力が欲しい

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER 幽々子 オブ イエスタデイ】第九話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第九話 一区切りの終焉】
「おいおい、お前らしくないなぁ……」
 魔理沙がぼやく先には、うつ伏せに倒れた霊夢の姿があった。
 目の前には憮然とする依姫。
「前の神奈子のときといい、今回といい、調子狂うなぁ」
 以前の異変で神とやり合った時の事を持ち出して霊夢がぼやく。
「貴方は力の使い方を間違っている。修行が足りない」
 そう依姫は指摘する。
 この博麗霊夢は類いまれなる才能を以てして、幻想郷での異変を解決してきたのである。
 しかし、依姫にもそれに匹敵するかそれ以上に才能が備わっているのだ。八意曰く『頭が切れ、教えた事を何でも吸収した』との事である。
 ここで『努力』の差が顕著に出た訳だろう。霊夢にとって依姫は、やりにくい相手という事もあるが。
「……大体ねぇ。私は妖怪退治の専門家なの。
 相手が神様だとどうも勝手が違うのよね。
 もっとこう、倒して然るべき相手が──」
 そう言って霊夢が視線を送る先には……。
「もう飽きて寝ていますわ」
 そう微笑む咲夜の膝で舟を漕ぐレミリアの姿があった。
「あーあ! もっと妖怪らしい妖怪を退治したいねぇ!」
 そう駄々を捏ねると、霊夢は何かを放り投げた。それは札のようだが──全体的に暗い色でどこか禍々しかった。
 それを依姫はすかさず斬ると、「……!」彼女の表情が凍りついた。
「『大禍津日(オオマガツミ)』」
 刀がどす黒いもやに包まれながら戦慄する依姫に、霊夢は冷たい笑みの下言った。
「あんたたちの弱点はわかっているわ。
 穢れなきこの浄土に、穢れを持ち込まれるのを極端に嫌うこと」
「なんですって? じゃあ、さっき投げた物は」
大禍津日神がその身に溜めた厄災よ。
 放っておけば月に寿命をもたらすわ。
 弾を一つ一つ潰さないと月は地上と変わらなくなる。
 これであんたは私の弾を避けるわけにはいかないでしょ?」
 スポーツでは相手の弱みにつけ込む事は勝つための立派な手段として持ち出されるものであり、弱みにつけ込む覚悟は努力よりも重要とされてしまう事すらあるのだ。
 しかし、この『月に穢れを持ち込む事』は度が過ぎていた。例えるなら地震が起きないが故にその対策をしていない土地に大地震を持ち込むようなものであった。──無い物の対策などしない訳であるから甚大な被害が出るだろう。
「すげぇぜ! まるで倒して然るべき妖怪みたいだ(霊夢が)!」
 その実感がない魔理沙は暢気に感心していた。
 
◇ ◇ ◇

 霊夢は両手を上げて頭上に穢れの塊を集め、そして投げつけた。
 辺りには大量の毒々しい穢れの弾が展開されていた。蝶や蛾の鱗粉を真っ黒に染めて巨大化させたかのような異様な光景だった。
 依姫は刀でそれを一つ一つ斬っていた。
「ああもう、きりがないわ。私が負けようかしら」
 霊夢は息が上がっていた。そしてどことなく空しさを感じていた。
『こんな事してまで勝ちたいか』、そんな気持ちが頭に浮かんでいたのだ。
 霊夢はスペルカード戦では基本的に無慈悲である。そして今回は自分より力量が上回り、かつやりづらい相手だった事が重なり、このような凶行に至ってしまったのだ。
 だが彼女は根は決して冷血で凶悪な人物ではないのだ。故に今、心に引っ掛りを感じていたのだ。
「ふん、きりがないね」
 それに対して依姫も息が上がっていた。得意の攻撃をかわす手段が取れない上に、月の民にとっての毒といえる穢れを前にして精神的にも疲弊していたのだ。
 だが彼女には『希望』があった。
「『伊豆能売』よ、私に代わって穢れを祓え!」
 右手を挙げてそう宣言すると、その上に渦状にエネルギーが集まり、人の形を取ったのだ。
 それは黒の長髪で手に持った鈴から清らかな音を奏で、そして──。
「巫女姿の神!? 誰それ? 聞いたことない神様だわ」
 霊夢は驚いていた。
 そして伊豆能売が手に持った衣を振るうと、穢れをキラキラとした光に還して祓ってのけたのだ。
「おお、本物の巫女だ、こいつはやばいぜ。
 偽物は必ず負けるんだ」
 おどけて言う魔理沙
「巫女は神様をその身に降ろす者。その神様が巫女の姿っておかしくない?」
 腑に落ちない霊夢は疑問をぶつける。
「勉強不足ね」
 それに対して依姫は、──霊夢の首筋に刀を突き付けたのだ。
「貴方が動けばお互い損をする」
 そして霊夢に忠告した。そうなれば依姫は霊夢を殺めなくてはならなくなるし、依姫も月を危険に晒される事となるだろう。
 このような状況で互いの事を考えるのは難しいだろう。実際は自分だけのためなのに『お前のためだ』と言う者が多いのが現状である。
「? と、投了よ、投了」
 そして霊夢は潔く身を引いた。このような勝負を続けても何も生まれない事を得意の勘で察したのだろう。

◇ ◇ ◇

 その後、咲夜とレミリアは仲良く豊かの海の砂浜を散策したり、ふざけっこをしたりしながら満喫していた。
「そ、それでさ。このあとどうなるんだ?」
 魔理沙はそわそわしながら聞いた。
「ここでは要らぬ殺生は行いません。貴方たちはもうすぐ地上に送り返します」
 それが依姫の答えであった。元より彼女の性質が武人的であるのと同時に、スペルカード戦で勝った場合は追撃して相手の命を奪ってはいけないというものがあったからだ。
 依姫はそれに従わなければいけないと考えたのだ。それにほっとする魔理沙
「ですが……」
 そこで依姫は付け加える。
「貴方には別の仕事がありますので、しばらく月の都に残っていただきます」
 そう霊夢に告げた。
「あ──?」

◇ ◇ ◇

 綿月邸の敷地内で玉兎達が稽古に励んでいた──のだが、掛け声は気が抜けそうで動きはへろへろで、明らかに真面目にやってはいなかった。
 依姫が問題を解決してしまった後では見が入らないのだろう。『勝って兜の緒をしめよ』という辞書は彼女達にはないようだ。
 そんな調子なので、当然のようにおしゃべりも起こる。
「依姫様は地上の巫女を連れて何をしているの?」
 玉兎の一羽が言う。
「ああ、なんでも依姫様の潔白を証明するために使うんだってさ」
 立ち会っていたもう片方の玉兎が答える。
「潔白?」
 最初に話しかけた玉兎が首を傾げた。
「ほら、謀反の噂が立ったことがあったでしょう?
 あれって何者かが勝手に神様を呼び出して使役していることが発覚したからよ」
「ふむふむ」
「それで依姫様が真っ先に疑われたの。
 そんなことできるのも依姫様くらいだったしね。
 でも本当はあの巫女にもできるって見せて廻るんだって」
 と、玉兎達はお喋りに興じていた。そこへ……。
「その話、詳しく聞きたいわ」
 突然の聞き覚えのない声に玉兎達は振り返った。
「誰?」