先日、ふと思い立ってダウンロードしてある『ビーストサーガ』の最終章であるソアラ聖国編を再視聴しました。
……やはり完成度は小野勝巳監督が作っただけあって高いですね。
そうです、小野監督だから完成度が高いのです。彼はその後シンフォギアGから反面教師要素ばかりの作品を積極的に作っていく事となり(極め付きがアニメARC-Vでしょう)、このビーストサーガが現時点で小野監督が良い物を目指して作った最後の作品なのが『非常に』悔やまれますね。
故に、このビーストサーガは彼がモットーとする武士道描写が要所要所に込められていて非常に見応えがありましたね。
ですが、この作品は5D'sのように多くの人が満足出来る物には小野監督は作ってはいないと考えられますね。
それは、5D'sを観ていた時にチーム・カタストロフから彼が敬愛しているだろう『東方儚月抄』やその主要人物である『綿月依姫』の扱いがネットでボロクソな事への鬱憤を込めたように感じました。故に、今後小野監督は何かするだろうと私は考えていました。
その極みがどの客層にもオススメ出来ないという怪作であるアニメARC-Vを作るという暴挙だった訳ですが、まず始まったのがこのビーストサーガの仕様だと思いますね。
まず、登場人物が全員『ビースト』と呼ばれる人外で構成されています。完全に全員ですね。なので人間が登場しません。
この事が自己投影する対称を欲している子供やオタクにはオススメ出来ない第一要因ですね。加えて萌えも『ケモナー』と呼ばれる趣味を持っている人以外には期待出来なくなっています。
(それも、レパーミント、オトヒメ、スワンイクシードの僅かに三人に限定されるという構図です)
加えて、わざとアニメARC-Vのような作品を作った小野監督の事を視野に入れれば、作画が安定しないのも意図的にやった事の可能性があります。
これは、オタクがアニメを観るにおいて作画の美麗さに執着する事が多いが故でしょう。そんなオタクの趣味に合わないように、敢えて低予算で制作をしたのでしょう。
それなら、このビーストサーガはどこが良いのかというかという話になりますので、それを例に挙げます。
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1:丁寧な群像劇
2:5D'sと同様に武士道を導入してある
3:人間が登場しない
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これらの要素が合わさって、私には物凄く活力を与えられる事となりました。
まず、表現方法で善し悪しが真っ二つになってしまう『群像劇』という要素ですね。
そして、ビーストサーガの場合は善くなる仕様になっています。
それは、登場人物全員が主役が務まる程のポテンシャルと個性を持たされていて、一人一人が活躍しきる事ですね。
私は群像劇が質が下がってしまう要因の一つに、登場人物がただの軍隊にして群体に成り下がってしまう事があると考えます。要は、大勢動かすだけに個性の描写を省略して登場キャラクターを水増ししてしまっている状態です。
加えて、一度に多人数を動かしていない所もミソですね。このビーストサーガではサブキャラを除けば、一度に動くのは多くて三人程でしたから。故によく纏まった仕上がりになっています。
大人数を一気に動かすのがいかに各人物の個性を殺すのかを実感したければ小説で読むのが良いでしょう。固有名詞(技名)の羅列になっていて各キャラクターが起こした行動がまるでイメージ出来ませんから。
次に、公の場で言及されてはいませんが、遊戯王5D'sでは敵にも味方にも多くの人物に武士道から取り入れた美点を持たされていると思われます。
それにより当作品の登場人物の格好良さが確立されていた訳ですから、それがビーストサーガにもあったとなればその意味合いの重要性というものは分かるでしょう。
そして、人間が登場しない。これも大事なのですね。先天性の刺激が苦手な人は、その事により対人恐怖症の場合が多かったりします。これがビースト=獣人に全員がなされている事によりそういう人に対して問題が解消されているという事ですね。
このアニメのOPは、良く突っ込まれる歌詞ですが、この部分の『激しさ優しさ』はそういう先天性の人にとって正に白熱する展開で『激しさ』、刺激が少ない事で『優しさ』となっているのを示している……のかも知れません。
つまり、このアニメはオタクに軽視される構造にしたと同時に、天才型の人に入れ込まれる内容にしたと考えられます。
そして、小野監督の常人では行き着かない考え方から察するに、『その天才型の人達を満足させる』だけでは終わらせるつもりなど毛頭なかったのでしょう。
そういう天才型の人は、精神的か肉体的に大きな苦痛を味わう事で思いもよらない才能を開花させるという事が肝です。
例を挙げると、映画監督として『世界のキタノ』とまで称されるようになった北野武/ビートたけし氏の話になります。
彼が映画監督を務めるようになったのは、バイク事故があった以後の事なのです。それまでは『ビートたけし』として芸人に従事していましたから。
つまり、私が言いたいのは、小野監督は天才型の人に人為的にバイク事故のような精神的苦痛を味あわせて、『無理矢理』才能を開花させる機会を設けただろうというのが私の推論です。
その為に彼はわざとプリキュアの裏番組という難儀なスタートをした挙げ句、意図的にTV放送を打ち切った可能性があるという事です。わざとアニメARC-Vのような作品を作る位ですから、自分の作品のTV放送を打ち切らせる程度、造作もない事だったのでしょう。
現に、私が小説やブログを書くに至ったのは、このビーストサーガTV放送打ち切りが遠因なのですね。
TV放送打ち切り→仕事に身が入らずに紆余曲折あって辞める→仕事を辞めるに至ったもう一つ理由であるホームの日当たりの解決の為の移転の話がオジャンになった上に作業所通いになるという迷走→その時期に始まったアニメARC-Vが知っての通りの内容だったので更に精神的ショック……。
この過程を踏むに当たってホームの生活が苦痛でツクール作品制作を断念した代わりに、試しに本当に短い短編小説でも書いて何かしなければとやり始めたのが私にとっての全ての始まりでしたね。
いざ始めてみるとどんどん書きたい事があふれ出て来て、僅か8話で完結する筈だった小説が61話までになるという事態になって、気が付けば私の執筆能力が引き出されていた……という訳です。
【最後に】
最初に『最終章』と表記した通り、ビーストサーガはTV放送は打ち切られましたが、ネット配信で無事に完結する事となりました。
今データ入手や視聴が出来るかは分かりませんが、興味のある方は試してみるといいかも知れません。