雷獣ケーキ

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER】第59話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第五十九話 新たなる挑戦者】
 勇美が皇跳流という強力な相手に打ち勝ってから暫くの事。彼女は今日も依姫に稽古をつけてもらっていたのだ。
 勝負の行方は五分と五分だが、やや勇美が押される形となっていた。
 そこで、勇美は口を開く。
咲夜さん、『あれ』やりますか?」
 そう、勇美の隣には十六夜咲夜がいたのだ。
 彼女はフランドールの一件で自分の力不足を痛感し、依姫に修行をつけてもらう事に決めたのだ。今この場に彼女がいる事が、その決心がハッタリでないのを物語っているのだった。
 そして、依姫の提案で彼女と勇美&咲夜との勝負を行っているのだった。要は一対二の戦いである。
 それでいながら依姫は二人をやや押す形となっているのだから、彼女の力の底が知れぬ事を表していたのだ。
 そこで勇美が咲夜に提案しているのだった。この勝負に勝つ為に秘密裏に二人で練り合わせた秘策を実行する時だと。
「ええ、分かりましたわ。今しかチャンスはありませんものね♪」
 対する咲夜も乗り気で勇美の提案に乗るのだった。
「じゃあ、行きますよ」
「お任せ下さい」
 二人は言い合うと、まず動いたのは咲夜であった。
 彼女は背後に時計のような紋章を浮かび上がらせると、彼女の能力である『時間操作』を発動しようとする。
 だが、そうは問屋の卸さない依姫であった。二度に渡り咲夜と勝負した経験のある依姫は、彼女の能力の手強さをより知っていたのだから。
 そんな咲夜に対抗すべく、依姫は彼女に相応しい神を降ろす事を選ぶ。目には目といえる神である。
「『クロノス』よ……!?」
 そう『時の神』に呼び掛ける依姫であったが、咄嗟に違和感に気付く。──彼女にその神の力が備わらないのだ。
 何故……? その依姫の疑問を勇美は律儀に答える形となった。
「残念ですね、彼は私が予約済みだったんですよ♪」
 自分が使おうとした神の力には先客がいたという事である。
 してやられた、依姫は思わず歯噛みした。
「では行きますよ」
 そう言って勇美はパチンと指を鳴らすと、依姫の背後に何者かの気配が現れた。
 そして、彼女の意識が及ばない内に、それは現出していたのだった。
 その者の名を勇美は宣言する。
「【時械「タイム・マシーン」】……」
 そう勇美に呼ばれた存在は、黒いマント状のマントを身に付け、体は未来のサイボーグのような禍々しい造形をしていた。
 その者へ勇美は間髪入れずに指令を送った。
「頼むよタイム・マシーン。『ハンド・レッド』!」
 その指令を受けた鋼の使者は機械の瞳を妖しく光らせると、両手を交差してポーズを取った。
 そして、そこから勢い良く両の腕を解き放ったのだった。
 すると、彼の体中から大量の時計の針のような刃物が放出されていった。
 ──それは正に、時計の針(ハンド)が、百個(ハンドレッド)以上生み出された光景であった。
「くぅっ……」
 その思いもよらなかった猛攻に、依姫は見事に飲まれてしまったのだった。
 そして、一頻り猛攻を貰ってしまった依姫。背後からの攻撃であった為に、得意の刀捌きによるガードも間に合わなかったのだった。
 この会心撃に、計らずとも依姫は地に膝を付いてしまったのである。
「やっ……た?」
 依姫を追い詰めた事に歓喜と共に唾を飲み込む勇美。もしかして彼女を出し抜く事が出来たのであろうか?
 依姫は暫くうつむいていて、その表情を読み知る事は出来なかった。だが、彼女がその顔を再び上げた時──彼女の口角は歪に上がっていたのだった。
「【番龍「やまたのドラゴン」】……」
 相手の隙を付いて紡がれたその依姫の宣言後、一瞬にして勇美と咲夜は炎の竜巻に飲み込まれてしまった。それに二人は悲鳴を上げる暇もなく翻弄されたのだ。
 
◇ ◇ ◇

「うう……」
「参りましたわ……」
 荒れ狂う炎に飲み込まれ、ぷすぷすと煙を上げながら勇美と咲夜は放心状態で呟いていた。
 折角依姫を出し抜いて追い詰めたと思われたのだが、彼女は先手を打たれてなお機転を効かせて形勢逆転してしまったのだから。
「私達、まだまだ修行が必要ですわね……」
「全く、同感ですよ……」
 咲夜にそう言われて、勇美も共感の意を示した。
(……)
 そんな二人のやり取りを見据えながら、依姫は『それは違うわね』と思っているのだった。
 まず、咲夜は依姫と善戦し、彼女を手こずらせる実力があるのだ。
 だが彼女が修行が必要だと思わせるに至った相手が悪すぎるのだ。フランドールという、幻想郷でも高い実力を持ち、かつその力を制御出来てない者を止めるには並大抵の能力では力及ばずとなるのだ。
 だから、咲夜には自分を力不足だと責める必要はないと依姫は彼女に声を掛けたいのが本心であるのだ。
 だが、それを直接本人に言おうものなら、彼女の自尊心を傷付けてしまいかねない。
 故に、この問題は咲夜自身が解決しなければいけないと依姫は考えるのであった。
(後は……)
 次に依姫が思考を巡らせたのは、勇美の事であった。
 彼女の成長はますます目覚ましくなっているのである。
 最近では依姫と同じ方針を持って戦うという、彼女を師に持つ勇美にとってやり合いづらい相手にも勝利したのだから。
 だが、まだ自惚れではなく、自分自身の方が上だというのが依姫の判断であった。八意様の教えを受け、自分自信奮闘努力してきたのだ。それをそう簡単に越えられてはいけない。そう依姫にも自尊心があるのだった。
 そんな思いを馳せつつ、依姫は二人に労いの声を掛けた。
「よく頑張りました、二人とも。今日の修行はここまでです」

◇ ◇ ◇

 今日の一大イベントをこなし、勇美はこれから自由時間をどう満喫しようかと考案していた。ちなみに咲夜は既に紅魔館へと帰っていた。彼女には紅魔館を回すという多忙な仕事が毎日存在するのだから。
咲夜さん、大変だなあ~……」
 その事に思いを馳せながら勇美は呟いた。自分と同じ『人間』であるから年齢はさほど離れていない筈である。そんな中で彼女は自分が足下にも及ばない程しっかりしているのだ。そこには尊敬の念すら覚えるのだった。
 だが、今は他の人の多忙さを憂っているのは時間が勿体無いというものだ。そう思いながら勇美は、気付けば永遠亭の台所まで歩を進めていたのである。
 そこには永琳がいたので、勇美は彼女に声を掛ける事にしたのだった。
「あ、八意先生」
「あらどうしたの勇美ちゃん?」
 どうしたの? そう聞かれて彼女は困ってしまった。特にこれといって永琳に用はなかったからである。
 どうしたものか、そう思っていると、勇美は口の中が乾いている事に気付いたのだ。そこで迷わず彼女はこう提案した。
「八意先生、何か飲み物を下さい」
 そう、勇美は先程の修行で水分を消費し、それを体が欲している所なのであった。その体のシグナルに勇美は従う事にしたのだった。
「ええ、いいわよ」
 その勇美の要望に、永琳はにこりと微笑み承諾するのだった。
「烏龍茶でいいかしら?」
「ええ、お願いします」
 喉が渇き、気分転換も必要な今には、あのほろ苦くいて爽やかなあの味は最適だろう。有意義な飲み物にありつけるものである。
 だが、そこで彼女は一時的に『待った』を掛けるのだった。
「あ、待って下さい八意先生」
「どうしたの?」
 突然の一時停止に、永琳は首を傾げてしまう。
「烏龍茶に睡眠薬とか入っていませんよね」
「ええ、大丈夫よ。うどんげ以外には入れないから」
「それなら良……くありませんって!」
 適格に突っ込みを入れる勇美であった。鈴仙の苦悩がいかほどのものなのかと頭に浮かべながら。
 
◇ ◇ ◇

「あー、美味しい♪」
 冷たい飲み物を欲していた体に、烏龍茶はまさに格別であった。口から体に巡る、ほろ苦くて清涼感のある流れが火照った体を優しくほぐしていくのだった。
 ちなみに、永琳の発言通り、睡眠薬は入っていなかったようだ。寧ろ入っていようものなら一大事である。
「うん、やっぱりえーりんの作る烏龍茶は格別だよねぇ~」
 そして、この場には勇美と永琳以外の者も存在していたのだ。
 因幡てゐ。永遠亭の兎達を取り仕切るリーダーにして、悪戯の大好きな困ったさんな白兎であった。
 そんなてゐが、ふと勇美に声を掛ける。
「ところで勇美、聞いてるよ。最近のあんたの活躍、目覚ましいんだってね~」
はえっ……?」
 勇美は驚いて烏龍茶を吹きそうになる。まさか小生意気なてゐから自分に労いの言葉を掛けられるとは思っていなかったからである。
「何もそこまで驚く事ないじゃん……」
「あ、ごめんてゐちゃん。あなたにそんな事言われると、てっきり悪徳商法か何かだと思っちゃって……」
 失敬な、てゐは思った。いくら自分が『う詐欺さん』と呼ばれる事があるからといっても、それは偏見が過ぎるのではと。
 だが、彼女は烏龍茶に免じる意味でも気を取り直す。この飲み物は健康に気を遣う自分にとっても有難い代物なのだから。
 それに……勇美には大切な用事があるのだ。悪気がないにしろ多少失礼な事を言われたからといって、それを取り止める理由には全くならないのである。
 そう、メキメキ成長している今の勇美には『見せられる』事であると同時に『見せなければいけない』事でもあるのだ。
 その為の切符を与える為に、てゐは口を開いた。
「──勇美と依姫って、今日時間取れるウサ?」

◇ ◇ ◇

 そして、時は昼の四時を回った所であった。小腹も程好く空き始め、日の照りも収まり始めている時間帯。つまり程好い心地好さに見舞われる時である。
 そんな最中は勇美は依姫と共に迷いの竹林の中で歩を進めていた。
 その途中で依姫は口を開いた。
「一体私達に何の用なのかしら?」
「さあ? てゐちゃんの考える事は私には想像つきませんよ?」
「碌でもない事でなければよいのだけれど……」
 依姫はかつててゐの落とし穴にはめられた事を思い返しながら呟いた。そんな仕様もない事態には決してないたくないものであるのだ。
 そんな話をしつつ、二人はてゐに教えられた場所まで足を進めるのだった。
 
◇ ◇ ◇

「ここがてゐちゃんが言っていた場所ですね」
「そのようね」
 言い合う勇美と依姫。
 そして二人が今いる場所は鬱蒼と茂っている迷いの竹林の中とは思えないような、実に開けた場所であったのだ。
 陽の光は限りなく降り注ぎ、空気はカラッと澄んでいて心が洗われるようである。
 まるで、ここは『自然のホール』とでもいうべき五感を刺激する神秘的な空間なのであった。
「まさか、竹林の中にこんな所があったなんて驚きです♪」
 思わずはしゃぐ勇美。やはり彼女も年頃の少女という事だろう。素敵な光景には心踊るものである。最もここの場合は大人でも感動に値する程の芸術性の高さであるが。
(……)
 対して依姫は落ち着いていた。だが決してこの場に感じるものがなかった訳ではない。
 寧ろ、思う所が多すぎるのである。外界の常識が通用しない幻想郷と言えども、今まで誰も足を踏み入れた痕跡がない等という事など有り得るだろうか。
 おまけに、この近くに得体の知れない気配を放つ者が存在しているのだ。
 依姫でさえも底の知れなさを感じる程の気配なのである。それは余程の異常事態である事を物語っていた。
 彼女は堪らずにその存在に呼び掛けた。彼女にしては軽はずみな行動に出させる程にその存在は掴み所が無かったのである。
「そこにいるのは誰ですか、姿を見せなさい」
 静まり帰った竹林のホールに依姫の声がよく通った。
 その音を自然の設備は余す事なく飲み込んでいった。それで事が終わるかにすら思われたが、実際はそうはならなかったようだ。
「客人よ、これは失礼しました」
 そう竹林の奥から声が聞こえたのである。
「……!?」
 その声を聞いて依姫は更に身構えた。
 そして、その声の主は竹林の中から現れたのだった。
 その姿を見て、勇美は思わず呟いた。
「綺麗……」
 何の飾り気のない言葉であるが、それ以上に姿を現した者を形容するに相応しいものは無かったのだった。
 その者はまず、てゐのようにウェーブがかった黒髪を携えていた。しかし、その髪を腰元まで伸ばしたロングヘアーにしていた為に印象は大きく違っていた。
 艶やかで織物のよう。そう比喩するに値する、神掛かっているといっていい一品であった。それだけでもその者を魅力的に彩っているといえるだろう。
 だが、その者の魅力はそれだけに留まらなかった。簡潔に言うと『女性的な美しさの推移を集めた』とでもなるだろう。
 まず顔立ちは女神のそれのイメージをそのまま張り付けたような端正なものであった。彼女と視線を合わせれば眩しさが目に焼き付き、その唇に口付けされようものならば体が蕩けさせられるような幻惑に襲われてしまいそうであった。
 首から下は、豊満でいて引き締まった胸肉、彫刻のようにくびれたウェスト、出過ぎてはいないがこれまた肉付きの良い尻肉と三点揃っていたのだった。
 おまけにその肌はガラス細工のように透き通った逸品であったのだ。美術品ならケースに入れられて厳重に保管されるだろう代物であった。
 そして、出で立ちは白い絹のような、ロングスカートのワンピース状の物を纏っていたのだ。古代ギリシャの文献で見られるような物を想像してもらえればいいだろう。
 故に、ロングスカートのワンピース状ではあるが、上半身の露出度はかなり高いものであったのだ。袖はなく更に生地が前方にしかなく、背中が丸出しなのである。その事が彼女の豊満な胸をより強調しているのだった。
 それとうって変わって下半身はその主張は控えめであった。しかし、裸足に編み目状のサンダルを身に付けている為、彼女の美しい踝が密かに強調され、こちらも上半身とはまた違う魅惑を醸し出していたのだった。
 幾ら魅力的な服を着てもその人を彩るには当人のものによる限界があるというものである。
 だが、彼女の場合は違っていた。言うなれば、衣装が彼女に従っていると表現しても良い位なのだった。
 絶世の美女……その言葉すら生ぬるくさせるような存在がそこにはいたのだった。
 そんな圧倒的な存在に、庶民の出身である勇美は勿論、名家の出身である依姫ですらも呆気に取られてしまっていた。
 そう二人が狐に摘ままれたような振る舞いをしている中、その美女は口を開くのだった。
「まあ、そう気を張らずにして下さいな」
 僅か、その言葉を発しただけであった。だが、それだけで聞く者全てを優しく抱擁するかのような心地好さ、優しさを提供してくれた。
 その存在だけで『幸せ』を構築してしまうような圧倒的な雰囲気。ずっと側にいて話掛けてくれるだけで幸福を感じ続けられるだろう。
 永遠にそうしていたいと勇美は思う程であった。しかし、彼女はそんな心地良さに自ら鞭を打つかのように本題に入るのだった。
「あの、私達。因幡てゐちゃんにここに来るように言伝を受けたのですけど、彼女はいないのですか?」
 漸く快楽の湯船から這い上がり切り出した勇美。そんな彼女に美女は包容力のある笑みで持って受け止めて言った。
「残念ですが、あの子は今この場にはいませんよ」
「そうですか……」
 その美女の言葉を聞いて惜しいなと勇美は感じた。彼女にもこの人の魅力を一緒に味わってもらいたいと心の底から感じるのであった。
 そんな想いに耽る勇美に、美女は思いがけない事を言い始めた。
「ですが、残念がる事はありませんよ? てゐさんがあなた方に会わせたかったのは私なのですから」
「えっ!?」
 この発言に勇美は驚いてしまった。
 あの幼い悪戯っ子にしか見えないてゐが、このような凄い人と知り合いなのかと。
 その意外な事実に勇美は面喰らってしまうのであった。
 そう勇美が呆気に取られている間に、その美女は微笑みを絶さずに続けた。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね……」
 言って美女は優雅に一礼して、再び頭を上げた。そのごく普通の挨拶ですら、その者が行うとそれだけで神秘的に映るのであった。
 一呼吸置き、とうとうその者は名前を名乗った。
「私、フォルトゥーナ・シグザールと言います。『幸運の女神』なんてものをやらせて頂いていますよ」
「女神……様……」
 言葉たどたどしく勇美は反芻した。
 ──女神。どうりでこの人の纏う雰囲気は一線を画しているのだと納得するのであった。
 そう思いながら勇美は美女──フォルトゥーナに話掛けた。
「それで、フォルトゥーナ様。私達にどんな用なのですか?」
 その勇美を、フォルトゥーナは少し困ったように見据えていた。
「う~ん、それだと長くて大変でしょう。私の事は『フォル』と呼ぶといいでしょう」
「あ、はい。フォル様……。助かります」
 勇美は頬を赤らめながらフォルに返した。
「いいのよ。
 それで、あなた方への御用でしたか?」
「ええ」
 そう答えたのは依姫であった。
「そうね、本題に入りますわ。
 あなた、綿月依姫さんと言うのですね?」
「はい」
 名前を言い当てられても依姫は動じなかった。何せ相手は女神なのだ、人知の及ばない事を行っても何ら不思議はないのである。
 そして、遂にフォルは踏み切った発言をしたのだった。
「依姫さん、私と弾幕ごっこをして下さい」
 思い切った、それでいてシンプルな申し出であった。
 フォルのような存在感を放つ程の者、ましてや女神ともなれば依姫に望む事は限られてくるのだった。
「あなた方の活躍は私の元にも届いています。
 なので、依姫さん。お互いに相手にとって不足はない筈ですよ」
 依姫はその言葉を、暫し無言で聞いていた。
 フォル程の存在が自分の事を認めてくれているのだ。それを依姫は素直に誇りに思うのだった。
 それと同時に、その言葉にはフォル自信の自身が含まれている事も依姫は見逃さなかった。だが、それを依姫を嫌味には感じなかったのだ。
 それは普段自分も振る舞っているような態度であった。つまり、フォルも自分をすべからく大切にする堅実さを持っている事を物語っているのだ。
 その事実だけでも依姫は相手の底知れぬ実力を感じ取るのであった。依姫程の者だからこそフォルの奥の深さが分かるのである。
 だからこそ、依姫の答えは決まっていた。
「ええ、フォル様。貴方の申し出、受けて立ちます」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
 ここに依姫と女神フォルのカードが誕生したのだった。これから二人の接戦が始まるのである。
 だが、その前にフォルは勇美の方を向き語り掛けた。
「黒銀勇美さん。これからの私達の戦い、よく見ておくといいでしょう。きっとあなたの糧になるでしょうから」
 だからあなたもこの場に呼んだのです。フォルはそう付け加えて、正に女神の慈悲の如き笑みを称えて勇美を受け入れるのであった。