雷獣ケーキ

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER ダークサイドオブ嫦娥】第05話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第五話 三日月の塔 SIDE:I 後編】
 ヒドゥンの力をマックスに備わせ、勇美はエレベーターの水晶体へと検索を試みたのであった。
 その後、無音の時間が暫し続いていたが、それもすぐに終わる事となる。再び水晶体から黒い液体と化したマックスが滲み出たかと思うと、勇美の傍らへと戻ってきたのだった。
 そして、マックスは再び元の機械の小動物の姿へと戻ると、ぴょこんと勇美の肩へと飛び乗った。
「えらいよ、マッくんよくやった♪」
 そう言って勇美は自分の分身の活躍を労うのだった。
 今の行為は、流動体と化したマックスを水晶体の内部へと送り込み、その中の様子を探る効果であった。それにより勇美にはある事が分かったのである。
「う~ん、『中の歯車が一つ足りない』か……成る程……」
 そう勇美はしみじみと呟きながら思案する。そして、ある結論に達する。
「やっぱりこれは、『もちろんワザとだ』って所だろうね」
 それが勇美の答えであった。エレベーターを作動させる部品が足らないのは、玉兎達が敵に侵入された場合に足止めをする為に敢えて部品を外しているのだと。
 逆に考えて、勇美はある確信に至るのだった。エレベーターを使えさえすればこの塔の奪還は可能だという裏付けになっていると。
 その事が分かれば、最早勇美には迷いはなかったのである。後は何としてでも部品を探し出してエレベーターを再び動かせるようにするまでだと。
 だが、今から歯車の場所を探すべく、塔の部屋という部屋をしらみ潰しの如く周っていたら手間となるだろう。それに、いつ見張りの玉兎に発見されるかも分からないというものである。
 なので、ここは勇美は『楽』をする事にしたのであった。
「マッくん、もう一仕事お願いね♪」
 勇美はペロリと舌を出して茶目っ気を出して見せながら、マックスにもう一度働いてもらうべくお願いをした。
 するとどうだろうか? マックスは先程のように、再び流動体となって黒い液状に溶け出したのである。
「じゃあ、お願いね」
 そう勇美が言うのに相槌を打つかのように、マックスは床へと染み出していき、その姿をこの場から消したのであった。
「これで、探す手間が省けるってものだね♪」
 そう、勇美は先程水晶体の中を探索した時のように、今度は塔全体に探索網を広げて、一気にその場所をいぶし出そうとしているのだった。
 そして、暫しその場で勇美は待機する。何事も忍耐が肝心である。
 訪れる勇美にとっての些か暇な時間。彼女はその時間をやや持てはやしていたのだった。
ガラホを持ってくれば良かったかなぁ……」
 勇美がこの場で欲しがったのは、ガラケーのように物理的キーで扱え、スマホのように全てではないが、ある程度アプリも使える便利な機材であった。
 勇美は外の世界にいる時は屋外ではそのガラホでアプリを使って小説を書いていたのだった。スマホでは画面に直接触れないと書けないので、小説のような長文を書くには余り向いてはいなかったのだが、ガラホには前述の通りに物理的なキーが存在するのだ。これが小説を書く上でなくてはならないのだった。
 そんな便利ツールであるガラホ。一時は幻想郷に着いた時には電源がないので再び使用を再会するのを諦めていたものだ。
 だが、紫と友好関係となってから、彼女のスキマを通して電気を供給出来るようになり、再び充電して使えるようになったのだ。ちなみに電気代の行き先は紫のみぞ知る所である。これは詮索してはいけない事項だと勇美も理解しているのだった。
 こういう思わぬ空き時間でアプリで小説を書いたり、溜めた画像を見て楽しんだりはたまた小説を読む側になったりと色々出来るのだが、惜しい事をしたものだと勇美はこの場で後悔するのだった。
 だが、ここで勇美は考え直したのである。今彼女がやっているのは弾幕ごっこであり、結構危険なスポーツといえる行為なのであった。
 だから、その際の戦いによりガラホが壊れてしまうかも知れない。そう考えればこの場に持って来なかったのは正解と考える事も出来るのだ。しかし、例え壊れても紫か河童達の手に掛かれば正常に動く元のガラホが手に入りそうな気がしたが、それに関しては勇美は深くは考えない事にしたのだった。
 こうなってしまったので、勇美には魔が刺してしまったのである。──こういう誰もいなくて時間が空いている時には、ちょっと一人遊びというものをやるには丁度いいかも知れないと思うのだった。
 勇美とて、年頃の少女なのである。故に『そういう事』には勿論興味があるのだ。
 彼女は今では15歳になって、いわくつきの中二の時期は越えた為に、その時程の暴走は脳内からなくなっていたのだが、それでも中二を卒業したばかりであるのだ。
 故に、彼女は誘惑には勝てずに『行為』を始めようとするのだった。
 まずは和服の右肩部分を少しはだけて見せる。すると、ブラジャーなどという和服にはご法度な代物には邪魔されていない、綺麗な肩が露出したのだった。
 つまり、ノーブラという事である。いくら和服とはいえ、いつもアブない格好をしているなと勇美は心の中で自嘲する。
 そして、勇美はその露出した肩部を指で触ってみる。
「んっ!」
 その瞬間、勇美は『ピクン』と反応してしまうのだった。何も包まれていない素肌への接触であるが故であった。
 上半身の感度な上々であると勇美はうっとりとしながら噛み締める。まだ、完全にはだけるのは先である。
 上半身に満足を覚えた勇美。次は下半身であろう。彼女はその視線を脚部へと向けた。
 香霖堂で購入した、丈の短い黒い和服。勇美が依姫から初弾幕ごっこの勝利祝いに買って貰った思い出の服。
 勇美にとって、とても思い出のある一品であった。依姫から買って貰った事、霖之助とも親しくなる事が出来た切欠でもある、とても大切な服である。
 そして、その短い裾から覗くのは、まだ成熟期ながらも、スラリとした可愛らしく綺麗な脚線である。
 それに対しても勇美は、些かナルシスト染みているとは思いつつも自ら見惚れてしまうのだった。
 心なしか、弾幕ごっこで、そして先の月への旅により、その足は鍛えられ、その造りは逞しくなっているかのようである。月で訓練を受けた鈴仙程のものではないにしろ、自分のそれも中々の上玉に成長しているなと、勇美は酔いしれていた。
 我ながら惚れ惚れすると勇美は思うのであった。
 だが、メインディッシュはそこではない。その脚の付け根にある部分である。
「ゴクッ……」
 そう思うと、勇美は固唾を飲まずにはいられなかったのだ。そして、彼女は禁断の領域に手を伸ばし、そこを覆うなけなしの薄布の防壁を取り除ける……。
 に至る事は出来なかったのである。何故なら今正に一仕事終えたマックスが彼女の傍らへと戻って来たからであった。
「あっ、マッくん。おかえりなさぁい……」
 そう言って勇美は気まずさを感じてしまった。
 確かにマックスは勇美の分身であるが故に、勇美のしようとしていた事に対して何も思う事はないのである。
 だが、勇美とて年頃の少女である。自分が『行為』に及ぼうとしていた所に誰かが来るというのは、やはり気恥ずかしいものがあるのであった。
 しかし、やはり自分の分身なのである。だから勇美は別段気にする事もなく、役割を果たして戻って来た彼を労ったのだ。
「マッくん、よくやったよ。偉いね♪」
 そう言って勇美は彼の頭を撫でてあげると、彼は嬉しそうに振る舞うのであった。
 そして、任務を果たした彼から、勇美の脳内に情報が送り込まれる。
「うん、分かった。歯車はそこにあるんだね?」
 マックスから送られて来た情報を脳内で吟味しながら勇美は言うのであった。
 そして、準備万端となった勇美はエレベーターの部屋から出ると、頭の中で目的の場所を再確認し、そこを目指して歩を進めて行った。
 加えて、彼女はマックスからは見張りの玉兎がいないルートも受け取っていたのだ。故に彼女はそのルートを辿り、幸いにも誰にも出くわさずに進む事が出来たのである。
 そして、勇美は遂に目的の部屋の前まで辿り着いていたのだった。
 そこは、塔内の他のどの部屋と比べても何の変哲もない場所であったのだ。マックスの調査がなければ選ばれはしなかっただろう所である。
 そこに歯車を隠す算段を勇美は良策だと思うのだった。大切な物を別段目立たない場所に隠すのは、敵の目を欺くにはもってこいだからである。
 成る程、敵としても既に勝負は始まっているという考えなのだろう。そう思うと勇美の方としても楽しくなってくるのであった。
「でも、今回は相手が悪かったかもね♪」
 そう勇美は一人で茶目っ気を出してみせるのだった。こうして依姫から神降ろしの力を借りてトリッキーな芸当をこなせる自分とマックスを今誇りに思うのである。
「さて、気を引き締めないとね」
 そう勇美が呟く理由。それは他でもなく、中に見張りの玉兎がいる事をマックスが探知していたのだ。
 ここまで来るのには、玉兎がいないルートを通って辿り着く事が出来たが、今回ばかりは敵に勘づかれる事なく……とはいかないようである。何せ、目的のアイテムを手に入れるにはその玉兎のいる部屋へと侵入しなければいけないのだから。
 なので、勇美は意を決して部屋の扉を開けたのであった。
 すると、中には案の定一羽の玉兎がいたのである。そして、向こうの方もこちらに気付いたようだ。
 さすがは清蘭や鈴瑚と同じ嫦娥管轄の玉兎であるようだった。月への侵略が行われる前までだらけていた依姫管轄の玉兎とは感じが違うようである。
 それに加えて出で立ちはTシャツにハーフパンツというラフな格好である事からも、否応なしに彼女が嫦娥管轄の玉兎であると認識させられるのである。
(依姫さんとこが制服警官なら、嫦娥って人の所は私服警官って所かな……?)
 などと勇美は些かどうでもいいような事を考えていたが、当然のようにその思考は遮られる事となった。
「お前はもしかして綿月姉妹の所から送り込まれて来た戦力か?」
 その玉兎は格好だけでなく、口調もどこか少年のようであった。
 それに対して、自分もボーイッシュな外見をしているが故に勇美はどこか親近感を覚えた。
 今回の騒動を片付けたらお近づきになるのも悪くないかも知れない、そう勇美は少し気分が高揚するのだった。
 だが、今は異変解決の最中である。そのような雑念は今は祓わねばならないだろう。故に勇美は程よい緊張の中でこう言うのであった。
「そうだよ。そんでもって、そっちの事情はよく分からないけど阻止させてもらうからね♪」
 その勇美の言葉を聞いて、その少年風玉兎も挑発的な笑みを浮かべるのであった。
「ボクに勝てると思っているのかなぁ?」
 その言葉を聞いた瞬間、勇美の脳内に電流走る。
「ぼ、ボクっ娘だああああ~~~っ!!」
「うわっ!?」
 突然の敵の豹変に、今まで余裕綽々だった少年風玉兎も堪らず引いてしまったのだった。無理もないだろう。
「ど、どうしたんだい、君?」
「あ、ゴメンね」
 敵に嗜められて、そこで勇美は漸く落ち着きを取り戻していき、そしてその理由を説明していくのだった。
「ごめんね、こんな反応されちゃあ、普通驚くよね。実は、幻想郷で一人称は『僕』の少女っていなかったからなんだよね……」
 そう言って勇美はしみじみとかたり出す。男勝りの魔理沙も『私』だし、ボーイッシュなリグル・ナイトバグですら彼女も『私』だったりするからというとの事であった。
「どう? 私の苦労を分かってもらえた?」
「いや、正直共感出来ないよお前の主張には……」
 そう言って少年風の玉兎は頭を抱えるのであった。そんな事どうでもいいのではなかろうかと。
 だが、その言葉がいけなかった。勇美はそれを聞くや否や、ギロリと玉兎を睨みつけるのだった。
「何を! どうでもいい事とは何事か!? これは私にとっては死活問題なんだよ!」
「いや、そんな事で生死が関わっちゃダメでしょう?」
 玉兎は至極真っ当な意見を勇美に突きつけた。そして、これ以上この変な人間と相手をしていても埒が明かないと思い、本題に切り出す事とする。
「お前が何を目的としているかは分からないけど、今この場に来たからにはこのまま好きにさせる訳にはいかないよ!」
 そう言う玉兎であったが、彼女は断じて歯車の事は口にはしなかったのだ。さすがに清蘭や鈴瑚からも見られるように、任務に忠実な嫦娥管轄の玉兎である事が窺えるのだった。
 勇美は、その事に感心や羨ましい感情がない交ぜになったものを抱きつつも、彼女もてっとり早く『結論』を出す事にしたのである。
「おめえはオラには勝てねえ、戦わなくても分かる」
「いや、その台詞は色々おかしい」
 勇美のその突飛もない発言に、早速とばかりに玉兎はツッコミを入れた。
 まず、女の子なのに『オラ』はどうかと。精々許されるのが『俺』であろう。
 そして、そもそもこの台詞はパクりだという事であった。こういう局面でそういう台詞をチョイスする事に甚だ疑問を抱くのだった。
 そういう言いたい事は多かったが、玉兎は一つの結論に至るのだった。それは。
「ボクがお前には勝てないって?」
 それが論点であった。
 嘗められたものだ。いくら自分が一般の玉兎とはいえ、たかが人間にそのような事を言われるとは。
 それに、自分はそこそこ訓練を積んだという自負があるのだった。だから、自分がそう簡単に負けるとは思えなかったのである。
「ずいぶんと大口を叩くものじゃないか?」
 だから、目の前の人間の態度には感に障る所があるのだった。そして、その台詞、そっくりそのまま返してやろうじゃないか、この人間と思うのであった。
 だが、この少年風玉兎は気付くのが少々遅かったようである──既に彼女は勇美の術中に嵌っていたという事を。
「それじゃあ、覚悟はいいかい?」
 そう言って玉兎は臨戦体制に入った。これに対して、勇美は身構える……ような事はしなく、代わりに彼女にこう言うのであった。
「ごめんね、まともに勝負してあげられなくて。こっちも急いでいるんだよ。また機会があったら……ね?」
「?」
 そう意味ありげな言葉を紡ぐ勇美に、当然玉兎は訝るが、時既に遅しだったのであった。
「ぎゃっ……!」
 そう言って少年風は突然叫び声をあげたかと思うと、その場で倒れてしまったのである。
 一体何が起こったのか? その答えは、その玉兎と勇美の後ろに顔を出していたのだった。その者の名前を勇美は口にする。
「よくやったよマッくん♪ 大手柄だよ」
 そう、この場でマックスは先程のヒドゥンの力を使い、玉兎の背後に気付かれずに忍び寄って奇襲を仕掛けたという事なのであった。
 そう、勝負は玉兎と勇美が対峙する前から始まっていたのだった。
「ひ、卑怯な……ガクッ」
 そう言うと、玉兎は敢え無く気を失ってしまったのである。そして、その玉兎を視界に収めながら勇美は今は意識を手放してしまった彼女に語るかのように、はたまた独りごちるかのように呟いた。
「うん、私も卑怯だと思う。けど、こっちも必死なんだから大目に見てね♪」
 そう言って勇美はチロリと舌を出して茶目っ気を出して見せるのだった。どうやら、彼女は『悪』っぷりに箔が付いているようであった。
「ごめんね、これが今の私のやり方だからね。でも、もしあなたが許してくれるなら、今度時間がある時に一対一で弾幕ごっこをして欲しいな♪」
 言って勇美はペコリとその玉兎に頭を垂れるのであった。
「後は、歯車を探すだけだね」
 そして勇美は部屋のある一点に視線を向けた。もう、彼女には『探す』という手間は必要ないのであった。
 勇美はその一点、部屋の絨毯の端の方へと歩み寄ると、そこの絨毯を少し剥がす動作をしたのだった。
 すると、どうだろうか? その絨毯の下には小さな蓋が存在したのだ。
 もう、勇美のする事は決まっているだろう。事前にマックスとヒドゥンの力で罠もない事は調査済みであるから、最早迷いは必要ないというものだ。
 勇美は満を持してその蓋を開けたのであった。
「ビンゴっ♪」
 そう言う勇美の視界には、見事にお目当ての歯車が入ったのであった。迷う事なく、勇美はそれを手にする。
「よし、お目当てのモノ、ゲットだぜ! なんてね。後はエレベーターに向かうだけっと」
 そう言って勇美は、先程のエレベーターへと舞い戻っていくのであった。その先には一体何が待つのか?