力が欲しい

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER】第39話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第三十九話 月の巫女と楽園の巫女:前編】
 守矢一家との関わり合いは勇美と依姫にとっても有意義なものとなった。
 だが、一つ問題が生まれてしまったのだ。
 その日勇美は依姫との修行を終えて自室へ戻る為に彼女と別れようとしていた所であった。
 そんな矢先、永遠亭の玄関で声がする。
「ごめんくださーい」
 その声を聞いて勇美は背中にこんにゃくをぶっ込まれるが如く悪寒を感じた。
「依姫さん、あなたの部屋の押し入れに隠れさせて下さい!
 居留守を使いますから、後の事はよろしくお願いします!」
「?」
 そんな切羽詰まった様子の勇美に、依姫は意図が読めずに首をかしげる
 その最中にも勇美は有無を言わさずに依姫の部屋の押し入れに隠れてしまった。
 玄関では永琳がその声の主に応対していた。
「何のご用かしら?」
「あ、永琳さんこんにちは。今勇美さんはいらっしゃいますか?」
「ええ、確か依姫の部屋の近くにいたと思うわ」
「ありがとうございます」
 そう言って依姫の部屋の前にやって来たのは──東風谷早苗であった。
 そして早苗は依姫と対峙する。
「あ、依姫さんこんにちは」
「ええ、こんにちは」
 と、二人は何気ないやり取りをするが、依姫は何か違和感を覚えていた。
 その気持ちを抱きながら依姫は続きを促す。
「勇美に何のご用かしら?」
「いえ、用という程の事ではないのですけどね、ちょっと勇美さんとデ」
「お引き取りなさい」
 依姫は間髪入れずに断った。早苗が開けてはいけない扉を開く前に。
「うぅ……分かりましたぁ……」
 早苗は陰鬱なオーラを出しながらとぼとぼとその場を後にしていった。
 その様子を見ながら依姫は思った。「あの様子じゃ絶対に諦めてくれてないわね」と。
 ともあれ、そんな早苗を見送った依姫は自分の部屋に隠れている勇美に呼び掛けた。
「勇美、もう大丈夫よ」
「ありがとうございます。助かりました~」
 言いながら勇美は押し入れから出てきた。
「勇美、貴方の判断は正しかったようね」
「依姫さんも、のび太くんと違って話をすぐに理解してくれて助かりましたよ」
 依姫は勇美の別次元の発言も、今回は目を瞑る事にしたのだ。──何たって、先程の早苗は危なすぎたからである。
「でも、私早苗さんの気持ち、少し分かるような気がします」
「いや、分かってはいけないって」
 突拍子もなく聞こえる勇美の発言に、依姫はらしくなく取り乱す。
「いえ、さすがに女の子同士なのに付き合うとか、ペットにされかけるのは勘弁ですけどね。
 ……早苗さんにとって私って、初めての外来人同士じゃないですか」
「あ、確かに」
 依姫もそこまで言われて話が見えてきたように感じたのだ。
「要するに早苗さんは幻想郷で周りが見ず知らずの人妖達で寂しかったんじゃないかと思うんですよね」
 そこで勇美は一呼吸置き、続ける。
「だから、ディープな関係は遠慮したいですが、お友達や話し相手ならいいかなって言うのが私の考えです」
「勇美、そんな考えが出来るようになって、着実に成長しているわね」
「ありがとうございます」
 依姫に微笑みながらそう言われて、勇美は嬉しくなるのだった。

◇ ◇ ◇

 そして、勇美と依姫はとある森の中にいた。
「依姫さん、私が自ら申し出た事ですけど、やっぱり怖いです」
「私がいるから大丈夫よ」
 今の状況に恐れる勇美に、依姫は頼もしい態度で言う。彼女の場合は実力が十分すぎる程備わっているため、決して虚勢ではないのだ。
 勇美が怖がる訳。それは二人の周囲に数多の下級妖怪が身を潜めているからだ。
 そして、ここは博麗神社の境内の森の中なのだ。
 そう、神聖な筈の神社の敷地内であるのに、あろうことか妖怪が蔓延っているのである。
 だが、幸い彼女達に妖怪が襲ってくる様子はない。それは他でもない、依姫がいるからだ。
 基本的に下級妖怪は見境なく人を襲う。人里の近くで襲ってくるのは彼等なのだ。
 だがそんな彼等であっても、依姫の力に勘づいて手を出さないようだ。依姫はそれ程の存在という事だ。
「う~、霊夢さんは何をしているんですか~」
 自分の敷地内で妖怪を好きにさせている巫女、博麗霊夢に対して訝りを覚える勇美。
 そう、今二人は霊夢に会うべくここへ来ているのだ。
 依姫は事前に何故霊夢に会おうと思い立ったのかを勇美に説明していた。
 曰く、依姫にとって『楽しみを途中で取り上げられてしまったようなもの』との事である。
 かつて月で依姫は霊夢との恨みっこ無しの真剣弾幕勝負を望んだのだ。
 しかし、結果は依姫達月の民にとって毒である『穢れ』を月でばら撒き、依姫の弱みに付け込み彼女の得意分野である『回避』を防ごうとする姑息な手段に霊夢は出てしまったのだ。
 幸い依姫が『伊豆能売』を降ろしてその穢れを浄化して大事には至らなかったのであるが。
 依姫にとっては最後までじっくり行いたかった勝負を途中で寸断されるような、宙に投げ出されたかのような結果に終わってしまったのだった。
 故に、今回依姫が霊夢に会いに行く理由は『きっちり弾幕勝負を完結させたい』というものなのだ。
 勿論その場に勇美が着いて行く事になったのは、依姫が強要したからではなく、勇美自身の意志である。
 勇美自身、幻想郷において弾幕ごっこという範疇ではあるが最強を誇る霊夢に、この機会に会いたいと切望したのだ。
 勇美自身も霊夢に会いたいのであるが、今回一番霊夢に会う意味合いが強いのは依姫であろう。そう思い勇美は言う。
「依姫さん、要はあの月での時、ハンバーグ定食を食べ切り損ねたような気持ちなんですよね?」
「? ええ、まあそうよ」
 依姫は相槌を打ちながらも首を傾げる。何故ハンバーグ定食を例えに出すのかと。
 そうこうしている内にも、勇美と依姫は無事に博麗神社にたどり着いていたのだった。
「あー、しんどかった……」
 勇美は息を切らしかけながらそう愚痴る。
 何故なら彼女は神社の入り口に行くまでの石段を登って来たからである。
 彼女は運動神経が良い方ではないのだ。だから今回の行為は彼女にとってはとても重労働なのだった。
 対して肉体的にも洗練されている依姫は涼しい顔をしている。
「勇美、肉体の修行が足りないわねぇ~」
「うう~、こればっかりは体質ですからどうにもなりませんよ~」
 依姫に茶化されて項垂れる勇美。
 そして依姫は『肉体の』と言った。それは勇美が能力や考え方を磨く鍛練を抜かりなくやっている事を依姫は分かっているからであった。
 そんな依姫のさりげない優しさに勇美は内心嬉しくなっていた。
 そうこうして二人は霊夢の元へと赴く。

◇ ◇ ◇

 そして博麗神社の境内の建物の中でまったりとくつろぐ者。それが博麗霊夢その人であった。
 彼女は今、彼女の動力源である緑茶を啜りながら、お茶請けの煎餅にありついていたのだ。
「う~ん、しあわせ~」
 蕩けるような満面の笑みを浮かべる彼女は、正に今この世の極楽浄土を貪るかのような快楽に浸されていた。
 だが、悲しいかな、平和とは長く続かないものなのだ。それは今の霊夢とて例外ではなかったのである。
霊夢さん、今度は依姫さんに最後までハンバーグ定食を食べさせてあげて下さい!!」
「がああああ!!」
 無遠慮に開け放たれた障子の先から突如放たれた叫びに、霊夢は驚愕してはしたない呻き声をあげてしまった。幾分か飲もうとしたお茶が鼻から出てしまったようだ。
「……!? ……!?」
 霊夢は混乱した。幾ら自分が勘が優れているといっても、さすがに突如障子を開け放たれた挙げ句ハンバーグ定食などと意味不明な事を突き付けられるという突拍子もない事までは予測不能でなのであった。
「ほら、言わんこっちゃない。霊夢が混乱してるじゃないの」
 あまつさえ、ハンバーグ定食発言源とは違うもう一人の方は、余り関わりたくない声の主である。
「……何しに来たのよ、依姫に黒銀勇美」
 霊夢は瞬時に訪問者の構成員を言ってのけた。今度は彼女の勘がきっちり働いているようだ。
「そりゃあ霊夢さん、ハンバーグ定」
「「あんた(貴方)は黙ってなさい」」
「はうあ……」
 依姫と霊夢の連携に、勇美は口の中に綿を詰め込まれたかのような感覚に陥りながら閉口した。この二人は同じ神事に就く仕事柄の関係上、どこか意識の通づる所があるのかも知れない。
 そして、話をややこしくした勇美の代わりに依姫が用件を言う。
「それは、他でもないわ。霊夢、私と弾幕勝負をしなさい」
「……」
 この瞬間、霊夢は「ついにこの時が来たか」と思った。彼女の勘が不確かながらも以前から告げていたのだ。
「……分かったわ」
 霊夢は快く……とはいかないながらも、その申し出に承諾したのだ。──ここで断っても事態の解決には至らないだろうと感じるからである。
「ありがとう。では早速始めましょうか。
 貴方も暇じゃないのでしょうし」
「ええ、てっとり早くお願いするわ」
 依姫の皮肉に応酬する形で霊夢は彼女との視線に火花を散らす。霊夢にも巫女としてのプライドがあるようだった。
 その二人の間で、勇美は文字通り手に汗を握っていた。──幻想郷と月の有力者同士の対決の場に自分は立つんだと。

◇ ◇ ◇

 依姫と霊夢は博麗神社の庭に繰り出し、勇美は縁側で観戦する形となった。
 そして依姫が口を開く。
「まずは私から行かせてもらうわ。貴方には遠慮は無粋であるでしょうから」
 そう依姫は言い切った。
 霊夢は基本的に弾幕勝負において相手には無慈悲であるし、霊夢程の実力の者相手には手加減など不要だと依姫が考えての事であった。
「ええ、どうぞ」
 その事を察したのか、霊夢の方も素直に頷く。
 その瞬間、依姫は弾かれるように行動した。
「【炎弾「伊の英雄の火礫」】!」
 依姫は愛宕様の力を借り、出始めにおいて得意な戦法を取る。まずは小手調べである。
 依姫の手から火の玉が投げ出され、それが霊夢目掛けて襲い掛かった。
 それを見て霊夢は「ふん」と鼻で笑うと、何事もないかのようにスペルカードも使わずに無駄のない動きで次々と回避したのだった。
 その様はまるで薄手の衣、はたまた実体のない影のようであった。
 即ち、掴み所がないのだ。これが彼女が『無重力』と称される所以である。
「凄い……」
 勇美はその様子を見て呆気に取られてしまった。──自分とは次元の違う戦いをすると。
 ちょっとやそっとでは自分がたどり着けはしない領域であると、勇美は腹を括りこの戦いを見届けようと心に決めるのであった。
「月でのあの時とは動きのキレが違うわね」
「ええ、私に侵略者なんて向いてなかったからね」
 全ての攻撃を避け終えた霊夢は、さらりとそう言ってのけた。
「これなら期待出来るわね」
 ここで依姫は心踊るような気持ちになる。これならあの時と違い『お互いに楽しむ』事が出来るだろうと。
 対して、今回心に余裕が出来た霊夢は口角を上げて言う。
「それじゃあ、次は私の番ね」
「ええ、来なさい」
 依姫もそんな霊夢に対して闘志を燃やす。
 そんなやり取りをした後、霊夢はおもむろに宙へと飛び上がった。
 そこから地上の依姫目掛けてスペルカードを繰り出す。
「【宝符「陰陽宝玉」】!」
 宣言後、霊夢の手から次々と勾玉を二つ上下逆に組み合わせたような紅白の模様の玉が放たれた。
「甘いわね」
 だが依姫はそれを手に持った刀で、ハエ叩きのような手つきで斬り落としていったのだった。彼女もまたスペルカード無しで相手の攻撃をいなしたのだ。
「やっぱり、あんたやるわね……」
 そう宙で毒づく霊夢。やはり彼女が相手だと普段の妖怪退治のように柔順に済みはしないようだと。
「でも、これならどう?」
 言って霊夢は次のスペルカードを出そうとする。
「【宝具「陰陽鬼神玉」】!」
 すると、霊夢の手から先程の陰陽玉が一つだけ投げられた。
 だが、先程までとは違い、それが空中でみるみる内に巨大化していったのだ。
 そして気付けばそれは元の10倍程のサイズになっていた。
 そのような状態で容赦なく重力に任せて依姫に迫っていた。
「このサイズならあんたでも切り払うのは難しいんじゃない?」
 自分の優位を感じて強気で言う霊夢
 だが、余裕の態度であったのは依姫も同じであった。
「確かに難しいわね。──私だけの力ではね」
「!?」
 依姫の言葉に訝る霊夢。そして彼女の勘が自分の流れが狂った事を告げた。
 そして、依姫は霊夢の勘が告げた事を実行する。
「【力符「荒ぶる神の膂力」】……」
 依姫は祇園様の力を借りると静かにそう呟く。そして彼女の周りにオーラのようなものが立ち込める。
 そして、事は一瞬にして起こっていた。依姫の刀の一閃が、ぶれる事なく的確に、多大な質量を持って迫っていた凶玉を真っ二つに寸断していたのだ。
 二つに割れた宝玉は、それぞれ重力に引かれる形で地面に突撃すると、激しい震動と音を出してめり込んだ。
「あわわ……」
 それを縁側で見ていた勇美は腰を抜かしかけていた。自分の間近でそのようなえげつない現象が起こっては無理もないだろう。
 そして、勇美よりも意表を付かれてしまったのは霊夢である。何せ渾身の宝玉攻撃が軽くいなされてしまったからだ。
「何か面白くないわね……」
 そう霊夢は愚痴る。だがそれは月で依姫と戦った時と違って、この戦いに意欲を出している事の裏付けでもあった。
「あら、意外にアツくなっているのね」
 その事を察して依姫は挑発的に言った。
「まあ、誰かさんのせいでね」
 それに対して霊夢も満更ではなさそうに振る舞う。
「その様子なら、私は押しに掛かっても問題ないわね」
 そう言って依姫は祇園様により膂力を得た状態のまま刀を一旦鞘に閉まった。
 そして腰を落とし、踏み込みを入れる。
「はっ!」
 その状態から依姫は居合いの要領で刀を一気に振り抜いた。
 そこから凄まじい剣圧が打ち放たれ、上空の霊夢目掛けて飛び掛かったのだ。
 先日の勇美との戦いで早苗はスペルカードを用いて、風の力で剣圧を放って勝負に決着を付ける形となった。
 しかし、依姫は祇園様から膂力を借りはしたが、スペルカード宣言無しに今のような荒業をやってのけたのだった。
 そして、剣圧の刃は霊夢の喉元まで迫り、的確に彼女を捕らえた。激しい衝撃が走り勇美は目を一瞬背けてしまう。
 衝撃が収まったので勇美は再び霊夢に目をやると、勇美は驚愕する事になる。
 何と、剣圧の直撃を受けたにも関わらず、霊夢には傷一つ付いていなかったからだ。
 その理由は霊夢の口から語られる事となる。