力が欲しい

東方を中心に二次創作小説やゲームデータを置いたり、思った事を気ままに書いていきます。

【MOONDREAMER リベン珠】第1話

【はじめに】の内容を承諾して頂けた方のみお進み下さい。

 【第一話 新たなる友:前編】
 依姫が月へ帰ってからの勇美にはある変化が見られたのである。
 それは、本格的に自分の見定めた夢である小説家になるべく行動を起こし始めたという事である。今までも文章を書く練習をしていたのであるが、依姫が自分の元から一旦去った事によりそれが切っ掛けとなったようだ。
 まずその為に、彼女は今までではそこまで関わりを持たなかった者達と関係を持つようになったのである。
 最初に、勇美が当初に幻想郷に来てからお世話になった慧音、その彼女と親しい稗田阿求である。
 彼女は幻想郷縁起という、幻想郷に住むか関わりのある人外の者達について記した書物の執筆を行っている人である。尤も、個人の感性で書いているので、完全な客観的な情報とはいかず、主観が入る所が多いのではあるが。
 それでも、文章を組み立てる技能を身につけようとしている勇美にとってはとても参考になる要素が多かったのである。人外の者達の特徴を分かりやすく、それでいてやや誇張して印象に残りやすくする阿求のセンスは勇美にとって学ぶべき所が沢山あるようだ。
 次に幻想郷最速にして鴉天狗の記者、射命丸文であった。
 勿論、妖怪である彼女が四の五の言わずに人間の勇美に協力はしてくれなかっただろう。だが、ここで勇美は機転を利かせたのだ。
 彼女が依姫に様々な手解きを受けた事を巧みに利用したという事である。その経験と情報は文が継続的に執筆する『文々。新聞(ぶんぶんまるしんぶん)』の記事にするにはこの上ないネタになるのだ。それを利用しない勇美ではなかった。
 それにより、勇美の目論見通りに文は彼女に食い付いたのである。そして、文は取材対象に対しては誰にも礼儀正しいのであるから、勇美に対しても協力的になったという事なのだ。
 その最中に勇美は文から執筆のノウハウを学んでいったのである。新聞の記事というのは限られたスペースに必要な情報を絞り、かつ文字数も合わせなければならない綿密な作業を要されるというものなのだ。故に、文からその術を学ぶ事により、勇美の文章力、構成力の向上にも貢献していったのである。
 最後に勇美は、これまで幻想郷にいなかった、所謂『新参』の者とも関わるようになったのだ。それが三人目の者である『宇佐美菫子』である。ちなみに、幻想郷の有力者では数少ない貴重な『人間』である。
 彼女は、幻想郷に不本意ながら連れ込まれて、解放される為に自身の『超能力を操る能力』により怪現象のエネルギーを濃縮した『オカルトボール』なるものを幻想郷にばら蒔いて都市伝説の騒動を起こした張本人なのだった。
 ちなみに勇美は生憎その騒動には参加しなかった。彼女曰く、その騒動は『テンションがおかしい』というものであった。
 それは怪現象を纏って自分の物にして戦うという、勇美の感性では馴染まない独特すぎる行いが蔓延した為である。幻想郷の住人らしく弾けた感性を持つようになった彼女とて受け入れ難い流れであったのだ。
 勇美は決めたのである。これから幻想郷で生きていく上で『自分らしくありたい』と。だから、今回の騒動と同じノリで参加しては些か『自分らしくない』と感じたが故の決断であった。
 だが、この『都市伝説騒動』において勇美は何も得なかった訳ではないのだ。その証拠の存在が今勇美の目の前にいる。
 それは他でもない、その都市伝説騒動の張本人たる宇佐美菫子その人であった。
 勇美はその騒動の後、菫子と交友関係を結ぶに至ったのだ。それは、二人とも種族が人間かつ、同じ『外来人』という共通点まで持ち合わせている為、何か互いに通じるものがあったようだ。『いさみ』と『うさみ』の語呂が似ているのも一因だったようだ。
 そして、勇美が菫子に入れ込むに至る理由が他にもあったのだ。それが、勇美が小説家を目指す上で交流を持った第三の人物である理由であった。
 菫子は自分が立ち上げた『秘封倶楽部』というサークルで公表するブログに幻想郷での経験を、『自分が見た悪夢』と称して乗せるという活動を始めたのである。
 つまり、菫子はブログの記事を書く者という事である。しかも、勇美も幻想郷で経験した事を噛み砕いた内容の小説を将来的に発表しようと考えているのだ。
 故に、言うなれば勇美と菫子は『同志』も同然であったのである。だから勇美は彼女と関係を持って損はない、寧ろ得られるものの方が大きいと踏んだのだった。
 そういう経緯で二人の仲は良好となっていった。そして、今の状況に至っているという事である。
 今のここは夜中の人里である。妖怪の存在する幻想郷では基本的には『彼ら』の時間となる為、人間は本来ならば今行動をしていてはいけないのである。
 だが、人里の守護者の上白沢慧音の監視下の元で安全を確保した上で、夜の人里の広場に大勢の里の住人が集まっていたのだった。
 そして、勇美は改めて目の前の菫子に目を向ける。
 彼女の容姿は黒い帽子に赤掛かった茶髪に赤縁の眼鏡、彼女の名前の通りすみれ色が基調の服装で長袖かつロングスカートというものであった。
 それは、16歳の女子高生にしては些かガードの固い出で立ちと言えるだろう。そして、現代の日本人ならほとんど普段着にしないようなマントまで装備しているのだった。それもドラキュラ伯爵が好むような襟がとがり、黒の表地に赤の裏地という重厚感極まりないものである。
 それは、彼女が外界で孤独を好む性格だったが故に、一般人が近寄りがたいと思うような格好を望むようになっていったが故かも知れない。そんな彼女も件の都市伝説騒動で幻想郷の人妖と関わり合う……もとい戦うといった経験を経て、友達を作る事も悪くないかも知れないという考えに至った訳だが。
 その菫子の心境の変化も、勇美が彼女と交流を結びやすくする要因となったのかも知れない。
 ともかく、新しく出来た幻想郷の有力者では貴重な同種族に対して、勇美は話し掛ける。
「菫子さん、こうして私が考えた突拍子もない案に付き合ってくれてありがとうございます」
「いいって事よ。私もオカルト騒ぎを起こして里の人達に迷惑を掛けたお詫びをしないとって思っていた所だからね」
「そう言ってもらえると気が楽ですね」
 菫子の気遣いに勇美は肩の荷が降りる心持ちとなる。そして、密かに菫子の事を今まで孤独を望んでいたけど、断じて人の気持ちが分からないような者ではないと想いを馳せるのだった。
「二人とも準備はいい~?」
 そうこうしている人間二人の間に割って入る声がした。それは妖怪の山に住む河童の少女、河城にとりからのものであった。
 この少女には以前勇美もお世話になっていたものである。彼女が生み出す自分の分身である機械の動力を依姫の助力で『神降ろし製』にする前までは燃料をにとり達河童から提供してもらっていたのだから。
「はい、もう大丈夫ですよにとりさん」
「私の方もOKよ♪」
 にとりの呼び掛けに二人とも了承の返事をする。それを合図として、にとりはカウントを始めた。
「3……2……1……はいっ!」
 そしてカウント終了と共に彼女は手元のスイッチをONにしたのであった。それにより起こる事は……。
 一瞬にして夜の人里の広場がカッと眩い光に照らされてライトアップされたのである。にとりが押したスイッチはこの大掛かりな照明を起動させる為の物だったようだ。
 その派手な演出に集まった人里の住人達からは、一気にわあっと歓声が沸き起こったのである。それを菫子は皆の前に立ってこう言った。
「皆さん、驚くのは早いですよ。お楽しみは、まだこれからなんですから♪」
 その振る舞いをいともあっさりとやってのける菫子。それを見て勇美は再度確信した──やっぱりこの人は、人とのやり取りが寧ろ得意なのだと。
 それはさておき、菫子の言葉通り、これから何かとっておきの見世物が開始されるようであった。

◇ ◇ ◇

「それじゃあ、私から行かせてもらうわよ」
 そう切り出したのは菫子の方であった。彼女も勇美が後手で始めるのが得意と知っているが故に、幻想郷でのキャリアではなく人生経験が2年上な菫子の方が後輩に華を持たせたと言う事だ。
 それに、今回の弾幕ごっこでは菫子が先に動く事に意味合いがあるのだ。
 そう、『弾幕ごっこ』である。二人は今からこの人里の広場で公開弾幕ごっこを行おうと取り決めたのだった。
 それも、今回のは思考を凝らした特殊なものである。その引き金を引く為に菫子は呼び掛ける。
「にとりさん、『水』の用意をお願いね」
「はいよ♪」
 菫子に言われて、にとりは自身の能力で水を生成して、それを菫子目掛けて放出したのであった。
 その瞬間里の住人からどよめきが起こる。このままではこの人は水の直撃を受けて惨事となってしまうと危惧したのである。
 だが、当然弾幕少女三人には取り乱している者は存在してはいなかったのだ。何せ、今のこの状態は打ち合わせの通りだったからである。
「はっ!」
 その最中、菫子は落ち着いた様子で向かって来る水の奔流へ、両手を向けて自身の能力を発動する。
 それは、『超能力』であった。サイキック、エスパー、念動力と呼ばれる、霊力とも神力とも妖力とも違う超然的な力である。
 その力を受けた水は、まるで写真の中に納めたように空中で静止をしてしまったのであった。
 水の流れが宙で固定されるという強烈なインパクトを誇る演出。しかもそれが照明に照らされて鮮やかに光を反射していた。このような芸術的な光景を見た人々の反応は決まってくるだろう。
「わあああ~~~っ!」
 それは見事な歓声であった。テレビ番組でのそれは合成によるものがほとんどだが、今この場に起こったそれは嘘偽りのない、人々からの生の称賛が籠った生命の脈動であった。
(ええ、効果覿面ね♪)
 その手応えに菫子は、ご満悦のようである。こうして自分の力を人々を喜ばせる為に使うのも悪くないと思った。
 そして、その事に気付かせてくれた勇美の事もさすがだと感じるのだった。確かに自分の方が年上ではあろうとも、勇美の方が幻想郷で培われた感性は上を行っていると実感するのだ。
 だが、これ以上感慨に耽るのはこの『ショー』が終わってからにしたい。今は集まってくれた皆に喜んでもらう、それだけを考えよう。
 そう思い至り、菫子は再度自身の力を水に込めた。すると、形作られる前の高熱で溶けたガラス細工のようにグニャグニャと流動しながら水は菫子の元へとたぐり寄せられたのである。
 彼女の元へとかき集められた水はぷるぷると震えながら球状に変型させられていた。そして、そのような芸当をこなす菫子の印象は正に『職人』の域に達していたのだった。
「うわあ……すごい♪」
 これには、菫子と対峙している勇美までも感嘆の声をあげてしまう程であった。それも、彼女こそがこの、謂わば『水芸イリュージョン弾幕ショー』の立案者であるのにである。
「……」
 その事に菫子も少し呆れてしまう。この子は無邪気なのはいいが、些か奔放ではないかと。
 それが勇美の良い所かと思いつつも、菫子は少し心を鬼にして、彼女に褐を入れる事にする。
「勇美、これはあくまで弾幕ごっこで、あまつさえあなたは対戦相手なのよ」
 そう言いながら菫子は拳を握り、戦いの為の予備動作を行う。
「【超水「ハイドロマグナム」】!」
 そして、スペル宣言の元、握った拳に念動力を籠めて──自分の目の前に浮かぶ水球へと打ち込んだのだ。
 すると、そこから水の一部が押し出され、弾丸となって発射された。それが向かう先には当然勇美がいたのである。
「危なっ……!」
 咄嗟にそれを勇美は紙一重でかわす。今までの弾幕ごっこで培われたその身のこなしは伊達ではないのだ。
 そんな勇美に対して、菫子は挑発的に言う。
「どう、目は覚めた?」
「ええ、お陰でバッチリです」
 対して、勇美も強気の発言で受けて立った。そう、これはあくまで弾幕ごっこなのである。『魅せる』事が大事でありつつも、勝負はきっちりと付けるのが礼というものなのだ。
 その事を、今の勇美も改めて認識したようだ。いつまでも相手の生み出す芸術に酔いしれてはいられないというものだ。
「お目覚めの所悪いけど、このまま攻めさせてもらうからね♪」
 言うと菫子は再び念力の籠もった拳を水球へと打ち込み、水の弾丸を発射した。だが、今回はこの一発だけでは終わらなかった。残る左の手にも念を籠めると、それも同じように水球へと打ち込んだのである。
 そうして、二発、三発と水の弾丸は撃ち出されていった。それが勇美に刻一刻と迫っていった。
「当然だけど、私もスペルを発動しないといけないよね」
 言うと勇美は、自身の機械の分身であるマックスをその場に顕現させた。見た目は機械で出来た小動物のようであるそして、そこに依姫との契約によりお借り出来るようになった神降ろしの力で神の力をそこに籠める。
 籠める神の力は『天津甕星』である。それによりマックスは小動物の姿から未来風の片手銃へと変貌を遂げる。
「それじゃあ私も行きますか。【星弾「プレアデスブレット」】」
 弾丸には弾丸である。勇美は初手でお得意の星の銃を使って、迫り来る水の弾丸へと銃口を向け、引き金を引いた。
 それにより、水の弾丸は星の弾丸に撃ち抜かれ、その形状を保てなくなり弾け飛んでしまったのである。
 そして、その光景もまた神秘的だったのだ。ライトアップされた水の弾丸に、星のように光輝く弾丸がぶつかり弾ける様は予め計算されているかのような緻密な芸術性が存在していた。
 それに対して、ギャラリーはまたしても感嘆の声をあげてしまう。その事を実感して勇美は、この催しが実にうまくいっていると噛み締めるのだった。
 だが、これはパフォーマンスだけでは終わらない、れっきとした『勝負』なのである。だから勇美は人々の喜びだけで満足しには行かなかったのだ。
「やるからには、勝たせてもらいますよ!」
 そう言って勇美は狙いを残った水球へと向ける。
「まずは、これを撃ち抜かないとね」
 そう思ったら吉日、善は急げというものである。厄介な水の弾丸を撃ち出す核とも言えるあの水の塊を粉々に打ち砕いてしまおう。
 その狙いの元、勇美は手に持った未来銃の銃口を菫子の操る水球へと向ける。そして、次々と星の弾丸をそこに撃ち込んでいったのだった。
 次々に弾丸が当たり、水球はバシャバシャと音を立てながら水の雫を撒き散らしてその形状を小さくしていった。つまり、攻撃すれば打ち崩せるという勇美の読みは当たっているかのようであった。
 だが……。菫子の様子は至って平静を保っていた。そして、彼女は抵抗する様子もなかった。これは、攻撃の要を破壊されている者としては些か不自然というものだろう。
 その答えもじきに分かるようになるのであるが。
「はい、これでそろそろ終わりですね♪」
 そう意気揚々と言った勇美の掛け声を合図にするかのように、完全に水球は吹き飛びその形を保てなくなっていた。
「よしっ!」
 その瞬間勇美は思った。──攻めるなら今しかない、と。そして、勇美は銃口の狙いを菫子へと向ける。
「それじゃあ、水もなくなった事ですし、菫子さんへダイレクトアタックですね♪」
 勇美は高らかにそう言って銃の引き金を引こうとする。だが……。
「フフッ、そいつはどうかしら?」
 窮地に追い込まれた筈の菫子が放った台詞はこれであった。
「!」
 その瞬間勇美は戦く。この状況で菫子に打つ手があったのかと。そう思っている勇美に菫子は指摘した。
「勇美、上を見て見なさい」
 その言葉に従い、勇美は視線を菫子の上へと向けたのだった。そして……。
「そんな事が……」
 勇美は驚くしかなかった。何故なら確かにプレアデスブレットで水は全て弾き飛ばした筈なのであった。
 だが、実際は水達は消え去る事なくそのまま宙に無数に固定されていたのだ。まるで静止画のように水の雫が空中に留まっている。
 そんな中で菫子は勝ち誇ったように勇美に言う。
「水を吹き飛ばしてしまえば良いという発想は良かったけど、私の泣く子も黙る超能力を少し読み違えていたようね」
 そう、これこそが菫子の超能力の賜物であった。物体そのものへの干渉、それが彼女の強みなのだ。
 幻想郷の有力者は霊力や妖力で球場のエネルギー弾を生み出す事は出来る。だが、対象に対して直接働きかける事が出来る者は少ないのだ。
 例外的に気を他の生物に送って活性化させられる紅美鈴や、対象の『目』と呼ばれる核となる部分を引き寄せて握り潰す事で対象そのものを破壊できるフランドール・スカーレット等がいるが、それも数が限られているという事だ。
 そんな、幻想郷の住人でも出来る者が限定される芸当を、目の前の菫子は『いとも簡単』にやってのけていたのだった。
 勿論、この催しものは勝負でもあるが故に、菫子とてただ単に無数の水の塊を宙に固定して得意気になるだけでは終わらせる気は毛頭なかった。
 菫子はそこで口角を上げ、ふてぶてしく宣言した。