雷獣ケーキ

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【雑記】私が火花を読めなくなったワケ

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 お笑い芸人の又吉直樹氏が執筆し、芥川賞を取った事で話題を呼んだのがこの『火花』です。
 その作風は、懐かしさと哀愁が醸し出されていて独特の雰囲気が構築されているものです。この辺りのセンスが芥川賞を取るに至った一因だと私は思いますね。

 故に、この作品は紛れもない『名作』なのは揺るぎない事実でしょう。
 しかし、私はこの作品を読み進めるのが億劫になって、現在断念している最中なのですね。

 その理由は、一人称描写である事に尽きるのです。
 私はネットで小説を集めて無料で楽しむという事が好きだった訳ですが、実際に集めてみると一人称小説が蔓延していて、それで食傷気味となってしまったのですね。

 しかも、三人称が望ましいファンタジーやバトルといった要素の作品でも一人称で綴られるケースが多く、一人称がベストではない作品が多いと思いました(語弊がないように言っておきますが、件の火花は一人称描写に無理はありません)。

 それでも、『もったいない』の精神で、一人称作品がネットに多いなら、それに順応して堪能するべきだというモットーで、半ば強引に読み進めていました……『異世界混浴物語』でヒロインにしてもう一人の主人公の東雲春乃が事件を解決するパートを読むまでは。
 この作品はバトル描写が少なく、かつ本命の主人公である北条冬夜が欲に忠実でいて大らかな性格の為に一人称で描写されていても割と違和感なく読んでいく事が出来ました。
 しかし、作者はバトル描写がない状態の方が安定している事を理解していないのかサンドウォームという魔物と本格的に戦う描写を導入する事がありました。
 この時が最初に読みづらいと感じた訳ですよね。主人公の認識でしか戦況を描写できないが故に基本的に一人称はバトルには向いていないのです。

 バトルの機会はこれだけでは終わりませんでした。キンギョこと仮面の魔道士という敵幹部との戦いが導入されたのです。
 この時の戦い方は頭脳戦でした。故に、純粋な戦闘能力を描かれたサンドウォーム戦よりも一人称向けではなかったのです。
 頭脳戦ともなれば敵味方の駆け引きが見所となり、客観的な描写が必要となるでしょう。
 それが、主人公の視点では敵に秘策があってもそれを描写する事は出来ない為、どうしても描写に偏りが出てしまうのです。
 故に私は、折角の敵幹部との戦いという見せ場なのに消化不良の感覚を味わってしまった訳ですね。

 しかし、そこまでならあくまで『異世界混浴物語はバトルがない時の方が面白い作品』の認識で読み進められた事でしょう。
 そうはならなかったのが、そのすぐ後の主人公と別行動をとっていた春乃の視点で、人外の存在に不法労働をさせる組織を妥当し事件を解決する話になった時でした。

 このヒロインの春乃は実は自分の味方以外の者には敵意剥き出しの思考をする人で、事件の黒幕であった不法な労働をさせていた黒幕のみならず、事件の解決に乗り気でない役人や自分に賛同しない元仲間達にすらも高圧的な態度を取りました。
 この描写が私にとって決定打になりました。
 主人公が嫌な人でも三人称ならばある程度そういう人もいるものだ程度で済みますが、一人称だとそうはいきません。
 何せ、その主人公の高圧的な思考を地の文でずっと読み進める事になるのですから、逃げ道というのがなくなる訳です。
 逆に言えば、主人公が嫌な人である事を読者に抜かりなく伝えたい場合は一人称がオススメでしょう。その描写により見返りがあるならばの話ですが。

 つまり、この事が切っ掛けで私は『文学作品以外ではもう一人称作品を読みはしない』という考えに至ったという事です。それ故に火花も読む意欲がなくなってしまったという経緯ですね。
 ちなみに近代文学は6割型は一人称という話を聞いた事があります。なので、文学作品を読みたい場合は三人称にこだわっていては話が進まないので妥協するしかない訳ですね。

 最後に、こうなってくると今の私にとって、書籍で一人称作品を読む意味は皆無という事ですね。幸い小説は漫画と違って店頭で中身を確認出来るので一人称か三人称かは買う前から知れますからハズレを掴まされる事はないでしょう。

 それと、私が最初に執筆した小説が三人称であったのも多少関係しているかも知れませんね。要は自分が選ばなかった手法の描写が読み辛くなってしまったという事でしょう。
 最初一人称にするか三人称にするか私も迷いましたね。
 ですが、ネットで読んだ一人称の官能小説が読み辛かった事が三人称にしようと決めた切っ掛けです。官能小説は、責め手ならば多少は問題ないながらも、受け手が主人公だといけませんね。地の文に喘ぎ声が混じって読み辛い事もうけ合いです。
 その、私が書いた長編官能小説は機会があったらご覧にいれます。