皆さんは小説の描写方法は主人公の語りである一人称と、情景描写が為される三人称ではどちらがお好みでしょうか？
私の好みを言わせて頂くと、三人称小説になります。
この手法をうまく為されている作品は臨場感があってその世界に引き込まれますし、主人公以外の人物の事情や信念、葛藤等が細かく為されて客観的な物の見方が出来て好きです。
しかし、ネット上の小説投稿サイトに投稿されている作品の多くは一人称描写である傾向があります。
まず、書き手の方が一人称での描写が得意な事が理由に思われます。情景描写をするよりも、主人公の一人語りで進めていった方がやりやすいのでしょう。
これは男性の作家が多いように思えます。女性の場合はきっちり三人称で書く事が多いようです。
書き手が一人称を好む人が多いのはこれで明らかでしょうか。
しかし、問題は『読み手』も一人称の作品を好むという事です。人気作品に一人称小説が多く軒を連ねているのです。
『小説家になろう』では圧倒的にその傾向が顕著です。ある人がファンタジー小説お薦めベスト15を挙げていたのですが、三人称は15作品中3作品が一人称でした。しかも二つは一人称で書き慣れた人が強引に三人称にしたといった感じで、実質真っ当な三人称作品は僅か一つでした。
『ハーメルン』ではその傾向は小説家になろうよりも緩いですが、私が独自に集めた作品で一人称（三人称が混ざるものもあり）と完全な三人称の作品では14：5と、ここでも一人称が多かったです。
以下がネットで一人称小説が好まれる、私なりの考察となります。あくまで私の見解である事を断っておきます。
ネット利用者はリアルよりも、『周りは自分を満足させるべき』と考える人が多い傾向であると思われます。
なので、ネット利用者の多くは小説に求める事は、『活字を読み進め、その世界に入り込んでいく』よりも『小説の世界内でいかほどの利益を得られるか』に重点が置かれるのでしょう。
故に、三人称でしか出来ない『周りの情景描写』や『主人公以外の人物にスポットを当てる』という行為ははっきり言って邪魔になるのでしょう。要は主人公＝自分にどれだけ功績が舞い込んでくるのが重要なのですから。
対して、一人称ではそういった描写がし辛い為に余計な物が排斥されて、ネット利用者の多くの好みに応える形になるのでしょう。
そう考えるとネット利用者にとっては、怪我の巧妙のような形になったと考えられると思います。
