力が欲しい

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER リベン珠】第5話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第五話 遂に現れた存在:前編】
 勇美と鈴仙が旅の途中での昼食後、互いに今回の異変解決への意気込みを語った後の事であった。
 ふと、勇美が違和感を感じたのである。
 それは、彼女の鼻孔をくすぐる存在であった。つまり……。
「超イイ匂いビックリ♪」
 食欲をそそる香りという事であった。勇美のその言い回しは些か変であるが。
「……♪」
 その匂いの誘惑に勇美は勝つ事が出来なかったようだ。彼女はその匂いに誘われるがままに、ホイホイ(匂いの発生源へと)着いて行ってしまったのだ。
「勇美~~!!」
 この勇美の醜態には、鈴仙も慟哭するしかなかったようである。彼女の魂の嘆き声である。それに、言っておかなければいけない事がある。
「私達、今し方お昼食べたばかりじゃないの~~~~~っ!!」
 その鈴仙の叫びは妖怪の山の麓の森中に響いたとか響かなかったとか。

◇ ◇ ◇

 勇美が匂いという糸に操られるマリオネットの如く、一頻りたぐり寄せられた所で彼女は口を開いた。
「……鈴仙さん、今私冷静になりました……」
「……今更ぁ……」
 項垂れながら言う勇美に、鈴仙は呆れるしかなかった。そして今確信した。
 ──こんな相方で大丈夫か? 大丈夫じゃない、もっといい相方を頼む。
 それが本音だったが、鈴仙はもう後には引けない状態となっていたのだった。
 こうなったらもう、自分がしっかりするしかないと心に誓うのだった。自分はリーダー向きの性格ではないが、ここは腹を括るしかないのである。
 鈴仙がそのように一世一大の決心をしている最中、勇美は再び口を開いた。
「この先に『あおし様』はいないですよね? 寧ろ、ホイホイ着いて行っちゃったから、青いツナギの人がいたりして」
「どっちもいないから安心しなさい」
 鈴仙は的確に勇美に突っ込みを入れておいた。そして、彼女に促す。
「さあ、気が済んだ所で旅を続けましょう」
「でも、おすそわけ位なら許してもらえるかも知れないからぁ……」
 うわぁ、まだ食べるの諦めてなかったか。そう鈴仙が頭を抱える中、勇美はその匂いの元へと足を踏み入れたのである。
「勇美さんのどあほ~☆」
 最早突っ込みを入れるのも鈴仙は億劫になっていたのだった。そうしながらも彼女は勇美の後を着いて行き……。
「!」
 そこで目にしてしまったのだ。
 その者は『あおし様』でも『青いツナギの男』でもなかったが、色々と『青い』存在だったのである。
 まず、髪が青であった。それをややウェーブの掛かったロングヘアーにしている。
 そして、服装も青いワンピースであった。だが、普通の現代人の日本人が着るような一般的な物ではない。
 そして、極め付きは、頭に生えた兎の耳であった。それも、鈴仙のようにしわしわくしゃくしゃの地上の兎には見られない特徴的な様相のそれは……。
鈴仙さん、この人は……」
「ええ、ご察しの通り『玉兎』よ」
 玉兎。つまりはこの者は月からやって来た兎であったという事である。
 そして、ワンピースに裸足という出で立ちは、地上で活動するに辺り、地上の兎に変装したという事であろう。
「……それだと、地上の兎って誤解を受けていますね」
「それは私も思うわ」
 そうして勇美と鈴仙は哀愁に包まれながら思うのであった。
 だが、それは無理のない話かも知れない。他国の文化というのは常に誤解を受けるからである。
 例えば、海外の映画で日本出身のキャラクターは決まって侍とか忍者とか力士にされがちなのだから。
 故に月にも『地上の兎はワンピースに裸足』という間違った認識が広まってしまったのだろう。
レイセンさん、もとい今のイシンさんもそうだったって八意先生から聞いた事がありますよ」
「そうだったんだ……」
 鈴仙はかつて自分と同じ名前を授けられていた玉兎の事を思うと、色々複雑でやるせない気持ちとなるのだった。
「それで鈴仙さん、この玉兎さんは?」
「ええ、彼女は『清蘭』よ」
「え?」
 そこで勇美は疑問に思った。鈴仙は名前に漢字を使うのは、地上の者に自分が月の兎だと悟られないようにする為であったと聞いた事があり、それまでの名前は『レイセン』であったのだ。
 その疑問を勇美は鈴仙にぶつけると、こう答えが返ってきた。
「ええ、勇美さんの察しの通りよ。清蘭は地上で活動する上でのコードネームで、この子の本名は『セイラン』よ」
「成る程、コードネームだったんですね」
 勇美はその主張に納得しようとするが、どうしても譲れないものがあった。
 それは、コードネームを本名から取っているという事である。わざわざ敵に素性がバレるような行為は余りにも理不尽と言わざるを得ないだろう。
 これだとどこぞの『せっかくだから』という理由で申し訳程度に赤い宝石がはめられた扉を『赤の扉』と言い張って選ぶ人のようである。
 だが、勇美は取り敢えずはその事は保留にしようと思っていた所で、とうとう相手から声が掛かって来た。
「あらあら鈴仙、お久しぶり~。元気してた~?」
「ついにこの時が来たのね。そちらこそお久しぶりね、清蘭」
 軽口で話し出し始める二羽。だが、鈴仙と長い付き合いの勇美には、彼女の口調が緊張を帯びている事は隠せなかったのだ。
 無理もないだろう。相手は玉兎なのだ。鈴仙は彼女達を置いて地上と戦争が始まる前に地上へと逃げてしまったのだから。要は自分は裏切り者と言われても返す言葉はないのだ。
 依姫は『時効』と称して鈴仙を月に連れ戻す気はないのだ。だからと言って、心穏やかにかつての仲間と話をする事は難しいだろう。
 勇美はこの状況をどうしようかと思案していると、今度は清蘭から彼女に声が掛かって来たのである。
「それとあなたは人間ね?」
「私ですか? あ、はい」
 突然話題を自分に振られて勇美はドギマギしてしまう。
「そうなんだ? 驚いたわね、鈴仙が人間と組むなんて……」
 清蘭は自分勝手で一匹狼だったと鈴仙の事を記憶している。そんな彼女が誰かと、それも人間と組んでいるのは驚くべき事だったのだ。
「まあね、この子は放っておくと危なっかしいからね。私が着いていないと不安なのよね~♪ あ、紹介しておくわ、名前は黒銀勇美さんっていうのよ」
「もう、鈴仙さんってば~☆」
 自分の事を小馬鹿にする部分が多いながらもちゃんと紹介してくれてもいたので、勇美はどこかこそばゆい心持ちとなっていた。
 そんな気持ちを勇美は懐きつつも、彼女は自身にとっての最重要事項へと話を向ける。
 勇美の視線の先にあるのは他でもない、件のいい匂いの発生源であった。それは、乳白色の濃厚な液体の中に様々な具が入った料理──詰まる所は『クリームシチュー』である。
「ところで清蘭さん、そのクリームシチュー、美味しそうですねぇ~♪」
 そうのたまう勇美の表情と声は完全に蕩け切っていた。それは正にそのクリームシチューそのものであった。
「あげないわよ、これは他の玉兎達の分だから。そして私が今回の料理番だったって訳よ!」
 そこまで清蘭は説明し、溜め息をついた後こう続けた。
鈴仙も身内にこういう人を持って大変でしょうねぇ……」
「ええ、でも勇美はまだいいわよ。特に大変なのがお師匠と輝夜様との関わりで……」
 そう言って鈴仙も溜め息をつく。そこには彼女の普段の気苦労が滲み出ていたのだった。
 ともあれ、清蘭が拵えていた食事は仲間の物であったのだ。これは邪魔してはいけないと勇美は思いこう言う。
「清蘭さん、お邪魔したみたいですね。それじゃあ、私達は先を急ぎますので、これにて」
 そして、勇美は鈴仙とその場から離れようと歩を進め……。
「ちょっと待ちなさい」
 られなかったようだ。
「何ですか、清蘭さん?」
 勇美は振り返りながら、その答えはそこはかとなく察しつつもそう彼女に聞く。
「分かっているでしょう? これも仕事なのよ、悪く思わないでね?」
 そう言いながら清蘭は、勇美にいつの間にか取り出した銃の銃口を突きつけていたのだった。
「……」
 その清蘭の対応に勇美は無言となる。当然だろう。このような緊迫した空気の中では言葉は容易には出ないだろうから。
「あ、そのシチュエーション。カッコイイですね♪」
「んん?」
 だが、勇美の着眼点は普通とは少し違うのであった。この思いもよらない指摘に、清蘭も声にならない疑問の声を出してしまう。
「いや、あなた。こういう状況で何言っているのよ? 鈴仙からも何か言ってあげて」
「ごめんね清蘭。この子はそういう趣味真っ盛りの年頃なのよ」
 清蘭に助け船を求められた鈴仙も、これにはお手上げといった様相で返すしかなかったのである。そして、そのような言い草をされた勇美は心外であった。
「むぅ~! あなた達にもそういう年頃ってあったでしょう~?」
「ごめん、人間の事はちょっと計りかねるわ」
 勇美に必死(?)の抗議をされても、清蘭はそう答えるしかなかったのである。
 それは無理もない事だろう。何せ人間と妖怪である玉兎は寿命が違うのだ。ましてや月に住む玉兎は月の民と同様に寿命から逃れて悠久の時を過ごす身である。故に人間の感性には中々共感出来はしないのだった。
 だが、ここで清蘭はある既視感を覚えたのである。
「でも、前に月に侵略しに来た吸血鬼もあなたに似た所があったわね」
レミリアさんですね?」
 心当たりのある人物の情報を清蘭から提示されて、勇美はそれに食い付くのであった。そしてその情報に対して付け加える。
「あの人、私の友達でもあるんですよね~」
「成る程……」
 その勇美の主張を聞いて清蘭は合点がいった。あいつとこの人は同類故に波長が合うのだろうと。
 それはともあれと、清蘭は話を元に戻そうとする。相手の趣味が何であろうと、このまま放置する訳にはいかないからだ。
「……まあ取り敢えず、ここからは進ませないって事を分かってね?」
「やはりそういう事ですよね」
 勇美も悪ノリしていた態度を一変させて真剣な心持ちで清蘭と向き合う。だが、ここで彼女は一体どうすればいいか行き詰まってしまう。
 ──相手は月から来た玉兎なのだ。故に幻想郷の部外者である。
 その為、弾幕ごっこという幻想郷のルールを引き受けさせるのは難しいだろう。
 前に魔理沙は月で依姫に弾幕ごっこを教え、その結果無事にそれにて物事は解決したのだが、それは様々な幸運が重なった事に他ならない。
 まず、勇美には魔理沙のように口が立ちはしないのである。故に相手を言葉巧みに言いくるめる事は難しいだろう。
 ましてや、今回は相手が依姫のような武人肌のような物分かりのいい存在ではないのだ。見るからに任務には忠実な兵士のような玉兎だと判断出来るのである。
 そこまで考えて、勇美は出来るだけの事をしようと思った。もし無理なら、今の自分にどこまで出来るか分からないが実力による勝負をしなければならないと腹を括るのだった。
 だが、清蘭が出した答えは意外なものであった。
「じゃあ、始めましょうか。『弾幕ごっこ』を♪」
「えっ!?」
 勇美にとって、これには驚くなと言う方が無理であるというものだろう。故に彼女は思わず上擦った声を出してしまったのだ。
 それに構わずに清蘭は続ける。
「何を驚いているの? ここは幻想郷でしょ? 郷に入れば郷に従うのは当然でしょう?」
「清蘭、あなた……」
 これには勇美のみならず、鈴仙も驚いていたようであった。それだけ彼女にとっても意外な事であるようだ。
 そして、この瞬間勇美は思っていた。もしかしたら月で弾幕ごっこを経験した依姫が月に広めてくれたのかも知れないと。律儀なあの人なら考えられるだろう。
 ならば、勇美はますます依姫に感謝せねばならないだろう。こうして今、山場となりうる課題を一つクリアー出来る事となったのだから。
「清蘭さん、弾幕ごっこを引き受けてくれるのですね?」
「ええ、二言はないわ。この言い方は鈴仙がいた所の指導者の受け売りだけどね」
 それを聞いて勇美は安堵した。これで互いに無駄な血は流さずに済みそうだと。
「あなた、そう嬉しそうにするのは弾幕ごっこに勝ってからする事ね」
「あ、ごめんなさい。弾幕ごっこをしてくれる事が余りにも喜ばしかったもので……」
「清蘭、あなたには悪いけど、ここは2対1でやらさせてもらうわよ」
 やや浮かれ気味な勇美に続き、鈴仙はしれっとそのように清蘭に言ってのける。
「いいわよ、そういう変則的な勝負も弾幕ごっこならアリなんでしょう? まとめて掛かってきなさい」
 ここに、勇美と鈴仙の旅での初めての弾幕ごっこが開幕したのである。

◇ ◇ ◇

 そうして一人と二羽は森の中の手頃な開けた場所へと繰り出していたのだった。無論、弾幕ごっこに最適な場所を選んだ訳である。
 そして、最初を切り出したのは清蘭であった。
「まずは私から行かせてもらうわ。1対2なんですもの、これ位いいでしょう」
 そう言って清蘭は銃を構えて、まずは鈴仙銃口を向けたのである。そして、その状態からスペルカード発動となる。
「【銃符「ルナティックガン」】!」
 その宣言と共に清蘭は銃の引き金を引くと、銃口から弾丸状のエネルギー弾が発射されていったのだった。
 そして、それを見ていた勇美にはその言葉に聞き覚えがあり、確信に至る。
鈴仙さんの銃と同じ名前だ!)
 それが答えであった。勇美はそれにより、そこはかとなく鈴仙が次にする行動が読めたのであった。
 勇美の読み通りであった。清蘭のルナティックガンの射撃に合わせ、彼女も自前の銃『ルナティックガン』を取り出したのだから。
 後は展開が読めるだろう。鈴仙も清蘭のそれに合わせて引き金を引いたのだった。
 そして、鈴仙銃口からも弾丸状のエネルギーが発射され、清蘭の放ったそれへと勇ましく向かっていく。
 続いて、両者は空中でぶつかり合うと互いに弾け飛んでいった。要は相殺されていったという事である。
 次々に宙では爆ぜが起こっていた。それは正に花火のようなきらびやかさを醸し出していたのだった。
「綺麗……」
 思わず勇美はその光景を見て呟きながら実感した。──これぞ弾幕ごっこの醍醐味であると。
 そのような勝負方法を引き受けてくれた清蘭に改めて感謝するのであった。やはり弾幕ごっこを受けてくれる者とは分かり合えそうだと勇美は思うのであった。
 一頻り玉兎二羽の弾丸のぶつかり合いは幕を閉じたのである。そして清蘭は呟いた。
「やっぱり鈴仙は玉兎の中でも優秀なようね。そして今でも衰えていない」
「ええ、地上に来てからも射撃の訓練は欠かしていなかったからね」
 そう言い合う二羽は、まるで旧友に会ったかのように言葉が弾んでいたのだった。
 それを見ながら勇美は「いいなあ~」と思っていた。これが旧知の仲なのかと。自分にも外界で友達はいたが、こうも『何かが通じ合う』ような仲の者との付き合いは少なかったように思える。
 でも……と、勇美はここで考え直す事にしたのだ。そのようなかけがえのない友人というものは幻想郷にて沢山出来たと、今彼女は実感出来るのだった。
 故に思う。そういう意味でも大切な幻想郷を今自分と鈴仙の手で守っていかなければいけないのだと。
 だから、まずはこの勝負には勝たなくてはと勇美は決意を新たにする。
 そのような思いを勇美が馳せている中で、清蘭は話を続けていた。
「やっぱり鈴仙相手にまともな銃撃戦は分が悪いよねぇ~。でも、相方の方はどうかしら?」
 言って彼女が視線を変えた先には……勇美がいたのである。
「勇美とか言ったっけ? 悪く思わないでね?」
 清蘭は無慈悲にそう言うと、容赦なく勇美に向けた銃の引き金を引き、弾丸状のエネルギーを発射したのだ。
 その行為は些か非情と言えるかも知れない。だが、同時に立派な戦術でもあるのだ。戦場やスポーツでは弱点を突くのが真っ当なやり方なのだから。
 そして、勇美は窮地に立たされる事となる。