かったわ」
「依姫さん?」
 そう言われて勇美はキョトンとしてしまう。
 そこに依姫は付け加える。
「これは、貴方が必要だと思って欲する事が大事なのよ」
「欲する事ですか?」
 尚もキョトンとした態度を続けてしまう勇美。
「そう、欲する事よ」
 依姫は少しニコリと微笑みながら言う。
「貴方はこれから進んで欲しがる事が大事になって来るわ。それが貴方の復讐に繋がっていくという訳よ」
「……」
 その言葉を聞いて勇美は考え込んだ。
「私の復讐に必要……」
 そして勇美はその言葉を頭の中で反芻する。
 言われてみると、確かに理解出来るような気もする。
 今までの人生で母親から受けた仕打ちに抗い、何か事を成すには綺麗事だけでは成り立たないだろう。
 とにかく母親のしがらみに打ち勝つだけのエネルギーが必要なのである。その為には大人しく謙虚になどはしてはいられないだろう。
 その事を考慮して、依姫は答えを出したのだろう。その彼女の計らいを勇美は無駄にはしてはいけないと思った。
「欲する事……、確かに私には必要ですね」
 勇美はその言葉を噛み締め、自分の気持ちに馴染ませた。そして慧音に向き直り、言った。
「慧音先生からの賃金、是非とも私に下さい!」
「よく言った!」
 慧音も勇美が依姫とやり取りする一部始終を見届けていたのだ。そして答えを出した勇美を労い、彼女の手にお金を渡したのだった。
「勇美、お前なら大丈夫だと思うが、くれぐれも無駄遣いはするんじゃないぞ」
「はい、分かっています」
 勿論勇美はこのお金を無駄遣いしようなどとは断じて思う事は無かったのだ。何せ依姫の後押しに慧音の計らい、そして自分自身の気持ちの踏み切りと、色々な想いが詰まった貴重な結晶なのだから。
 そうして様々な気持ちのこもった報酬を受け取ると、依姫と共に上白沢家を後にするのだった。

◇ ◇ ◇

 そして、勇美にとって貴重な一歩を踏み出す事になった特別授業の日から幾日が過ぎていた。
 彼女と依姫が今いるのは紅魔館に存在する図書館にいる所であった。
 ここには貴重な書物がたくさんあるので、二人とも勉強と知的欲求を満たすのを兼ねて度々この場所を訪れていたのだ。
 日光を極限まで遮っている紅魔館の中の図書館だけあって薄暗く、ここで生活するには難儀な場所であるが、極端に長時間滞在するのでなければその造りも読書を捗らせるには程よい刺激と癒やしを与えてくれる要素となるのだ。
 だが、二人と一緒に今読書に浸っているここの常連は長時間の滞在でも苦痛にならない程、この図書館に色々なものが『適合』してしまった存在なのであるが。
 その存在は髪の色も帽子もパジャマのような服も全身紫づくめの──通称『動かない大図書館』の種族:魔法使い、パチュリー・ノーレッジその人であった。
 彼女は黙々と読書をしていたが、珍しく彼女から話しかけるという事をしたのだ。それだけ勇美と依姫は読書仲間という事でパチュリーと仲良くなっていた証拠であった。
「突然柄にもない事言うけど、嬉しいわね。あなたたちのような同志が出来るなんてね」
 いつものようにあっさりと冷めたような振る舞いの元言った言葉であったが、パチュリーと親しい者が聞いていたら彼女がやや照れている事実を見抜いていた事であろう。
 そして、パチュリーのその言葉に依姫が返す。
「私も貴方のような勉強熱心な子を友達に持てて嬉しいわ」
 そう言う依姫。図書館の中なので静かに話しをした為にしんみりとしてしまう。幸い公共の図書館ではない為、完全に会話が厳禁ではないようである。そして依姫は続ける。
「でもごめんなさいね。月の守護の為とはいえ、貴方のご友人に貴方の予想通りのような、ちょっと痛い目を見せてしまって」
 少し申し訳なさそうに言う依姫。自分のした事に後悔はないが、いざ自分が制した者の友人を目の前にすると引け目を感じず完全に堂々とする事も出来ないのであった。
 だが、パチュリーはしれっと答える。
「いいのよ、あの子にはいい薬になったのだから」
「あら、お厳しいのね」
「……あなたには言われたくはないわよ」
 と、そんな具合に依姫とパチュリーは静寂の中で静かな軽口の叩き合いを繰り広げた。 そこに第三者である勇美が入り込んで来る。
「お二人さん、何か仲がいいみたいですね~♪」
「「確かに……」」
 勇美の指摘を受け止める依姫とパチュリー。どことなく共通するものが自分達には存在していたのだろうなと彼女達は物思いに耽るだった。
「この人は図書館の本を取って行くなんて事しないで、ちゃんと図書館内で読んでくれるし」
「って、それ当たり前じゃないですか……?」
 そんな突っ込みを入れる中で勇美は彼女達とは相まみえない要素を持っていると感じていた。だが、それを苦痛には勇美は感じてはいなかった。人には色々な個性があるのだから、人と同じでなくても恥ずかしがる事はないと思っていたのだ。
 そんな事を、外の世界のそれのように時折独り言を言ったり居眠りをしていびきをかいたりして快適な空気が台無しになる事の無い図書館で噛み締める今の勇美は、とても充足感に満たされていたのだった。
 だが、そんな心地良い静寂を破る存在が今し方やって来ようとしていた。
 突然崖が崩れるでもしたかのような轟音が、図書館に鳴り響いたのだ。はっきりいって迷惑そのもの、心臓に悪い事この上ない現象である。
「う、うわぁっ!!」
 当然勇美は驚いてしまう。こんな事態に遭う事など外の世界の図書館ではまず無い事であるし。
「……やれやれね、また来たわね」
「あ、もしかしてこれって」
「察しの通りよ」
 対して二人はこの騒動の大元が大体想像出来ているようであった。
「お二人とも、一体何事かご存じなのですか?」
 話の蚊帳の外にいる状態となってしまった勇美はそわそわした様子で二人に聞いた。
「勇美、分からないかしら? 貴方も『観て』はいるはずよ。こんな『力任せ』な事をしでかす者と言ったら……」
「……あっ!」
 依姫にヒントを与えられる形となった勇美は、それにより頭に電流が走るような感覚に襲われたのだ。
 彼女にも心当たりがあった。以前依姫の月での戦いの記録を永琳に見せてもらった時にその中に傍若無人な戦い方をする者がいたのだ。
 それ以前に勇美とて幻想郷に住む身。『その存在』の武勇伝は意識しなくても耳に入っていて、直接遭わずとも情報だけは知っていたのである。
 そう、その正体の名前を勇美は言おうとするが……。
「また来たぜ、パチュリー!」
「全く、毎度毎度騒々しいわね、魔理沙……」
 その主が現れた為にパチュリーに先に言われてしまったのだった。
 その者の名前は霧雨魔理沙。黒白の三角帽子とエプロンドレスに身を包み、魔法を使うが人間である為、自他共に認める『普通の魔法使い』である。
 だが普通でないのが、まずそのスタイルであろう。
弾幕はパワー』という持論をモットーとしており、彼女が張る弾幕は非常にパワフルで派手なものなのだ。
 そして、もう一つ普通でないのが彼女のその性格だろう。
 少女でありながら『だぜ』口調の男勝りで豪快な振る舞いに加え、その思考回路も常人のものとはかけ離れていて、いつも珍騒動を起こすのだ。──今回の図書館襲撃もその一環で、彼女のライフワークと言っても過言ではないだろう。
 更に、図書館に突撃するだけが彼女のするはた迷惑な行為ではないのだ。
パチュリー、今日も本を借りていくぜ~!」
「いや、取っていくの間違いでしょ……」
「何を人聞きの悪い事を言うんだ。一生借りて行くだけだぜ」
「それを取るっていうのよ」
 パチュリーは呆れながら魔理沙に突っ込みを入れた。
「……」
 初めて見る珍客の問答を見ながら、勇美は呆気にとられていた。
 ──それは屁理屈というものじゃないかと。例えるなら外の世界の青い狸のような猫が主人公の漫画に登場するガキ大将のようが掲げるようなトンデモ理論ではないかと勇美は思わずにはいられなかったのだ。
 そして、その思いを勇美は口にする。
「あの、魔理沙さん……?」
「あ、そういうお前は勇美だな? 噂に聞いているぜ」
「あ、はい!」
 話しかけた魔理沙に思わぬ言葉を掛けられて勇美は戸惑ってしまった。彼女程の者から評価をされるとは思っていなかったからだ。
 だが、それはそれと気持ちを切り替えて勇美は話を続けた。
「そ、そうじゃなくて、本を取って行くのは良くないと思いますよ」
 それが勇美が言いたい事であった。自分の欲しい物は奪うのではなく、自分の努力で手に入れるものだと。子供達の前で奮闘した事により慧音に賃金を貰って久しい今であるからこそ実感する事であった。
 勇美はこうして食い下がる事は珍しかった。悪い事だと思っても『触らぬ神に祟りなし』を決め込んで余り関わらないようにする傾向がややあるのだ。
 だが、今回は違った。それは魔理沙が努力により周りと渡り合っている人間だと知っているからだ。──尤も、魔理沙本人は努力している事を悟られるのを嫌う為、その事を勇美は指摘するつもりはなかったが。
 つまり、努力型の人間なのに本を手に入れる為には努力しないという矛盾が勇美は引っ掛かるのだった。根は真面目な彼女であるから、そういう所に変に理屈を求めがちになるのである。
 だが、本を取るなというのは勇美の正論だろう。しかし、尚も魔理沙はしれっと返答する。
「だから、一生借りていくだけだぜ」
「それが取るって事ですよ……う~」
 態度を崩さない魔理沙に勇美は項垂れる。こういう図太いタイプの人間に打ち勝つには理屈っぽい勇美では少々分が悪いというものだろう。
 そう思った依姫はここで勇美に助け船を出す事にした。
「いつぞや私と戦った黒白さん。この子の言う通りよ」
「げっ、お前は……!」
 魔理沙は依姫の存在を認識すると、露骨に嫌そうな顔をした。
 無理もないだろう。かつて月で彼女を圧倒した相手と再び出会ったのだから。
 あの勝負では依姫は魔理沙に心残りが出ないように密かに配慮して戦った為に、魔理沙の足を今引っ張っているものは幸い存在しない。
 だが、幻想郷でも上位の実力を持つ魔理沙を巧みに制した相手を目の前にしては、さすがの魔理沙とて穏やかな心持ちはしないというものだろう。
 依姫とてその事は薄々察しているだろう。だから敢えて影響力のある自分がこの場で名乗り出たのも意図しての事であった。そして、彼女は続ける。
「これから私と、ある勝負をする気はない? この勝負に勝ったら貴方は本を持っていっていいわ」
「ちょっ!? 何勝手に話を進めているのよ!?」
 当然図書館の本の扱いを他人に決められたパチュリーは上擦った声を出して抗議する。
(まあ見てなさいって)
 だが依姫は至って落ち着いて小声でパチュリーに諭すように言う。
(何だか分からないけど、そこまで自信満々に言うなら信じるわ)
 威風堂々とした依姫の態度に、パチュリーも折れる事にした。
 そして、依姫は続ける。
「ただし、勝負に貴方が負けたなら、本を持っていく事は諦めなさい」
 それからと依姫は続ける。
「今図書館から持ち出している本も返却する事、分かったかしら?」
「ああ……」
 さすがの魔理沙も、依姫の貫禄にたじろぎながら何とか声を絞り出すしか出来なかったようだ。
「あなた、いいアイデア出してくれるじゃない。その心意気、気に入ったわ」
 ここでパチュリーは乗り気の意を示した。今現在魔理沙が持ち出している本が帰ってくる。この展開はパチュリーにとっても美味しいものとなってきたからだ。
「それで、その勝負の内容って何よ?」
 そしてこの流れに意欲的になったパチュリーは食い入るように勝負方法を依姫に確認する。
「まさか、お前との勝負じゃないだろうな?」
 対して魔理沙は彼女らしくもない逃げ腰の発言をした。努力する分霊夢以上の実力を持つ依姫と自分が戦うのでは分が悪いと認める辺り、今の魔理沙は冷静であると言えよう。
 だが、その予想に反する事を依姫は言い始めた。
「安心しなさい、勝負方法は貴方と私の戦いではないわ」
 依姫としては本音としてはその勝負を一番したい所なのである。
 それは、魔理沙がかつて月で自分と戦った事で心が折れていないか確かめたいが故であった。
 だが、それは避けておくべきだと彼女は思うのだ。魔理沙に余り高い壁に何度も鉢合わせてはいけないのである。
 それは、努力とは自分自身が目標を定めてそれに向かっていくものだと依姫自身心得ている為である。
「何にしても魔理沙さん、頑張って下さいね」
 そこで勇美はそう他人事のように言った。
「ちっ……人事のように……」
 それに対して舌打ちする魔理沙
 だが、話の方向性はこの二人の思わぬ方向へと向かうのだった。
「勇美、勘違いしては困るわね」
「へっ? と言いますと?」
 依姫に話題を自分に振られて、勇美は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「勝負の方法は、勇美とのスペルカード戦に勝つ事よ」
「ええっ!?」
 勇美に出された助け船は、かなりの泥船だったようだ。そう思いながらもこういう展開にどこか慣れて来ているような自分が憎かったのだった。

◇ ◇ ◇

 勇美、依姫、魔理沙パチュリーの四人は紅魔館の図書館から広々とした庭へと繰り出していた。
 それは依姫が魔理沙の戦闘スタイルを考慮しての事であった。映像で月での彼女の戦いっぷりを見ていた勇美は適切な判断だと思った。
「いい配慮してくれるわね」
 依姫の配慮に対してパチュリーは労う。このまま図書館でドンパチやられて大切な本に危害が加えられては堪ったものではないからだ。
 こういう所が依姫の気が回る所だとただただ感心するのであった。
「向こうも私らに気を利かせてくれたみたいだし、いっちょ盛大にやろうじゃないか!」
 魔理沙は勝負の相手が依姫でなく勇美だと決まってから意気揚々と乗り気になっていた。勝てる見込みの薄い相手から、最近幻想郷で注目されてはいてもまだまだルーキーの相手になったのだからであろう。
 魔理沙は男勝りであり豪快な振る舞いをしているが、苦手なものは苦手であるため、こういった現金な部分も時折垣間見せるのだった。
「うう~、私がまだ未熟だからって油断してると足下掬われますよ!」
「おう、掬ってもらおうじゃないか!」
 負けじと勇美は返すが、現状魔理沙の方が一枚上手なようである。
「それじゃあ行くぜ!」
 そう言って魔理沙は、自力では飛べない彼女が空を飛ぶ為の手段である自前の箒に跨がり、それに魔力を込める。
 すると彼女を中心に突風が巻き起こり、魔理沙は飛行を始めたのだ。これが彼女の十八番の戦闘スタイルである。
「お前は相手の攻撃を切り崩すスタイルが得意だったな?」
「ええ? はい」
 宙に浮かぶ魔理沙から突然質問を投げ掛けられて、勇美は少々驚いて返答をする。そして、自分の今の戦闘スタイルについて心の中で自問自答した。
 ──確かに、神降ろしの力を借りてからの自分の流儀は相手の攻撃をかいくぐるようなものとなっていたのだ。
 これは依姫の影響が大きいだろう。勇美は依姫とは被らないような手段を取っているつもりでも、敬愛する人に知らず知らずの内に似通ってしまっていたという事だろう。
 そんな思いを脳内で馳せている所へ再び魔理沙の声が掛かってきた。
「だから、ハンデとして私からいくぜ!」
「……」
 今度はその魔理沙の言葉に勇美は反論しなかった。何度も相手の挑発に乗ってペースを乱していては相手の思うつぼであるからだ。多少の悔しさは喉の奥に飲み込んで、勇美は強敵を迎え撃つ姿勢を取るのであった。
 そして魔理沙は更に一際高く飛び上がるとスペルカードを宣言するのであった。
「先手必勝! 【魔符「スターダストレヴァリエ」】!」
 続いて魔理沙から星の雨あられが放出された。
 これは勇美も見覚えのある攻撃であった。だから、心の準備は出来ていたのだ。だが。
(でも、どう対処しよう……)
 そう勇美は悩むのであった。依姫は月の大気の性質を利用して弾幕の流れを操作して難なくいなしていたが、生憎ここは月ではないのだ。
 ──いや、例え月であっても到底自分には依姫のような芸当は出来ないであろう。
 そう思い直した勇美は、自分に出来るやり方でこの状況を打破しようという結論に至ったのだ。
 そして、相手は幻想郷でも有数の実力者の魔理沙。『最初は……』という考えでは通用しないと考えた勇美は出し惜しみする事はナンセンスだと結論づけて行動に踏み切った。
(『天津甕星』様に『金山彦命』、私に力を)
 そして勇美の手にはSF映画で登場するような様相の機関銃が握られた。そしてスペルを宣言する。
「【星蒔「クェーサースプラッシュ」】!」
 そう叫び勇美は機関銃の引き金を引いた。
 これはレミリアと戦った時に見せた『プレアデスブレット』の発展系として見せた技である。
 そのような所謂上位の技をいきなり見せるのは無謀かも知れない。だが、出し惜しみしていては目の前の相手である魔理沙には太刀打ち出来ないだろうと勇美は思っての事であった。
 そしてシャリシャリと小気味良い音を連続で出しながら勇美も星の弾幕を繰り出していったのだ。
 それらが向かう先は魔理沙が放った星である。次々にぶつかって行くと一つ、また一つと断続的に爆ぜ続けていった。
 パンパンとポップコーンが弾けるような破裂音が続いていき、勇美の星と魔理沙の星とが互いに数を減らされていった。
 だが、完全に相殺される事はなかったようだ。ぶつかり合う事なくすれ違った互いの星はその勢いに乗ったまま相対する敵の元へと向かっていったのだった。つまり……。
「くぅっ……!」 
「ちいっ……!」
 勇美と魔理沙は互いに残った星の弾に被弾してしまったのだった。だが二人とも当たった弾は少量になっていたので軽いダメージで済んだようであった。
 そして星と星の応酬は幕を閉じたのだ。