力が欲しい

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER】第53話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第五十三話 勇美の妖怪退治】
(この話には、勇美とサブキャラを除いたオリジナルキャラが登場しますので、そういうのが苦手な方はご注意下さい)
 紅魔館の勇美達へのおもてなしも無事に幕を閉じ、幻想郷においてもイレギュラーな事態があった事に対しても皆は落ち着きを取り戻していったのだった。
 だが勿論『忘れる』などという事はしなかったが。
「それで、何か分かったかしら?」
「いいえ、さすがの私でもまだね……」
 この会話の主は、前者はパチュリー・ノーレッジ、後者は八意永琳という普段余り見ない取り合せであった。
 このような組み合わせのやり取りをする事になった理由は、他でもない、フランドールの一件である。
「『誰が』『どこから』フランちゃんの意識を乗っ取ったのか、そう簡単に分かりそうもないわね」
 永琳は両手を広げて『お手上げ』のポーズを取った。
「……まあ仕方がないわね」
 そんな永琳をパチュリー咎める気は起きなかったのだ。
 ──何故なら、このような『誰かを乗っ取る』異変は、異変を日常的に起こせるシステムを確立している幻想郷でも例がなかったからである。
 そもそも、幻想郷においてもそれは『ルール違反』であるのだ。ある者が原因で異変を起こし、それが複雑に絡んで一つの異変として構築される場合が多い。
 だが、他の者を操り自分の手を汚さずに異変の原因を作るなど言語道断なのだ。そのような卑怯な事は『異変を起こす者』には許されていないのだ。
 だから、紅魔館と永遠亭の頭脳たるパチュリーと永琳は、『異変の違反』をした犯人を分析して追っている、そういう事である。
「……今出来る事は限られていますね」
「残念ながらそのようね。また何か分かったら情報を頂戴」
「分かりました」
 そう言い合って二人はこの場は解散する事にしたのだ。
 だが、みすみす犯人を見逃すつもりは毛頭なかった。何故なら幻想郷に住む者として『その者』が犯した罪を許してはいけないからであった。

◇ ◇ ◇

 そんな頭脳役の動きが見られる中、勇美は久しぶりに依姫と一緒に人里の茶屋で一服していたのだった。
 例によって今日の稽古を終えてからの息抜きであった。
 そして、今回は勇美は少し趣が違っていたのだった。
「あ~、このようかんおいし~」
 そう、普段は茶屋では団子を食べる彼女であったが、今回はようかんを食べていたのだった。
 食べると心地好い甘さと共に口の中で溶けて食感でも楽しませてくれる、それがようかんの醍醐味であった。
「あ~、美味しかった」
 そう言って勇美は依姫と共に代金を払って茶屋を後にしようとしていた。
 そこで幻想郷の有権者が登場するのがお約束であったのだが──今回は事情が違うようであった。
 代わりに存在したのは、人里の住人の耳に付く話だった。
 話ているのは若い女性二人である。
「ねえ、知ってる?」
 片方の黒髪の女性がもう片方に聞く。
「何?」
 それに答えるのは茶髪の女性であった。
「何でも最近、人里の畑が荒らされているって話よ」
「動物か何かかしら?」
 茶髪の女性は首を傾げながら言った。
 それに対して黒髪の女性は首を横に振った。
「どうやらそれは違うみたいよ」
「と、言うと?」
 ありきたりな話だろうと踏んでいた茶髪の女性はそれを否定された為に、少し興味深げに相方に聞く。
 それに対して黒髪の女性は、したり顔で対応する。
「どうも、それは妖怪の仕業らしいのよ~」
「それは、まあ……」
 言われた茶髪の女性は興味半分、怖さ半分の心持ちとなるのだった。
「と、いう訳よ。あなたもくれぐれも気を付ける事ね」
「ええ、ありがとう」
 そう言い合った後、二人は手を付けている途中だったカステラの解体作業に取り掛かるのだった。
「へええ~」
 その一部始終を見ていた勇美は感嘆のような声を漏らしていた。
「どうしたの勇美?」
 それに気付いた依姫は勇美に問い掛ける。
「うん、あのカステラ美味しそうだな~って」
 勇美はよだれを垂らしかけながらそうのたまった。
「それなら今度一緒に食べましょう」
「はい、それは楽しみです」
 依姫の提案に勇美は嬉しそうにはにかむのだった。
 その思いを胸に彼女は帰路に……。
「って違う! 私とした事が『隣の花は赤い』の精神に囚われかけましたよ!」
 つかなかったようだ。ノリツッコミの如く振る舞うと勇美は話を仕切り直す。
「何かしら勇美?」
 対する依姫はどういう事かと首を傾げる。──彼女も勇美同様に『天然』な所があるようだ。
 頭は切れるものの、抜けてる所もあるようであった。
 そんな依姫に、勇美ははっきりと言ってのける。
「それは、妖怪の事ですよ、妖怪の事!」
「貴方、まさかその妖怪を退治する気なの?」
 そう依姫は驚きながら勇美の意図を指摘して見せた。依姫は抜けている所があっても、基本的には鋭いのだ。
「そう、その通り! 中々理解が早い! でもチェーンソーでバラバラにされるのは嫌ですね!」
「いや、落ち着きなさい。捲し立てすぎよ」
 そう依姫は勇美に冷静さを取り戻させるべく宥めた。何せ支離滅裂だからだ、特に三番目。
「フゥーフゥー、クワッ! はい深呼吸して落ち着きました」
「怪しいって」
 依姫はそんな勇美に疑心暗鬼であった。さながらこのまま飲み物だか薬物だか分からない異物を摂取しないかという不安要素しかなかったからだ。
「大丈夫ですって、私は冷静だ!」
「うわあ、また……」
 それ実は冷静な時に言われた台詞じゃないしと依姫は思った。第一私は後に勇美を謀殺するのかと。
「うん、ごめん。今度こそ大丈夫です」
「……本当のようね」
 今度は勇美は悪ノリしていないと踏んだ依姫は、真っ直ぐに彼女を見据える。
 そして、事の確認を行う。
「貴方、その覚悟は出来てるのね?」
 妖怪退治は断じて遊びではないのだ。
 確かに今まで勇美は、数々の幻想郷の有権者弾幕ごっこを繰り広げてきた。しかも、何気に勝率も高いのだ。
 だが、それらの勝負は相手の承諾の上で行われたものだったのだ。故に安全であった。
 しかし、今回は見ず知らずの妖怪を相手にしようとしているのだ。これには勇美に色々経験をさせたい依姫でも慎重になるのである。
 そんな依姫の気遣いを嬉しく思いながらも、勇美の心は決まっていたのだ。
「ええ、勿論です」
 そうはっきりと勇美は答えたのだった。そして彼女はその理由を続ける。
「私は幻想郷に住む者として、何か積極的に行いたいと思っていたんです」
 そして勇美は語る。今までは相手の承諾の下弾幕ごっこをしていたが、それは幻想郷に住む者としての本来の役割を果たしてはいなかったと思う……と。
 そこまで聞いて、依姫は憑き物の落ちたような表情を浮かべ、そして言った。
「分かったわ、貴方の気持ち」
 言って依姫は微笑んでみせた。そして、「その前に」と付け加える。
「何ですか?」
 依姫にそう言われて勇美は首を傾げた。
「それは、この問題は人里のものですから、まずは人里の守護者である慧音先生に相談するのがいいでしょう」
「成る程ですね……」
 依姫の提案を受けて勇美は合点がいったようにポンと手を打った。

「慧音先生には最近会ってなかったし、顔見せの意味も込めて会うのがいいですね」
「そうしましょう」
 そして二人は慧音の住まう屋敷へと歩を進めるのだった。

◇ ◇ ◇

「分かった。勇美の心意気、確かに受け止めたぞ」
「やっぱり駄目ですか……」
 しゅんとなって項垂れる勇美。
 そこで慧音は「いやいやいや」と、かぶりを振った。
「いや、勇美。人の話を聞いていたか? 私はお前の妖怪退治の申し出を許可したのだぞ」
 それを聞いて勇美は弾かれるように反応した。
「いえ、こういう展開の時って大概断られていますよね」
「いや、創作物に影響されすぎだぞ勇美」
 悪びれもせずにのたまう勇美に、慧音は呆れながら突っ込みを入れた。
 つまり、話を整理するとこういう訳である。
「それでは、慧音先生は私が妖怪退治に出るのを許可してくれるのですね?」
「言った通りだ。二言はないぞ」
「慧音せんせ~い♪」
 喜びを全身に携え、慧音の下へ飛び込んで行こうとする勇美。
 だが依姫は「させるか」と言わんばかりに勇美の首根っこを掴んでそれを阻止したのだ。
「ぐええ、よりひめさん、なんでぇ~」
「また碌でもない事をしようとしていたのが目に見えていたからよ」
「人聞き悪いですねえ。まさか私がどさくさに紛れて慧音先生の胸にうずまろうとすると思ったのですか?」
「……ほらね」
 はうあ、やっちまった! 勇美はこの瞬間自分の浅はかさを呪うのだった。
 そんな二人のやり取りを見ながら慧音は思った。この今の服、考え直した方がいいのかも知れないと。
「ウエヘン、オホン」
 それはさておいて、慧音は咳払いをして話を仕切り直す。
「勇美、そういう訳で私の言った通りだ。例の妖怪退治の件、許可しよう」
「本当に本当ですね?」
 勇美は表情を輝かせて慧音に確認するのだった。
「ああ、勿論だ。何せ勇美自身の意志なのだからな」
 慧音はウィンクして、おどけて見せながらそう言い切った。
「ありがとうございます!」
 その慧音の言葉を聞いて、勇美は全身全霊を込めてお礼の言葉を述べるのだった。
 だがそこで慧音は「しかしだ」と付け加える。
「何ですか?」
 勇美は一抹の不安を感じながら慧音に確認する。
 折角の初めての、幻想郷に住む者としての役割を果たす好機を掴んだのだ。それを打ち砕かれる事はあってはいけないと勇美は念じながら言うのだった。
 そんな勇美の心意気を慧音は無下にはしなかった。
「安心するのだ勇美。何もお前の活躍の場を奪おう等とは思ってはいないのだからな」
「……」
 その慧音の言葉を勇美は無言で聞き、続きを待ったのだ。
 そんな勇美の期待に応えるように慧音は続ける。
「だが、これは遊びではないのだ。だからお前に万が一の事があってはいけないのだよ」
「はい」
 勇美は慧音の忠告に対して素直な気持ちで答えた。彼女の言う事は絶対に忘れてはいけないからだ。
 だが、だからといって勇美はここで引き下がりたくはなかった。だから彼女は慧音の次の言葉を待ったのだ。
 それに対して、慧音はいよいよ結論を出したのだ。
「そこで依姫殿の出番だ」
「私ですね……」
 そう依姫は呟いた。
 その様子に驚いたようなものはなかった。まるで、この事を予期していたかのように。
「勇美に身の危険が迫るような事があったら、この子の事を任せたいのだが、頼まれてくれるか?」
「ええ」
 その慧音の申し出に、依姫は二つ返事で答えたのだった。
 その理由は、依姫もまた、勇美の事を大切に思っているが故、非常にシンプルな答えである。
「依姫さん……、慧音先生……」
 勇美はそんな二人の気持ちに心温まる感触を味わうのだった。

◇ ◇ ◇

 そして勇美と依姫は人里にある、その妖怪に荒らされるという畑へと赴いていたのだ。
 今、丁度二人は村人からその話を聞いている所であった。
「それで、その犯人の妖怪の特徴は分かりますか?」
 そう依姫は畑の農夫に質問していた。
 それに対して村人は首を横に振る。
「いんや、おらでも犯人の事はよく分からねえべさ」
 お手上げ、その言葉が的確に農夫の様子を物語っていた。
「何か、少しでも気になる事があればいいんです」
 依姫に続いて勇美も質問に加勢した。
 そんな二人に対して農夫は気分を良くしてこんな事を言い始めたのだ。
「あんたがた、仕事熱心なんだべな。おら感心だべ」
 そう言って農夫はニカッと笑って見せた。
 自分の仕事に一所懸命になる姿。それが悪行でない限り誰もが気分の良くなる様相だろう。
 農夫はそのような心持ちとなったので、彼はなけなしの情報を二人に与える事にしたのだった。
「おら、はっきりとは見てねえけども、これだけは分かるだ。
 そいつは確か『緑色』が目についただな」
「緑色ですか……」
 そう勇美は相槌を打ちながら思いを馳せた。
 その要素に勇美は心当たりがあった。
 それは『リグル・ナイトバグ』の存在である。彼女の髪の色が鮮やかなグリーンなのであった。
 彼女は妖怪蛍で、能力は『虫を操る力』なのだ。
 虫は草木の葉を食べる存在が多い。そんな彼らにリグルは畑を襲撃させたのだろうか?
「だけど……」
「そうね」
 勇美の疑問をはらませた呟きに、依姫も相槌を打つのだった。
 合致した二人の意見はこうだ。
「「襲わせる理由がないわね」」
 見事にハモったので、どこか二人は気恥ずかしい心持ちとなってしまった。
 そんな二人に農夫は止めを刺す。
「お二人さん、仲がいいべな~」
「んなっ!」
「はっ!」
 その農夫の一言が決定打になってしまったようだ。それにより勇美と依姫は面食らってこそばゆい気持ちとなってしまった。
「いや、その……」
「あははは……」
 依姫と勇美は照れ笑いをするしかなかった。特に依姫は他人の仲の良い所を茶化して楽しむ嗜好があれど、自分が茶化されるのには慣れていないのだ。
 だが、二人は同時に心満たされるような感覚に陥るのだった。何故なら気付けばこうして他人にも分かる程に、自分達の仲が良好になっていたからである。
 しかし、ともあれ当面の目的はその『緑色』の妖怪の退治である。二人は気を引き締め直して農夫に向き直った。
 そして、農夫は二人に再度話掛ける。
「そろそろ例の妖怪が現れる頃だべな。いつも畑の襲撃はこれ位の時間と決まっているのさ」
 その事を聞きながら、勇美はどこかその妖怪を『律儀』だなと思っていた。
 まるで、物語の怪盗が予告状を出すかのようである。勇美はその行為にどこか紳士的、ヒーロー的なものを感じるのだった。
「リグルさんがヒーロー……かなあ?」
 そこまで思って勇美は首を傾げるのだった。
 リグルは紳士っぽい格好をしているが、些か失礼になるがヒーローという柄ではないと彼女は思うからであった。
 そうこう勇美が思っている内に『それ』は起こった。
「!?」
 最初に様子がおかしい事に気付いたのは依姫であった。そして勇美に注意を促す。
「勇美、気を付けなさい。風の流れが変わったわよ」
「はい」
 その言葉に勇美も従い、身構える。
 そして、それらはやって来たのだ。
 対して勇美は目を凝らしてそれを見据える。
 そして、その正体に気付いたようだ。
「バッタ……?」
 それが勇美の割り出した答えであった。
 バッタ。草むらを跳ね回り、稲科の植物の歯を好んで食べる昆虫である。
 そして、日本では余り見られない事であるが、欧米では時に気象などの要因により大量発生して稲や作物を食い荒らす存在なのだ。
 それに今の状況が酷似しているのだった。
「まさか、日本でお目に掛かるとは思っても見なかったね」
 そう言いつつも、半分は納得していた勇美であった。
 何せここは『幻想郷』なのだ。外の世界での常識は通用しないのだ。
 だが、そのバッタの群れに変調が見られた。それに勇美が気付く。
「あれ? このバッタさん達、逃げようとしてる?」
 それが勇美が感じ取った事であった。
 バッタの群れは現れたかと思うと、直ぐに後退気味となっていたのだ。
「私達がいたから逃げる他なくなったのでしょう」
 思案する勇美に、依姫は即座に彼女が打ち出した推論をあげた。
 それは、今まで畑に赴く際には誰も戦える者がいなかった為に問題なく襲撃を行えていたのだ。
 それが今回は違っていたのだ。しかもその戦える者が二人もいるという始末であった。
 だから、犯人であるバッタ達は後退を余儀なくされたのだろうと依姫は結論付けるのだった。
 二人がそうしている内に、後退を始めたバッタの行く先に何やら人影が見えた。
「誰!?」
 そこで勇美は咄嗟にその者へと呼び掛けたのだ。
「!」
 その者は勇美の声に反応すると、ぴくりと反射的に挙動したかと思うと、そのままその場から去っていったのだった。
 それも、ただ去るだけではなかった。実に俊敏に動き、目で確認する隙がなかったのである。
 そして、バッタの群れはその者に従うように一緒に飛び去って行ったのだった。
 勇美は暫し唖然とする。
「……素早いですね」
 そう呟くしか今の勇美には出来なかったのである。
「ええ、でも今はそのような事を言っている場合ではないわ」
「と、言いますと?」
 勇美は依姫に意味ありげな事を言われて首を傾げる。
「勿論、あの妖怪を追うのですよ」
「でも、素早く逃げられましたよ」
 勇美は少し悔しそうにのたまった。
 だが、依姫はそこで付け加える。
「大丈夫です。このような時の為の神降ろしです」
「……もう、それで何でもアリですね~」
「勇美、それは言ってはいけないわ」
「ですね~」
 勇美も、これ以上は踏み込んではいけない領域だと悟り、身を引くのだった。
 そして、依姫はこの場に相応しい神に呼び掛ける。
「『風神』よ、我々の行く道を示したまえ! 【導符「我道の走風」】」
 依姫が神降ろしによるスペルを宣言すると、空気の流れが変わったのだった。
「この風は犯人の息吹を追って流れているわ。それを追って私達も行きましょう」
「……分かりました」
 勇美は話が急展開だと思いつつも、これに従えば問題ないと踏んで同行、そして目的の存在の足跡の追跡を心に決めた。
「という訳で私達は行きます。農夫さん、情報の提供ありがとうこざいました」
「私からも、ありがとうございました~」
 二人で農夫にお礼を言うと、早速両者は風の道標を追うのだった。

◇ ◇ ◇

 人里から離れた道中。二人は急ぎ足で犯人を追う中、勇美は依姫に尋ねた。
「やっぱりこれ、リグルさんの仕業でしょうか?」
 だが、依姫は首を横に振る。
「いいえ、それは分からないわ」
「でも、相手はバッタっていう虫の群れを操っていましたよね……」
「だからと言って、彼女が犯人だとはまだ決まった訳ではないわ」
 取り敢えず、その目で確かめないと始まらない。そう依姫は結論付けて勇美と共に犯人を追うのだった。

◇ ◇ ◇

 そして、風の流れを追って走っていた二人が辿り着いたのは、のどかな空気を醸し出す草原であった。
「素敵な所ですね~」
 空からもたらされる陽光、静寂に包まれた周囲をそよそよと吹くそよ風、それによりたなびく草々。
 このまま感傷に浸りたい気分の勇美だったが、それは許されない願いであったのだ。
 その理由を依姫が指摘を始めた。
「勇美……」
「ええ、分かっています」
 そういう勇美も気付いていたのだった。
 ──草原のど真ん中に、求めていた何者かが佇んでいた事に。