この小説は、ファイナルファンタジー5の二次創作官能小説となります。なので、18歳未満の方や原作のイメージを壊したくない方はご覧にならないようにお願いします。
また、この小説もノベライズ小説にカテゴライズされていますが、実際はオリジナルの内容です。
「はあ~……」
そう溜め息をつきながら、クルルは今思い悩んでいた。
彼女のフルネームはクルル・マイア・バルデジオン。
その容姿はまだあどけない少女で、それに加えて金髪をポニーテールにしている事からも可愛らしい雰囲気を纏っている。そんな彼女はバル城の王ガラフの14歳の孫娘である。
そのガラフはクリスタルに光の四戦士としてバッツ達と共に戦っていたのだが、悪の権化エクスデスから仲間を守る為に戦い、命を落としたのである。
その彼が育てたクリスタルの力を受け継ぎ、バッツ達の新たなる仲間となったのが、このクルルという訳である。
そして、彼女が悩んでいる理由は、その『クリスタル』に原因があったのだった。
だが、一人で悩んでいても仕方がない。彼女は「よしっ!」と自分を震い立たせると仲間の一人に相談しようと心に決めたのである。
◇ ◇ ◇
「それで、私に相談って何?」
そう首を傾げながらも優しく微笑みながら返してくれたのは、クルルの仲間の一人である、レナであった。
クルルが彼女を相談役に選んだのには理由があった。まずバッツは20歳の成年で、つまり立派な大人の男性なのである。故にクルルにとって気兼ねなく相談出来る存在ではなかったのだった。彼は子供じみた言動をしはするが、それでもれっきとした成人男性なのである。
次にファリスである。この者も女性ではあるが、海賊の頭を務めるが故、威厳を保つ為に普段から男装をしているのである。だから、クルルは同じ女性として彼女に相談するにはやや憚りというものが存在するのであった。
そうなると、残るのはレナである。彼女は生まれも育ちもタイクーン城の姫君として育った為、女性としての振る舞いは洗練されていたのである。それでいて王族でありながら庶民的な感性も持ち合わせている為、クルルにとって一番壁を感じずに話せる人なのであった。そういうクルルもれっきとした王族なのだが、まだ幼いが故にその自覚は少ないのであった。
ここで仲間の説明はさておき、クルルは無事にレナに話を切り出せたのである。後は詳しく話すだけである。
「みんながいる所だと恥ずかしいから、レナの部屋で二人で話したいな」
「分かったわ」
そういって二人は今借りている宿のレナの部屋へと向かったのだった。
◇ ◇ ◇
「ここなら外に声は聞こえないよね?」
クルルはキョロキョロと辺りを気にしながらレナに言う。
「大丈夫よ、この部屋には誰もいないわ。聞き耳を立てている存在の気配もないわ」
そうレナは断言する。それは今までクリスタルに選ばれた戦士として鍛錬を重ねて様々な驚異に立ち向かう実力が身に付いた者だからこそ言える事であった。
それでなくても彼女は姫君でありながら剣の鍛錬は欠かした事がなかったのだ。故に彼女の感性というものは非常に磨き抜かれているという事である。
そんなレナが安全だと言ったのだから、それを信じない理由など存在しないのだった。だから、クルルは気負いなく自分の抱える話題を切り出す事が出来たのだ。
「ちょっと気にしすぎかも知れないんだけど、私の『物まね師』の格好の事なんだけど……」
『物まね師』……。それはクリスタルの力で生み出される力の一つである。
彼らはクリスタルから様々な能力を分け与えられ、それを磨き自分の物にする事で強くなってきたのである。物まね師はその力の一つという訳だ。
「物まね師がどうしたの?」
要点を得ないレナであったが、クルルの真剣な振る舞いから無理をさせずに優しく問いかけようと心に決めながら促した。
そんなレナの配慮に心地よさを感じながらクルルは遂に本題を切り出すに至ったのだ。
「クリスタルが用意した私の物まね師の格好、ノースリーブなのでちょっと恥ずかしいんです」
クリスタルは力を与える際、その力を行使する時の衣装を自らの意思で決めているのだった。そして、そのデザインは力の利用者に合わせたものとなっていた。
魔道士系では別の使用者でも変化が少ないものの、例えばモンクではバッツは上半身裸のズボンだけ、レナはチャイナ服といった具合にクリスタルは対象を考慮して衣装を選んでいるのだ。これが女性であるレナが上半身裸だったらえらい事になるだろう。
そして、最近手に入れた物まね師の衣装に問題があったのだ。
物まね師の衣装は些か特殊であるのだ。
他の力の物は普段着とはかけ離れたいかにもその道の『専門』の服装である。
しかし、物まね師のそれは例外であるのだった。それと言うのも、この衣装は彼ら光の四戦士の普段着にマントが付け加えられたという他とは一風変わった様相なのであるのだ。
恐らくは、物まね師は他の力で鍛練した特性を受け継ぎ使いこなす事が出来るようになる為、それを滞りなく行いやすくする為にクリスタルが普段着に近い衣装を考案したのだろう。
そこまでなら何も問題はなかったのである。
それにより確かに物まね師の衣装はマントの付加以外、まるっきり普段着と変わりはなくなっていたのだ……クルル以外の他の三人は。
だが、クルルだけは例外なのであった。いや、普段着がベースに作られている事に変わりはないのだ。
だが、完全な再現ではなかったのだった。彼女のそれのみ、黄色の長袖の上着にあたるものが消滅していたのだった。そして、残ったのはその下に来ている紫色のノースリーブワンピースのみという事であった。
上着とマントを同時に身に付けようものなら、ごわついて仕方がないだろうからというクリスタルの妥協的判断からだろう。それならマントの方をどうにかした方が良かったのではないかという突っ込みも生まれるのだが。
それはそうと、理由は何にしろこれでは普段存在していて安心出来る上着の着用を禁止されたようなものだ。女の子にとってはちょっとしたセクハラ紛いの仕打ちというものだろう。
それらの考えをクルルはレナに打ち明けたのだった。年は少し離れていても、同じ女の子なのだ。きっと分かってくれるだろうというクルルの切実な願いが籠められているのである。
そこまでの話をレナは丁寧な態度で、聞き逃す事のないように堅実に聞いていた。そして、クルルからの話を聞き終えると、しんみりとした表情でクルルに向き合いながら言った。
「そっかあ……」
相手の気持ちを十分に汲み取った事の分かるその一言をレナは呟いたのだった。この何気ない気遣いの態度にクルルは嬉しくなる。
「クルルはとても悩んでたんだねぇ~。無理もないよ、あなたも女の子だものね」
そう言いながらレナはクルルの頭を撫で付けたのだ。そのこそばゆい接触にクルルは頭の中が心地よいくすぐったさで満たされてしまう。
「あ……」
その心地よさに、クルルは思わず呆けた声を出してしまう。それだけ、ずっと味わっていたいと思わせる程の抱擁力がレナにはあったのだ。
夢見心地の中を彷徨うかのような意識の中に今のクルルはいた。だが、次にレナはその浄土から一気に引摺り出さんばかりの強烈な発言をクルルにするのだった。
「それで、クルル。ノースリーブの悩みはノースリーブを着慣れている人にしようと思ったのね?」
「はえっ!?」
その思いがけない直球発言にクルルはたじろいでしまった。
そう、レナの普段着はオレンジ色の体のラインが良く出る、ノースリーブかつミニスカートという王族らしからぬ非常に悩ましい衣装なのであった。もしかしたら、剣術に勤しむ内に体を動かしやすいように自然と露出度の高い服を好むようになったのかも知れない。
「あ、いや……」
対してクルルは今必死に取り繕っていた。そのような下心の元ではなく、一番気兼ねなく話せる人だったからレナを選んだのであって……いや、もしかしたら餅は餅屋の理屈でノースリーブを愛用している人に聞いてみたらいいかという気持ちも僅かながらあったかも知れないともクルルは思考を巡らせるのだった。
「ふふっ」
そんな素直で可愛らしい仕草をするクルルを微笑ましく思いながらレナはクスリと微笑んだのだ。
「何てね、本気にしちゃダメだよ、クルル♪」
「レナってばぁ~……」
そんなレナの言い草に、クルルは安堵と多少の訝りを覚えて息を吐くのであった。
そのクルルに対して、レナは少し考え込むように頬に手を当てながら言う。
「でも困ったわねえ……」
そう言いながらレナは考えを巡らせる。
クルルにとって物まね師の服装が恥ずかしいなら、その力を使わなければいいという選択肢もあるだろう。
だが、この力は打倒エクスデスに大いに役に立つ事は明白なのであった。故に少し無理をしてでも馴染ませる価値はあるだろうとレナは踏んだのだった。
「あ、そうだ!」
と、ここでレナは何かを閃いたようだ。クルルも気になり、それは何なのかを聞く。
「どうしたの、レナ?」
そうクルルに聞かれたレナの表情はどこか悪戯っ子のような無邪気な笑顔となっていた。後一年で成人する年齢とはいえ、彼女には子供らしい純粋さは残っているようだ。
そして、レナは得意気にこう切り出し始める。
「クルル、あなたは『踊り子』の格好には慣れていたわよね」
「何で踊り子?」
クルルはそう切り出されて頭に疑問符を浮かべる事しか出来なかった。
そんなクルルに対して、レナはほんわかとした笑みで以て答える。
「それは、これからのお楽しみよ。だからまずは私の質問に答えて欲しいなぁ~」
「あ……」
その妖艶でいながら愛らしい振る舞いにクルルは完全にペースをレナに持っていかれるのであった。だから彼女は正直に答える事にする。
「うん、大丈夫だよ」
クリスタルが用意したクルルの力の為の衣装は、彼女がまだ子供である事を考慮してか、そのほとんどが露出度控え目で色気とは無縁のものであった。
だが、踊り子だけは例外であったのだ。この力の衣装はオレンジのノースリーブ、しかもへそが見え隠れしてしまう程のデザインに、後はヒラヒラした水色の頼りないスカートに素足にサンダルというものであったのだ。──明らかに他のクルルの衣装よりも大胆な見た目なのだ。
だが、この踊り子の衣装に関してはクルルは別段抵抗はなかったのである。物まね師と違って、あくまで『新規で用意された衣装だから仕方ない』と感じるが故に妥協出来たのである。
その踊り子の服装がどうしたのだろうか? クルルがそう思っていると、レナはこんな事を提案してきたのだった。
「それじゃあクルル、これから私と一緒にこの町を見て回ろうか。ただし、あなたは踊り子の衣装でね♪」
「えっ?」
そんな突拍子もないようなレナの発案にクルルは頭をひっくり返されるかのような、猛烈な違和感を感じたのだった。
◇ ◇ ◇
今クルル達がいる町は、潮風と波の音と見張らす水平線が美しい港町なのであった。そして、町の建物の造りもその外観を損ねないようにと、実に華やかな様相となっていたのだ。
故に、そんな町を練り歩いて回る、それだけで心と体が洗い流されるような爽快な感覚に陥るのだった。
そのような時間をクルルは露出度の高い踊り子の服装で、レナと共に過ごしたのだ。それにより潮風と港の空気が彼女の二の腕や太ももや足を撫で付ける感覚がより強く感じられたのである。
だが、別段悪い感じはしなかった。いや、寧ろ心地よさすら感じられた訳である。この美しい港町を踊り子の際どい格好で過ごす事により彼女の体が悦ぶのが分かるのだった。
「見て見てクルル、あれがこの町の名物の時計塔よ♪」
「うわあ、すごいね~♪」
故にこの町を共に見て回っているレナとの会話も非常に弾むのであった。
そうしてクルルはレナと一緒に、充実した憩いの一時を過ごしたのだ。
◇ ◇ ◇
そして、クルルとレナは再び宿のレナの部屋へと戻って来たのである。
「ああ、楽しかった~♪」
「私もよ、クルル♪」
部屋に入った二人はそう言い合って共に喜んだのであった。
本当なら町の観光の余韻を噛み締めるべく二人とも部屋でゆっくりしたい所だろう。
だが、そもそもこれは観光が目的ではないのだ。そう思いながらレナは心を鬼にしてクルルに呼び掛ける。
「それじゃあ、クルル……」
「うん、分かったよ」
レナは全てを語る前に、クルルは彼女が言いたい事を察して部屋の脱衣場へと向かったのだ。
そして、暫しの時間の後クルルは再びレナの前に舞い戻って来たのである。
続いて彼女は得意気にレナに向かって言った。
「えへへ、どうかな~? 私の『物まね師』の格好♪」
そう、今のクルルの姿はマントに紫のノースリーブと、正真正銘の物まね師のものなのであった。クルルは剥き出しの二の腕に臆する事もなく、可愛らしくマントを掴んでポーズを取っている。
「うん、すごく様になってるわ」
対してレナもはにかむクルルに対して称賛を送った。
そう、レナがクルルに踊り子の格好をさせて町巡りをしたのは、彼女にそれに近い露出度の格好で外で過ごさせる事で、物まね師の姿への抵抗を少なくしようというのが狙いだったのだ。
その狙いは効果覿面だったようで、彼女は自慢気に自分の物まね師の姿を披露していたのである。
「うん、これで大丈夫みたいね……」
レナは今のクルルの無邪気な振る舞いを見ながら微笑ましい心持ちとなるのだった。
これならクルルは今後自ら進んで物まね師の力を使ってくれるだろう。これからの戦いは鮮烈を極めるだろうから、非常に喜ばしい事である。
だが、まだレナにはやらねばならない事があったのだ。
それは一つにクルルはまだ内心恥ずかしさを引き摺っているという事であった。別段問題なく物まね師の格好をこなして見えるクルルであったが、やや無理をしている事は同じ女性であるレナにはよく分かるのである。
(よしっ!)
故に、レナはこれからする行動に対して心の中で一大決心をするのだった。