「安易だね、テキストと語呂が似ているからって私ってのは……」
そう切り出すのは造型神たる埴安神袿姫である。
そこに彼女の部下のはにわの磨弓がフォローを入れる。
「まあまあ、このツールは袿姫様のようなクリエイターな者にとってとても有り難いものですから」
「確かに、それは大いに認める所ね」
その磨弓の意見に袿姫も同意する所なのであった。
そのText Analyzerのまず始めの醍醐味を袿姫は言及する。
「なんと言っても、これには『常時文字数表示機能』があるからね」
その事は必ずしも万人が必要とする所ではないであろうが、袿姫のように意欲的にものを作る者には必要不可欠であるものだろう。
文字数を常に目にする事が出来るのだから、常にモチベーションを刺激される事となるのだ。
これに関して、その都度キーを押して確認すればいいという人もいるだろう。
そこに袿姫が待ったを掛ける。
「でも、創作活動ってのは、集中力が必要だからね。作っている最中にいちいち確認するという行為をしていたら没頭出来ないというものだからね」
「さすが、袿姫様が言うと説得力がありますね」
こうして二人はしみじみとこの機能に関して頷く事となる。
が、このツールには良いことばかりではない事を袿姫が切り出す。
「でも、その最大のウリの常時文字数表示『以外』の機能が少々物足りない所だと思うね」
「確かに……」
その事には磨弓も同意する所なのであった。
そう、このツールにはそれ以外に何かウリが欲しいと思う所が多いのである。
画面の色は普通に設定に合わせて変わるものの、そこで文字を入力中の背景が白になってしまい見栄えが悪く。
「そもそもが、画像を壁紙に出来ない所が一番惜しいね」
そこが、その性質上デザインというものには当然こだわりがある袿姫には物足りない所なのであった。
そして、まだ惜しい所はあり、それを磨弓が挙げていく。
「文字のチェック機能が無い所も辛いですね。折角小説を書くにはもってこいなのに、その仕上げをこのツールでしづらくなっていますし」
そこであろう。どうせならば、書いたツールでそのまま最後の締めを行いたい所であろう。
「『画竜点睛』って言葉がある位、物事の締めというのはスッパリとやりたいというのは誰しもが思う所なのにね」
そう袿姫は少しばかり残念そうに言及するのであった。
そして、欲を言うならばと袿姫は続ける。
「文字数を数えられるのは有り難いけど、全体の文字数だけしか計れないのが惜しい所だね」
そう言って彼女は説明をする。
曰く、チェックを付けられて、そのチェックした場所からの文字数も数える事が出来たらという事である。
これにより、例えば『その日に書いた文字数が幾つか』というのが簡単に計れるというものであるのだから。
それが、現状でこのツールの場合は本体とは別のファイルを用意してそこから数えるという使い方をして擬似的に行うしかないという訳なのだ。
でも、と袿姫は締めくくる。
「それでも、このツールが文字数を常時数えられる、ただそれだけで一番役に立つという事には間違いないよね」
「東方で言えば、力は弱いけどその賢さで上位の者達と渡り合っているナズーリン辺りに通じるものがあるという事ですかね?」