力が欲しい

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER】第26話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第二十六話 沙の中の銀河:後編】
 尚も続いていた勇美と魔理沙の勝負。それは魔理沙の新しいスペルカードの猛攻により勇美が追い込まれる形となっていた。
 そこへ魔理沙が降参を薦めた所、勇美の様子に変化が見られたのだった。
「ん? どうした?」
 それに対して魔理沙は首を傾げる。
「降参ですってっ!?」
「!!」
 突如今までとは違った気迫を繰り出す勇美。これにはさすがの魔理沙も一瞬だがたじろいでしまった。
「おいおい、どうした?」
「降参ですって? 冗談じゃありませんよ!」
 その言葉を勇美は受け入れる寛容さはなかったのだった。──それが勇美が自分に課した復讐だったからだ。
 潔く諦める事も生きていく上で必要である。だがそれと妥協は違う、そう勇美は自分に言い聞かせているのだ。
 そして勇美は地面に倒れていた自らの肉体を持ち起こし、再び大地をその脚で踏みしめた。
「依姫さんは天宇受売命の力でのらりくらりと攻撃をかわしていたけど、やっぱり私はそう上手くいかないんだね」
 と、起き上がった勇美はそう呟く。それは魔理沙に語るというよりも、自分に言い聞かせる形であった。
 その様子を見ていた魔理沙は口角を吊り上げてにんまりと笑みを浮かべた。
「何だかわかんないけど、取り敢えず降参する気はないんだな?」
「当然ですよ、途中で投げ出すなんて『復讐者』としての私の名が廃るってものですよ!」
 と、熱い台詞の応酬をする二人であったが、側からみていた依姫の視線は少し冷やかであった。
「勇美、貴方のそんな通り名、初めて聞いたわよ……」
「うっ、細かい事は気にしないで下さい……」
 依姫に手痛い指摘をされて、勇美は頬を指で掻きながら苦笑いした。
 そこへ魔理沙が再び入り込む。
「まあ何だ、私はお前のそのガッツ、気に入ったぜ!」
魔理沙さん程の人にそう言って貰えると光栄ですね」
 親指を上に立てて相手の健闘を称える魔理沙に、勇美も満更ではない気分となった。
「そんじゃそんなお前に対して、次で最後にしてやるぜ!」
「はい!」
 魔理沙はこれから勝負に出る事を勇美に告げた。これが彼女流の強敵への敬意の示し方なのだった。
 そして、魔理沙は今一度箒に跨がり上空へ飛び上がった。──彼女自身が実力を最大限に出せる得意なフィールドへと向かったのだ。
「空から攻めて来る訳ですね!」
 それならと、勇美は『ダンシングシューズ』の力を脚から解放した。
 この力はグランドバスタースパークをかわす上で大いに役に立っていた。しかし、次の魔理沙の攻撃に対しては余り役に立たないと勇美は目に見えない何かから感じ取ったのである。
「そっちもやる気だな? じゃあ行くぜ!」
 言って魔理沙は再びミニ八卦炉を掲げ、照準を勇美に向けた。
 そして、渾身の一撃を込めるスペルの名を口にする。
「【恋心「ファイナルスパーク」】!!」
 その宣言と共にミニ八卦炉にまたエネルギーが集束し始めた。
「!!」
 だが、今しがた勇美が息を飲んだ事が示す通り、その規模は先程のグランドバスタースパークの時の比ではなかったのだ。
 集まる光と熱は大粒のものであり、それが寄り添ったものは凄まじいエネルギーの奔流を生み出し、大気は揺さぶられて震える程であった。
魔理沙さん、勝負に出ましたね……)
 勇美はそう心の中で呟きながら、当然今の現状に圧倒されていた。
 ──こんなものを相手にしなくてはいけないのか。勇美は頭の中で愚痴をこぼした。
 だが、当然避けては通れない道なのである。
 そう、それは文字通りの意味もあった。これ程の出力があれば、もはや目で見てかわす等という芸当は出来ないだろう。
 故に勇美も勝負に出る事にしたのだ。
(『アレ』をやるしかないか……アレは実戦では使ってないし、依姫さんにも見せていないんだけど、仕方ない!)
 と、勇美は何やらそう腹をくくったようであった。
 勇美がそのような思考を巡らせている間に、魔理沙の砲台は十分な力を蓄えて砲撃を開始しようとしている所であった。
「発射!!」
 そして莫大なレーザーが惜しげもなく放出されたのだ。
 その様子を見ていた勇美に「魔理沙さんってどこぞの宇宙で運用する戦艦みたいだなぁ」という突っ込みが浮かんだのだが、彼女はそれをすぐに振り払った──今はそんな呑気な事を考えている場合ではないのだ。
「それじゃあ、やりますか!!」
 勇美は意を決して迎え撃つ事にした。
 そして依姫を通じて力を貸してくれる神達に呼び掛ける。
「『石凝姥命』に『天照大神』よ、私に力を!」
 それを聞いていた依姫は「何ですって?」と驚いた。何故なら普段自分が神の力を借りる時には類を見ない組み合わせだったからである。
 そして勇美の目の前にいつも通りに金属の部品が集まり機械が生成されていく。──だが完成したそれはいつもとは様相が違うものであった。
「鏡……?」
 呟く依姫の視線の先には、巨大な機械仕掛けの鏡が備わっていた。そこで依姫ははっとなる。
「まさか、やたの鏡の時のようにあの技を弾き返す気ですか!?」
 それに続けて依姫は貴方にそれは無茶だと告げた。
 ──あの力は永い間修行を積んだ自分だから出来たのだと。
 しかし、勇美の場合は力不足だろう。
 確かに彼女は一生懸命に修行に向き合っている。しかし、神の力を借りる依姫から神降ろしの力を更に借りて、半ば強引にしがみついてきている勇美にはその芸当をこなすにはいささか荷が重いのだ。
 依姫がそんな思考を巡らせていると、そこに勇美の声が掛かった。
「安心して下さい依姫さん。私はこれからあなたの真似を真似しようとしてるのではありませんから」
 そう勇美は誓うのだった。先程依姫のように戦おうとしてしくじった事を自らの教訓にしたばっかりなのであった。
「それでは、貴方は一体どうするつもりなのですか?」
 当面の不安は解消されたが、新たな疑問が依姫には浮かぶ。
「まあ見ていて下さい。これはちょっと『賭け』になりますけど」
 そう勇美は依姫に微笑んで見せると、再び自分に迫り来る脅威に目を向けたのだ。
 案の定、光と熱の膨大な彷徨は尚も勇美を消し飛ばさんとばかりに襲い掛かっていた。
「もう、やるしかないですよね」
 勇美は呟くと、いよいよ未だ見せなかった奥の手の名前を宣言する。
「【陽鏡「ラーズミラー」】!!」
 意気揚々と勇美によってスペル宣言がなされた。
 すると、みるみるうちにその鏡に光の粒が集まっていったのだ。
「……!?」
 その様子を見ていた魔理沙は、何か少し衝撃のようなものが脳裏を走るような気持ちとなった。
 その最中にも光の粒は鏡面に次々と集約していった。
 それがひとしきり続いた後には、鏡面が黄金のように目映く輝きを放っていたのだ。
「こいつは不味いぜ……」
 霊夢程のものではないにしろ、魔理沙の勘がこの状況に警鐘を鳴らしていた。
「勘がいいですね♪」
 そんな魔理沙に対して勇美はニヤリと口角を上げると、魔理沙に向けて指を指して言う。
「発射!!」
 その号令と共に、遂に勇美の切り札が発動されたのだ。
 鏡面が一際輝くと、そこから極太のレーザーが照射される。
「!! やっぱり来たか!!」
 魔理沙は驚愕と共にそう言った。
 だが彼女に焦燥の念は見られなかった。寧ろ……。
「面白くなってきたじゃねえか!! こうなったら真っ向からぶつかってやるぜ!!」
「私とて、そのつもりですよ♪」
 互いに高揚とした態度をぶつけ合う勇美と魔理沙
 そう、勇美は元より魔理沙の砲撃に正面からぶつかる算段だったのだ。よもや真っ当な作戦と呼べるものではないだろう。
 だが、勇美に迷いはなかった。魔理沙には小細工など通用はしないだろうから、こうして馬鹿正直に迎え撃つしか彼女を突破出来る可能性は残っていないのだ。
「いくぜぇぇぇーーーっ!!」
「当たって砕けるまでですよーーっ!!」
 勇美と魔理沙は互いに熱く叫びあった。
 そして最大出力の『火花』と『太陽光』が激しく衝突する。まるで流れの違う濁流が接触したかのような衝撃が巻き起こった。
「ぐぅぅっ……」
「くうっ……」
 エネルギーを放出する二人は強烈に押し合う感触に思わず呻き声を漏らす。
「あの魔理沙とやり合うなんて……あの子やるわね」
「え、ええ……」
 驚きながらも側で語りかけてきたパチュリーに、依姫はうわの空で答えていた。
 それだけ依姫とて心を奪われるような光景が繰り広げられているという事であった。
 尚、依姫が驚いていたのは単にその規模に対してだけではなかった。
(今まで考えられなかったわ……天照大神の力を『飛び道具』に使うなんて……)
 それが依姫の着眼点であった。
 天照大神は太陽の神である。そして太陽は公転しない惑星なのだ。
 故に天照大神の力は自分から離れた場所に攻撃を繰り出す事が出来ず、その力を使いこなすには相手を自分の力の射程内におびき寄せる必要があるのだ。
 それが今までの依姫の知る常識だったのだが、たった今その概念が壊されたのであった。
(勇美、貴方の力は無限の可能性があるようね……いいわ、この勝負、思う存分戦いなさい。私は最後まで見届けるわ)
 そう心に決めた依姫の気分は晴れやかなものとなっていた。
 依姫がそんな思いを馳せていた最中にも、エネルギーの衝突は続いていた。それにより辺りは光と衝撃に飲まれている。
「はあ……はあ……」
「くぅっ……」
 そして二人共息が上がっていた。無理もないだろう。このような大技を出そうとも、互いに丈夫でない人間という種族なのだから。
 そこで魔理沙は口を開いた。
「勇美……次で決めようか……」
「ええ……私もこれ以上は限界ですからね……」
 勇美も魔理沙の提案に賛同したようだ。
 二人はそう言い合うと、両者とも懇親の力を自分が放つ極太の砲撃へと込めたのだ。
 今一層ぶつかる光と光は更に激しくぶつかり合う。そして、それは起こった。
 衝突し合う狭間から放出されるエネルギーが突然みるみるうちに膨張をし始めたのだ。
「こ、これは……」
 思わず息を飲む魔理沙
「これはまずいですね……」
 勇美もそれに同意するしかなかった。
 そして、遂にぶつかり合うエネルギーの奔流が、激しい閃光と高熱を振り撒きながら勢いよく爆ぜたのであった。
 ──即ちそれは、爆発も爆発の、大爆発だった。
「「うわあああーー!!」」
 思わず叫ぶ二人は真っ白に盛大に溢れる光にどっぷりと包み込まれていった。

◇ ◇ ◇

 光の爆ぜが収まると、そこは変哲のない、いつもの紅魔館の風景であった。
 そして、激戦を繰り広げた二人は……。
「ううっ……」
「うん……」
 唸る二人は両者とも地面に横たわっていたのだ。
 そんな中言葉を発したのは勇美の方であった。
魔理沙さん……まだ戦えます?」
 そう勇美に聞かれて、魔理沙は横たわったまま答える。
「いんや、無理、もう煙も出ないぜ……と言うか私自身の体が限界だ」
 そう言った後、こう続けた。
「そういう勇美はどうなんだぜ?」
「あ~、私ももう無理~」
 と、半ばやけっぱち気味に答える勇美。はしたなく乱れた短い和服の裾が彼女の心境を代弁しているかのようであった。
「と、言う事は……」
 そう魔理沙が言い、それに勇美が続く。
「引き分けって事ですね!」
「そうだな!」
 二人はそのように言い合い、結論が出たのだった。
 引き分け。それは『互いに負けなかった』というよりも『互いに勝てなかった』という気持ちが勝るケースが多いものである。
 だが、今の勇美と魔理沙にはそのような心持ちは余りなかった。互いに奮闘し合って倒れたのだから心残りはなかったのだった。

◇ ◇ ◇

 それから後日、この日も勇美は依姫と共に紅魔館の図書館に通っている所であった。
「う~ん、やっぱり読書しながらのコーヒーは格別ですね。小悪魔さん、私のわがままを聞いてくれてありがとうございます」
「いえいえ、気に入ってもらえてこちらこそ。それに勇美さんはパチュリー様のご友人ですから」
 勇美に呼び掛けられた図書館の司書である小悪魔はにこりと微笑んだ。
 勇美が言った事が示すように、紅魔館では客人に出す飲み物は基本、紅茶なのである。
 それを小悪魔は勇美がコーヒーを飲みながら本を読みたいという要望を律儀に聞いてくれたという訳である。
「お邪魔するぜ~」
 そこへ今までその場にいなかった者の声が走り、勇美は驚いてしまった。
 勇美が驚いた理由は、その声が初めて聞くものだったからではない。寧ろ、今では彼女にもとても馴染みのあるものである。
「あ、魔理沙さんこんにちは」
 取り敢えず挨拶は大切なので、勇美は魔理沙に声を掛けるが、腑に落ちない彼女は続いて質問をした。
魔理沙さん、今日は図書館に突っ込んで来なかったんですね」
「おいおい、まるで私がいつもそんな事してるみたいじゃないか?」
「現にその通りじゃないですか?」
「ぐっ……」
 勇美に事実を突き付けられて魔理沙は言葉を詰まらせてしまった。
「……まあそう言うな。折角私が本を返しに来たんだからな」
「え゛っ……」
 それを聞いてますます勇美は驚愕してしまった。
「そんな、魔理沙さんが本を返しに来るなんて……」
「失敬な。私だって約束は守るぜ。あの勝負を始める時決まってたじゃないか?」
 あの時の勝負の話を持ち出されて勇美は一瞬合点がいきそうになるも、再び腑に落ちなくなってしまった。
「あの勝負は引き分けだったじゃないですか?」
「いや、私が勝てなかったんだから、私は約束を守るべきだろ?」
「あ、成る程」
 魔理沙にそう結論付けられて、勇美はようやく合点がいった。
「それなら納得いきますね。でも、勝負を提案した依姫さんはどう思っているんですか?」
 勇美に話を振られて、依姫は少し思案するも、すぐに答えを出した。
「それは私が口を出す事ではないわ。こうなったら、もはや当人の問題よ」
「成る程、そういう考え方ですか」
「やっぱりお前は話が分かってくれて助かるぜ」
 月で弾幕ごっこでの解決法を受けてくれたしな、そう魔理沙は思い返しながら言った。
「ほら小悪魔、借りてた本返すぜ」
「ありがとう……ございます……?」
 本を返却口に出されて、小悪魔は応対をしながらも呆気に取られていた。やはり人ではなく悪魔でも慣れない光景には抵抗があるのだろう。
「それじゃあな」
 そう言い残して魔理沙は図書館を去っていったのだった。

◇ ◇ ◇

 今回魔理沙は騒動を起こしていないのだから、この場合『嵐が過ぎ去った』という表現は適切ではないだろう。
 だがそれ以上に普段の彼女からは考えられない言動の連続であった為、やはり注目の中心となってしまったようだ。
「あ~、驚いた。魔理沙さんの場合、落ち着いた言動が逆に異質ですよ……」
「同感ね」
 勇美の言葉に、依姫も同意する。それを切っ掛けにしたのか、依姫はこんな事を切り出す。
「でも、普段の彼女の事も少し分かってあげる必要があると思うわ」
「と、言いますと?」
 突然話題を振られ、勇美は何だろうと首を傾げる。
「勇美は彼女が努力家なんだから、本も強奪なんかしないで努力してお金を貯めて買うべきだと思っているのよね?」
「はい、当然です」
 それが礼儀でありルールですよ、と勇美は付け加えた。
「確かに勇美のその意見は正論ね」
 だがその後に「でもね……」と付け加える。
「努力は有限だという事を忘れないで欲しいのよ」
「努力が有限ですか……?」
 勇美は依姫の思いがけない言葉に神妙な心持ちとなった。
「勘違いしてはいけないわ。これは『可能性』の事ではなく『機会』の事を言っているのよ」
「機会ですか」
 勇美がその言葉に相槌を打つ。
「そう、機会。生きる者はいつ努力を満足に出来る環境を失うのか分からないものよ。特に時間が限られている人間はね」
「確かに……」
 その依姫の出した理論に勇美はじわじわと納得し始めた。
「だから、彼女がお金を出して買うという努力を省いて、より知識の吸収に費やそうとする姿勢は理解してあげないといけないのよ。努力は有限なのだから」
「あなたの言う通りかも知れないわね」
 そこに今まで二人の話を聞いていたパチュリーが入って来た。
魔理沙の為に、考えてみる必要があるわね。そうね、例えばこの図書館の本を貸し出し制にするとか」
「それはいいわね。でも、あの子、返却期日は守りそうにないわよね」
「全くね……」
 依姫の指摘に返しながらパチュリーはふと思った。
『あいつ』の力ならこの問題を解決出来るかも知れないと。自分と色の趣味が似ている『あいつ』なら。
 最近音沙汰がないけど、今どうしているのだろう? そう思いを馳せるパチュリーであった。